行政書士 過去問
令和5年度
問36 (法令等 問36)
問題文
商行為に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
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問題
行政書士試験 令和5年度 問36(法令等 問36) (訂正依頼・報告はこちら)
商行為に関する次の記述のうち、商法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 商行為の代理人が本人のためにすることを示さないで商行為をした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。
- 商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。
- 商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
- 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、当該通知を発することを怠ったときは、その商人はその申込みを承諾したものとみなす。
- 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したかどうかにかかわらず、申込みを受けた商人の費用をもって、その物品を保管しなければならない。
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この過去問の解説 (3件)
01
この問題のポイントは、商法第504条、第505条、第508条第1項、第509条、第510条の理解です。
商法第504条は商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げないとされています。
商法第505条は商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができるとされています。
商法第508条第1項は商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失うとされています。
商法第509条は
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。
2 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾した ものとみなす
とされています。
民法第510条は商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りでないとされています。
以上の点をおさえて、解説を見ていきましょう。
解説の冒頭より、商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生じるが、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げないとされています。
よって、商行為の代理人が本人のためにすることを示さないで商行為をした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げないとなります。
解説の冒頭より、商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができるとされています。
よって、商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができるとなります。
解説の冒頭より、商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失うとされています。
よって、商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失うとなります。
解説の冒頭より、商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならなく、 商人がその通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなすとされています。
よって、商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、当該通知を発することを怠ったときは、その商人はその申込みを承諾したものとみなすとなります。
解説の冒頭より、商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならないとされています。
よって、商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したかどうかにかかわらず、申込者の費用をもって、その物品を保管しなければなりません。
この問題のように、条文知識を問う問題は必ず出るので、条文素読もやった方が良いでしょう。
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02
商行為に関する問題です。
1・・・妥当
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生じます。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げません(商法504条)。よって、正しいです。
商法504条は、代理人が本人のために行った行為に関する規定です。代理人が本人のために行った行為は、本人に帰属し、本人と相手方の間で法的効力を持ちます。ただし、相手方が、代理人が本人のために行動していることを知らなかったとき(善意)は、代理人に対して、その行為の履行を求めることができます。
2・・・妥当
商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができます(商法505条)。よって妥当です。
3・・・妥当
商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失います(商法508条1項)。よって、妥当です。
4・・・妥当
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければなりません(商法509条1項)。 商人が上記通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなします(商法509条2項)。
5・・・誤り
商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければなりません(商法510条本文)。本肢は「申込みを受けた商人の費用をもって」が誤りです。正しくは「申込者の費用をもって」です。
出題率の高い分野ですのでしっかり押さえておきましょう。
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03
