中小企業診断士 過去問
令和5年度 再試験(2023年)
問5 (経済学・経済政策 問5)

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経済学・経済政策 令和5年度 再試験(2023年) 問5(経済学・経済政策 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

物価上昇の効果に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。

a  名目利子率を一定とした場合、物価の上昇によって実質利子率は低下する。
b  名目GDPを不変とした場合、物価の上昇によって実質GDPは増加する。
c  物価の上昇は負債額の実質価値を低下させるために、債権者から債務者への所得再分配を引き起こす効果を持つ。
d  人々にインフレ期待が浸透すると、買い控えが生じて実際の物価は下落することになる。
  • aとc
  • aとd
  • bとc
  • bとd
  • cとd

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この過去問の解説 (2件)

01

物価上昇(インフレーション)は、経済にさまざまな影響を与えます。特に重要なのは「実質金利」や「実質GDP」、「債務の実質価値」などへの影響です。この問題では、各記述がインフレーションの影響に関する正しい理解に基づいているかを確認します。

a. 名目利子率を一定とした場合、物価の上昇によって実質利子率は低下する。

これは正しい記述です。実質利子率は「名目利子率 - 物価上昇率」で計算されます。名目利子率が固定されている場合、物価が上昇すればその分実質利子率が低下します。

b. 名目GDPを不変とした場合、物価の上昇によって実質GDPは増加する。

これは誤りです。名目GDPは価格の変動を含んだ指標であり、物価が上昇すれば実質GDPはむしろ減少します。実質GDPは物価の変動を考慮しないで計算されるため、物価上昇は実質GDPの減少要因になります。

c. 物価の上昇は負債の実質価値を低下させるために、債権者から債務者への所得再分配を引き起こす効果を持つ。

これは正しい記述です。物価が上昇すると、負債の「実質価値」(インフレ前の価値に対する負担感)が低下します。結果として、借り手(債務者)は返済の実質的な負担が軽減され、債権者に対して有利になります。これにより、所得の再分配が生じることがあります。

d. 人々にインフレ期待が浸透すると、買い控えが生じて実際の物価は下落することになる。

これは誤りです。通常、インフレ期待が強まると、将来的に物価が上がると予想されるため、人々は今のうちに買い物をしようとする行動(「早期購買」)が起こります。これにより需要が増加し、実際の物価も上昇する傾向があります。

選択肢1. aとc

記述aとcはどちらも正しいため、この選択肢は正解です。

選択肢2. aとd

記述dが誤りのため、この選択肢は不適切です。

選択肢3. bとc

記述bが誤りのため、この選択肢は不適切です。

選択肢4. bとd

記述bとdの両方が誤りのため、この選択肢は不適切です。

選択肢5. cとd

記述dが誤りのため、この選択肢は不適切です。

まとめ

この問題では、インフレーションの影響に関する基礎的な知識が問われており、実質利子率や実質GDP、負債の価値などの概念を正確に理解することが求められます。

【覚えておくべきポイント】

 実質利子率 は、物価上昇率を考慮した利子率であり、物価が上昇すると名目利子率が一定の場合には実質利子率が低下します。

 実質GDP は、物価変動を除いた経済活動の実質的な大きさを示す指標であり、物価上昇は実質GDPを減少させる傾向があります。

 インフレーション は、債務の実質負担を軽減させ、債権者と債務者の間で所得再分配の効果を持ちます。

 インフレ期待 が強まると、人々は物価がさらに上昇する前に消費を増やすため、実際の物価上昇が加速することがあります。

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02

物価上昇に対する設問です。状況を明確に分析し、シミュレートしてみれば自然と解答が出てきます。

ポイントになるのは、ここで出てくる言葉の意味です。

ここから各解答を分析します。

 

a 名目利子を一定にしたところ、実質利子率が低下した。

例えば100円で買えたものが110円になったとします。名目利子率が10%上昇した状態です。このまま物価も10%上昇したとしましょう。実質利子率は「名目利子率 - 物価上昇率」で計算できますので、実質利子率は0%になってしまいました。

設問に対して正解です。

 

b 名目GDPが変わらないを収入に置き換えます。物価が上昇すれば、当然物は買えません。つまり、実質GDPは減少しますので間違いです。

 

c 負債額が100円あったとしましょう。物価5%上がったとします。ものは105円変わり、負債額100円では購入できなくなります。つまり、債務者の実質的な負担が減るため、所得再配分が生じます。つまり正解です。

 

d インフレの期待感が高まると先に物を買っておいたほうがいいと思うでしょう。つまり、買い控えが生じるのではなくむしろ逆の効果が生まれます。当然物価は上昇傾向を起こすこととなるのです。そのため間違いです。

 

以上のような分析から答えを導き出しましょう。

選択肢1. aとc

aとcの組み合わせなので正解で。

選択肢2. aとd

間違いです。

選択肢3. bとc

間違いです。

選択肢4. bとd

間違いです。

選択肢5. cとd

間違いです。

まとめ

中小企業診断士試験でも多く見られる出題傾向ですが、まずは設問を理解するところからスタートします。正確に分析してしまえばあとは答えを組み合わせるだけです。

この問題はサービス問題に近く、内容もわかりやすいため逃す手はありません。

苦手な場合には何が起こるかを考えてみましょう。必ず前提条件が提示され、それに対する答えが合っているかどうかがポイントになるからです。

もう一つのポイントが、4つ提示されているのに、組み合わせは5パターンしかありません。 aとbは正解ではないということになります。ここからも、aとbの組み合わせの場合、どちらかは合っているか、またはどちらも間違っているか判断できますので、読み解く際のヒントにすると良いでしょう。

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