2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級) 過去問
2024年9月
問60 (学科 問60)

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問題

FP技能検定2級 2024年9月 問60(学科 問60) (訂正依頼・報告はこちら)

M&Aに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  • 事業譲渡によるM&Aでは、譲受け側の会社は、個別に同意した範囲で特定の事業・財産のみを譲り受けるため、一般に、簿外債務や偶発債務リスクを遮断しやすい。
  • 株式譲渡によるM&Aでは、譲渡し側の法人格に変動はなく、会社の資産、負債、従業員や社外の第三者との契約、許認可等は、原則として存続する。
  • 会社が事業の全部の譲渡や事業の重要な一部の譲渡を行う場合、その行為に係る契約について、原則として、株主総会の決議による承認は不要である。
  • 事業譲渡によるM&Aにより事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内およびこれに隣接する市町村の区域内において、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題は、FP2級試験の「相続・事業承継」の問題です。
FPは、中小企業の事業承継や企業の合併・買収(M&A)について、基本的な仕組みやリスクを理解し、適切なアドバイスを行う立場にあります。
M&Aには、事業譲渡、株式譲渡、合併、会社分割などさまざまな手法があり、

それぞれの手法によって法的な影響や手続きが異なります。

特に、株主総会の承認が必要かどうか、事業譲渡の競業避止義務、債務の引き継ぎの有無などのポイントをしっかり押さえておきましょう!

選択肢1. 事業譲渡によるM&Aでは、譲受け側の会社は、個別に同意した範囲で特定の事業・財産のみを譲り受けるため、一般に、簿外債務や偶発債務リスクを遮断しやすい。

適切
事業譲渡では、譲受け企業は買収対象の資産や負債を選択的に引き継ぐことが可能です。
そのため、簿外債務や偶発債務といったリスクのある負債を引き継がないようにすることができるため、リスクを遮断しやすいというメリットがあります。
「簿外債務や偶発債務リスクを遮断しやすい」という記述は適切です。

選択肢2. 株式譲渡によるM&Aでは、譲渡し側の法人格に変動はなく、会社の資産、負債、従業員や社外の第三者との契約、許認可等は、原則として存続する。

適切
株式譲渡では、会社の法人格そのものは変わらず、株主だけが変わる仕組みです。
そのため、会社が持つ資産や負債、契約関係、従業員の雇用関係、許認可などは基本的にそのまま維持されます。
「株式譲渡では会社の法人格に変動はなく、契約や資産・負債は存続する」という記述は適切です。

選択肢3. 会社が事業の全部の譲渡や事業の重要な一部の譲渡を行う場合、その行為に係る契約について、原則として、株主総会の決議による承認は不要である。

不適切
会社が「事業の全部」または「重要な一部」を譲渡する場合、株主総会の特別決議(2/3以上の賛成)が必要とされています(会社法467条1項)。
これは、事業の譲渡が会社の存続や事業の継続性に大きな影響を与えるため、株主の同意を得るべき行為とされているからです。
「株主総会の決議による承認は不要である」という記述は不適切です。

選択肢4. 事業譲渡によるM&Aにより事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内およびこれに隣接する市町村の区域内において、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。

適切
事業譲渡を行った場合、競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)が発生し、原則として同一地域で同一事業を行うことが制限されます(会社法21条1項)。
具体的には、同一の市町村および隣接する市町村において、事業譲渡後20年間は競業できないと規定されています。
ただし、これは譲渡契約で別途取り決めをすることも可能です。
「事業譲渡後20年間は、同一の市町村および隣接する市町村で同一事業を行ってはならない」という記述は適切です。

まとめ

この問題では、M&Aの手法ごとの特徴や、法的な制約についての理解が問われています。
M&Aは企業の経営戦略や事業承継において重要な選択肢なので、それぞれの手法の特徴をしっかり押さえておきましょう。

 

事業譲渡では、引き継ぐ資産や負債を選択できるため、簿外債務のリスクを遮断しやすくなります。
株式譲渡では、法人格はそのままで、会社の資産・負債・契約・従業員の雇用関係が存続します。
会社が「事業の全部」または「重要な一部」を譲渡する場合は、株主総会の特別決議が必要(2/3以上の賛成)です。
事業譲渡では、20年間の競業避止義務があり、同じ市町村および隣接市町村で同一事業を行えません(契約で別途定めることも可能)。

 

株式譲渡と事業譲渡の違い、株主総会の決議要否、競業避止義務などは試験でも頻出のポイントですので、しっかり整理しておきましょう。

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02

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で、日本語では、合併と買収と訳すことができます。2つの会社が合併したり、企業が企業を買収したりすることです。

選択肢1. 事業譲渡によるM&Aでは、譲受け側の会社は、個別に同意した範囲で特定の事業・財産のみを譲り受けるため、一般に、簿外債務や偶発債務リスクを遮断しやすい。

適切

簿外債務とは、貸借対照表に載らない債務のことです。一方、偶発債務とは、今現在は債務として存在しないが、将来条件がそろった場合に債務となる可能性がある債務のことです。

事業譲渡によるM&Aは、譲渡する範囲が限定的(事業の全部または一部)であるので、これらのリスクを遮断しやすいといえます。

選択肢2. 株式譲渡によるM&Aでは、譲渡し側の法人格に変動はなく、会社の資産、負債、従業員や社外の第三者との契約、許認可等は、原則として存続する。

適切

株式譲渡によるM&Aは、名の通り、株主が株式を譲渡することによって成立する合併買収になります。つまり、株主が保有する株式を他社に譲渡することで経営権を承継させるので、会社の資産や負債、契約、許認可には変更がなく引き継ぐ形となります。

選択肢3. 会社が事業の全部の譲渡や事業の重要な一部の譲渡を行う場合、その行為に係る契約について、原則として、株主総会の決議による承認は不要である。

適切

事業の全部や重要な一部の譲渡を行う場合、株主総会の特別決議(会社法309条2項)が必要になります。

選択肢4. 事業譲渡によるM&Aにより事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内およびこれに隣接する市町村の区域内において、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。

 適切

会社法21条1項の通りです。事業を譲り受けた会社の顧客を奪い取らないように、譲った会社は近くで同じ業種の事業を行ってはいけないとされています。なお、条文には20年間と明記がありますが、両者の合意により短い期間にすることは可能です。

まとめ

今の日本では経営者の高齢化が進み、増加傾向にある倒産の理由として後継者不足が指摘されています。一方、M&Aは後継者不在の中小企業が事業承継を実現するための手法として浸透してきていますので、今後も注視が必要です。

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