本問は民法の原則に対する商行為の特則について全般的な条文知識を問う問題です。
民法の原則に比べると商法は営利性、安全性(取引きの安全)、簡易迅速性を重視した特則があります。
正しいです。
民法の原則では、顕名のない代理行為は原則として本人に効果が帰属しません。これを顕名主義と言います。
民法第100条「代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。」
しかし、商法では逆に本人に効果が帰属するのが原則です。これを非顕名主義と言います。
商法第504条「商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。」
原則と例外が入れ替わっています。
正しいです。
商行為の受任者は委任の本旨に反しない範囲で委任を受けていない行為をすることができます。
商法第505条「商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。」
もっとも、この点は民法の原則も同じと考えるのが通説です。
すなわち、受任者は委任事務の処理について善管注意義務を負っているので、その義務を果たすのに必要な限度で明示の委任を受けていない行為を行うこともできると解されています。
つまり、本条は、民法の特則ではなく単なる確認規定であると解するのが通説です。
民法第644条「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」
正しいです。
民法の原則では、隔地者間で承諾の期間を定めないでした申込みは、相当な期間を経過すると申込者が撤回することができるにとどまります。
民法第525条第1項本文「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。」
なお、同条2項以下が対話者間での申込みの効力を規定しているので、同項は必然的に隔地者間の申込みの効力の話になります。つまり、建付けとしては隔地者間の申込みが原則になっているわけですね。民法制定が明治であるという時代性を感じます。
これに対して、商法では、承諾の期間を定めないでした申込みは、相当な期間を経過すると撤回を待たずに当然に効力を失います。
商法第508条第1項「商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」
もっとも、日頃取引をしている相手に対してその相手の営業の部類に属する契約の申込みをした場合は、商法第509条が適用になり、承諾の通知を発しなくても承諾したものとみなされます。
なお、承諾の期間経過後に発せられた承諾の意思表示は、申込者において新たな申込みの意思表示とみなすことができるのは共通です。
民法第524条「申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。」
商法第508条第2項「民法第五百二十四条の規定は、前項の場合について準用する。」
みなすことが「できる」なので、みなさないこともできます。申込者が遅れた承諾を新たな申込みとみなすこととした場合には、「みなす」のですから、承諾者はそれを否定することはできません。
正しいです。
民法の原則では、申込みを受けた者は承諾又は拒絶の意思表示をする義務はありませんし、承諾の意思表示がない限りは契約は成立しません。
しかし、商人が日頃の取引相手から自己の営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合には、
①その申込みに対する承諾又は拒絶の義務が生じる。
②その義務を果たさず、承諾も拒絶もしないと、法律上は承諾したものとみなす。
ことになります。
商法第509条「商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。
2 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。」
「みなす」ですから、承諾していないという反論は法律的には通じません。法律的には問答無用で承諾したものとして扱われます。
なお法論理的には、承諾が法律上擬制される結果、申込みと承諾の意思表示が合致して契約が成立することになります。
つまり、申込みと承諾の意思表示が合致しない限り契約は成立しないという民法の原則の例外「ではない」ということになります。
ちなみに、「平常取引をする者」とは、ある程度の継続的な取引関係がある者を言い、1,2回取引きがあった程度では「平常取引がある」とは言えないとするのが古い判例(大判昭和6年9月22日)です。
そして「平常取引をする者」以外からの申込みに対しては通知義務はありませんし、商法第508条第1項が適用されるので申込みが失効して終わります。
誤りです。よってこの肢が正解です。
民法の原則で言えば、申込みを受けた者は、費用負担の問題以前に受け取った物品の保管義務を負いません(*)。
しかし、商取引においては、迅速な商取引のために、申込みの時点で商品を同時に送ってくる(あるいはサンプルを送る)ことなどもあります。そこで申込みを承諾すればそれで終わる話(送られた商品等をどうするか、保管する場合の費用負担などはすべて契約によって決まる)ですが、拒絶した場合には商品等をどう扱うかが問題になります。もちろん直ちに返送しても構いませんが、そうでなければ申込者の費用負担で保管する義務を負います。
商法第510条「商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りでない。」
この条文のキモは保管義務があることを明らかにしたことであって「費用負担が申込者であるのはある意味当たり前」です。
向こうの都合で送ってきておきながら承諾が得られなかったときに保管費用を負担しろなどと言うのは、申込みを受けた者をして倉庫代わりに使っているようなものです。常識的に言って、申込みを受けた側からしたら頼んでもいないものを送ってきておいてふざけるなと言いたくなるでしょう。
その意味では常識で解ける問題と言えます。
(*)これは余談です。読む必要はありません。
特定商取引に関する法律(以下、特商法)では、いわゆる送付け商法により勝手に送られてきた商品は直ちに処分できる(販売業者が返還請求ができない結果として保管せずにすぐ処分できる)ことになっています。
しかしこれは令和3年改正によるもので、それ以前は14日間は送り付けた販売業者は返還請求が可能でした。これは言い換えれば、受け取った側は14日間は保管しておく義務があったとも考えられます。
本来、消費者の保護を目的とした特商法においてすら、もし仮に送付物の受領者が14日間とは言え保管義務を負っていたとすれば、民法においてまったく保管義務がないと言い切ることができるかどうかは疑問がないわけではありません。
私見ですが、送付を受けた事情に応じて、信義則上保管義務を負う場合があり得るのではないかとは思います。もちろん、「保管義務を定める条文はなく、一般論として保管義務を負うものではない」というのは間違いありません。
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