行政書士の過去問
平成30年度
法令等 問43-4

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問題

行政書士試験 平成30年度 法令等 問43-4 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、地方公共団体の施策の変更に関する最高裁判所判決の一節である。空欄エに当てはまる語句を、枠内の選択肢(1〜20)から選びなさい。

・・・[ ア ]の原則は地方公共団体の組織及び運営に関する基本原則であり、また、地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることはもとより当然であって、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。しかし、右決定が、単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず、特定の者に対して右施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を伴うものであり、かつ、その活動が相当長期にわたる当該施策の継続を前提としてはじめてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じうる性質のものである場合には、右特定の者は、右施策が右活動の基盤として維持されるものと[ イ ]し、これを前提として右の活動ないしその準備活動に入るのが通常である。このような状況のもとでは、たとえ右勧告ないし勧誘に基づいてその者と当該地方公共団体との間に右施策の維持を内容とする契約が締結されたものとは認められない場合であっても、右のように密接な交渉を持つに至った当事者間の関係を規律すべき[ ウ ]の原則に照らし、その施策の変更にあたってはかかる[ イ ]に対して法的保護が与えられなければならないものというべきである。すなわち、右施策が変更されることにより、前記の勧告等に動機づけられて前記のような活動に入った者がその[ イ ]に反して所期の活動を妨げられ、社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合に、地方公共団体において右損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された[ イ ]関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の[ エ ]責任を生ぜしめるものといわなければならない。そして、前記[ ア ]の原則も、地方公共団体が住民の意思に基づいて行動する場合にはその行動になんらの法的責任も伴わないということを意味するものではないから、地方公共団体の施策決定の基盤をなす政治情勢の変化をもってただちに前記のやむをえない客観的事情にあたるものとし、前記のような相手方の[ イ ]を保護しないことが許されるものと解すべきではない。(最三小判昭和56年1月27日民集35巻1号35頁)
  • 信義衡平
  • 私的自治
  • 公平
  • 信頼
  • 確約
  • 契約
  • 財産
  • 債務不履行
  • 不法行為
  • 団体自治
  • 平等
  • 刑事
  • 住民自治
  • 比例
  • 権利濫用禁止
  • 過失
  • 期待
  • 継続
  • 監督
  • 措置

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この過去問の解説 (3件)

01

地方自治法の目的は、「地方自治の本旨に基いて、…、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障すること(1条)」です。

地方自治とは、住民自らの意思によって、住民自らが主体的に行政を運営していく原則をいいます。

本件の事件の概要は、
ある地方公共団体が、工場誘致政策を実施し、会社Xがこれに応じ、工場敷地の取得や、各種手続きを完了し、工場建設を控えるのみとなりました。
しかし、その後の選挙において、誘致反対派のAが首長として当選し、Aは誘致政策を転換し、工場建設に協力を拒否しました。
会社Xは、Bによる協力拒否は、工場建設の期待を裏切り、信頼関係を不当に破壊するものであるとして、損害賠償を求め、提訴したものです。

判旨は、地方公共団体の政策は、住民自治の原則に従い、その変更も当然に想定しているとしつつも、(変更前の)政策が特定の者(=会社X)に対して、特定行為を促す(=工場建設)ものである場合、誘致政策が続くものと信頼して、工場建設に相当の資金や労力が投入されたと認められる際は、信義衡平の原則に照らし、保護されなければならない(=工場誘致→工場建設は保護されなければならない)としました。
よって、Bの一方的な拒否行為は、信頼関係の破壊が認められ、違法性を帯びるため、不法行為責任が発
生するものであると判断しました。

エ:⑨不法行為

ア:⑬住民自治
イ:④信頼
ウ:①信義衡平

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02

エ.9
前に「違法性を帯び」とあるから、不法行為であることがわかります。

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03

正解は「9 不法行為」
地方公共団体が一定内容の継続的な施策を決定し特定の者に対し右施策に適合する特定内容の活動を促す個別的具体的な勧告ないし勧誘をしたのち右施策を変更する場合と右特定の者に対する地方公共団体の不法行為責任について争った裁判の判決(昭和56年1月27日)です。
文脈から選択肢を絞っていきましょう。
なお、省略されている部分には、以下のような記載があります。「このような状況のもとにおいて、被上告人の協力拒否により、本件工場の建設がこれに着手したばかりの段階で不可能となつたのであるから、その結果として上告人に多額の積極的損害が生じたとすれば、右協力拒否がやむをえない客観的事情に基づくものであるか、又は右損害を解消せしめるようななんらかの措置が講じられるのでない限り、右協力拒否は上告人に対する違法な加害行為たることを免れず、被上告人に対しこれと相当因果関係に立つ損害としての積極的損害の賠償を求める上告人の請求は正当として認容すべきものといわなければならない。」

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