保育士 過去問
令和6年(2024年)前期
問91 (保育の心理学 問11)

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問題

保育士試験 令和6年(2024年)前期 問91(保育の心理学 問11) (訂正依頼・報告はこちら)

次のうち、高齢期に関する記述として、適切なものを一つ選びなさい。
  • フレイルとは、老化の過程で生じる自立機能や健康を失いやすい状態であるが、要支援や要介護に移行する危険性は低いとされている。
  • 機能を使わないことによる衰えは身体面だけでみられ、心理面ではみられない。そのため、高齢期においては、意識的に身体機能を活性化する必要がある。
  • バルテス(Baltes, P.B.)らが提唱した「補償を伴う選択的最適化」とは、身体機能、認知機能、対人関係が衰退したときに、労力や時間を使う領域や対象を選択し、望む方向へ機能を高める資源を獲得または調整し、新たな工夫をして補うというものである。
  • 知能は流動性知能と結晶性知能という二つの主要な一般因子で構成されるというキャノン(Cannon, W.B.)が提唱した考え方に基づくと、流動性知能よりも結晶性知能のほうが、低下し始める時期が早い。
  • コンボイ・モデルでは、同心円の外側ほど身近で頼りにできる重要な他者を、内側ほど社会的な役割による人物を示す。加齢に伴って、配偶者や友人の死などにより、高齢者のコンボイの構成は大きく変化する。

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この過去問の解説 (2件)

01

高齢期の発達や適応に関する理論は、保育士試験や福祉系の資格試験でよく出題されるテーマです。

選択肢1. フレイルとは、老化の過程で生じる自立機能や健康を失いやすい状態であるが、要支援や要介護に移行する危険性は低いとされている。

不適切です。
フレイルは要介護状態の一歩手前の状態を指します。身体的な衰えだけでなく、認知機能や社会的な活動の低下も含まれるのが特徴です。
「要支援や要介護に移行する危険性は低い」という記述は誤りで、放置すると要介護状態に進行するリスクが高いとされています。

選択肢2. 機能を使わないことによる衰えは身体面だけでみられ、心理面ではみられない。そのため、高齢期においては、意識的に身体機能を活性化する必要がある。

不適切です。
「使わない機能が衰える(廃用症候群)」は身体面だけでなく、心理面や認知機能にも影響を与えます。
身体だけでなく、人との交流が少なくなることが心理的な衰えにつながることが知られています。
高齢期では身体面・心理面の両方を意識的に活性化することが重要です。

選択肢3. バルテス(Baltes, P.B.)らが提唱した「補償を伴う選択的最適化」とは、身体機能、認知機能、対人関係が衰退したときに、労力や時間を使う領域や対象を選択し、望む方向へ機能を高める資源を獲得または調整し、新たな工夫をして補うというものである。

適切です。
バルテスが提唱した「補償を伴う選択的最適化」は、衰えを受け入れつつ、自分が重要と考えることに焦点を当て、限られた資源を効率的に活用する戦略です。
高齢期の人が、得意なことに集中し、苦手なことを補うために新しい方法を見つけることで、生活の質を維持します。

選択肢4. 知能は流動性知能と結晶性知能という二つの主要な一般因子で構成されるというキャノン(Cannon, W.B.)が提唱した考え方に基づくと、流動性知能よりも結晶性知能のほうが、低下し始める時期が早い。

不適切です。
流動性知能と結晶性知能の考え方はキャッテル(Cattell, R.B.)が提唱したものです。
また、流動性知能(問題解決や新しいことへの適応力)は若年期から低下しますが、結晶性知能(知識や経験)は高齢期まで比較的維持されるとされています。
「結晶性知能のほうが低下し始める時期が早い」というのは誤りです。

選択肢5. コンボイ・モデルでは、同心円の外側ほど身近で頼りにできる重要な他者を、内側ほど社会的な役割による人物を示す。加齢に伴って、配偶者や友人の死などにより、高齢者のコンボイの構成は大きく変化する。

不適切です。
コンボイ・モデルでは、内側が最も身近で頼りにできる重要な他者(家族や親しい友人)であり、外側ほど関係が薄い人物(知人や仕事関係者)を示します。
加齢とともに、内側のコンボイが変化することはありますが、「外側が身近」という説明は逆です。

まとめ

特に「補償を伴う選択的最適化(SOC理論)」や「フレイル」といったキーワードは頻出です。高齢者の身体的・心理的な変化を理解し、どのように対応すればQOL(生活の質)が維持できるのかを学ぶことが求められます。

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02

それぞれの用語の意味と内容について覚えておきましょう。

選択肢1. フレイルとは、老化の過程で生じる自立機能や健康を失いやすい状態であるが、要支援や要介護に移行する危険性は低いとされている。

不適切です。

フレイルは要支援や要介護に移行する可能性もあり得ます。

フレイルとは、「健康な状態と要介護状態の中間の段階を指し」、「年齢を重ねていくと、心身や社会性などの面でダメージを受けたときに回復できる力が低下し、これによって健康に過ごせていた状態から、生活を送るために支援を受けなければならない要介護状態に変化していきます。」

 

引用元:厚生労働省、広報誌「厚生労働」案内、飯島勝矢様

選択肢2. 機能を使わないことによる衰えは身体面だけでみられ、心理面ではみられない。そのため、高齢期においては、意識的に身体機能を活性化する必要がある。

不適切です。

心理的側面でも見られます。

人と話をするなどして、社会との交流を絶たないようにすることが大切です。

選択肢3. バルテス(Baltes, P.B.)らが提唱した「補償を伴う選択的最適化」とは、身体機能、認知機能、対人関係が衰退したときに、労力や時間を使う領域や対象を選択し、望む方向へ機能を高める資源を獲得または調整し、新たな工夫をして補うというものである。

適切です。

この理論の例として、生垣の剪定を例にとってみよう。体力の低下により庭の生垣をすべて剪定することが難しくなったとき,軽いハサミで剪定可能な背の低い生垣にのみ目標を限定し(目標の選択),そこに時間と体力を動員する(資源の最適化)。そして,重い機械を使用する必要のある背の高い生垣については,子どもや業者に代わりに行ってもらう(補償)といったことが考えられる。」ということが述べられています。

 

引用元:公益財団法人 日本心理学会様「老いに伴う「弱み」と「強み」」

選択肢4. 知能は流動性知能と結晶性知能という二つの主要な一般因子で構成されるというキャノン(Cannon, W.B.)が提唱した考え方に基づくと、流動性知能よりも結晶性知能のほうが、低下し始める時期が早い。

不適切です。

結晶性知能の方が流動性知能よりも低下の時期が早いです。

選択肢5. コンボイ・モデルでは、同心円の外側ほど身近で頼りにできる重要な他者を、内側ほど社会的な役割による人物を示す。加齢に伴って、配偶者や友人の死などにより、高齢者のコンボイの構成は大きく変化する。

不適切です。

コンボイ・モデルは、内側であるほど身近で重要な人物、外側であるほど、会社の人などの社会的役割を持つ人物であります。

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