介護福祉士 過去問
第36回(令和5年度)
問123 (総合問題 問10)

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問題

介護福祉士試験 第36回(令和5年度) 問123(総合問題 問10) (訂正依頼・報告はこちら)

次の事例を読んで答えなさい。
〔事例〕
Fさん(20歳、男性)は、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)と重度の知的障害があり、自宅で母親(50歳)、姉(25歳)と3人で暮らしている。
Fさんは生活介護事業所を利用している。
事業所では比較的落ち着いているが、自宅に帰ってくると母親に対してかみつきや頭突きをすることがあった。また、自分で頭をたたくなどの自傷行為もたびたび見られる。
仕事をしている母親に代わり、小さい頃から食事や排泄(はいせつ)の介護をしている姉は、これまでFさんの行動を止めることができていたが、最近ではからだが大きくなり力も強くなって、母親と協力しても止めることが難しくなっていた。
家族で今後のことを考えた結果、Fさんは障害者支援施設に入所することになった。

次のうち、Fさんが自宅に帰ってきたときの状態に該当するものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
  • 学習障害
  • 注意欠陥多動性障害
  • 高次脳機能障害
  • 強度行動障害
  • 気分障害

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この過去問の解説 (3件)

01

自閉スペクトラム症は、対人関係が苦手だったり、強いこだわりといった特徴をもつ発達障害です。
過剰なストレスや挫折により、頭痛、チックなどの身体症状や鬱、不安、興奮状態といった精神症状を生じ、暴言、病力、自傷行為などに発展する二次的な問題(障害)が発生する可能性があります。
Fさんは自傷行為や暴力といった行動が見られ、この状態にあてはまると言えるでしょう。

選択肢1. 学習障害

不正解です。

学習障害は、知的発達の遅れはないですが、聞く・話す・読む・書く・計算・推論するといった能力のうち、1つ以上のことを困難とする発達障害のことです。

Fさんの状態には当てはまりません。

選択肢2. 注意欠陥多動性障害

不正解です。

注意欠如多動症とは作業が不正確、無くしものが多い、話を集中して聞けない、などの「不注意」や、落ち着かずに離席や順番を待てないなどの「多動性」「衝動性」の特性がみられる発達障害です。

Fさんの状態には当てはまりません。

選択肢3. 高次脳機能障害

不正解です。

高次脳機能障害は、事故や病気によって脳に損傷を負い、脳機能に障害が出て、日常生活や社会生活に支障が生じる状態のことです。
注意障害、遂行機能障害、記憶障害、社会的行動障害などの障害が起こります。
Fさんは自閉症スペクトラム障害からの二次障害によって暴力、自傷などがみられているため不適切です。

選択肢4. 強度行動障害

正解です。

強度行動障害は、暴力・物損・自傷行為などの行動、大きな声で叫んだり、長時間鳴き続けるなど、周囲の人に影響を及ぼす行動がみられる状態です。

選択肢5. 気分障害

不正解です。

気分障害は、気分が沈んだり、高揚したりする病気です。
うつ病、双極性障害などの病気のことになります。

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02

自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)の症状には、コミュニケーションが困難だったり、人との距離感を取るのが難しいなどと言った脳の機能障害があります。

そのため、言葉や表情、身振りを使って表現をすることが難しく、時に興奮状態になり、暴力的な行動を取ってしまうことがあります。

「母親に対してかみつきや頭突きをすることがあった」「自分で頭をたたくなどの自傷行為」という行動は、【強度行動障害】に当てはまり、周囲の環境や関わりによって現れます。

選択肢1. 学習障害

×:学習障害とは「読み書きが苦手」という特徴があります。

Fさんの症状からは読み取れないため、今回の問いにおいては適切ではありません。

選択肢2. 注意欠陥多動性障害

×:注意欠陥多動性障害とは、「集中力がない、ミスや失敗が多い」という特徴があります

Fさんの症状からは読み取れないため、今回の問いにおいては適切ではありません。

選択肢3. 高次脳機能障害

×:高次脳機能障害とは、ことばや記憶力に障害が出ますが、病気や交通事故により脳の損傷が起きた際に発生します。

自閉症スペクトラム障害とは異なるため、適切ではありません。

選択肢4. 強度行動障害

〇:強度行動障害は、「環境の変化などで、強い執着心やこだわりを抑制できない」という特徴があります。

「母親に対してかみつきや頭突きをすることがあった」「自分で頭をたたくなどの自傷行為」という行為は、これに当てはまります。

選択肢5. 気分障害

×:気分障害とは、「感情の起伏が激しく、ダウンとハイの状態が随時入れ替わったり、継続したりする」という特徴があります。

Fさんの症状からは読み取れないため、今回の問いにおいては適切ではありません。

参考になった数21

03

問題文より「帰宅後、母親に暴力行為がみられる。また、自分で頭をたたく自傷行為もみられる。」を念頭に設問をみていけば、わかりやすいでしょう。

選択肢1. 学習障害

×

学習障害の見られる症状として読み書き・計算などの特定の領域に困難を伴うなどがあります。今回のFさんの行動とは無関係といえるでしょう。

選択肢2. 注意欠陥多動性障害

× 

注意欠陥多動性障害は典型的な行動が多いです。会社の書類を忘れてしまう不注意や、座っての作業に集中できず、どこかに行ってしまう多動性などがあります。


今回の「自分で頭をたたく自傷行為」「母への暴力行為」は典型的な行動ではないため、この設問は不適切です。

選択肢3. 高次脳機能障害

×

高次脳機能障害は記憶・注意・遂行機能などが脳損傷による障害です。今回のFさんの行動は幼少期から見られる発達の傾向なため、これには該当しないでしょう。

選択肢4. 強度行動障害

重度の知的障害や自閉症スペクトラムなどの発達障害により、自分で頭をたたく激しい自傷行為や、母への他害行為が日常的に見られる状態は「強度行動障害」に該当します。

選択肢5. 気分障害

×

気分障害はうつ病・双極性障害など気分の落ち込みなどが主な症状です。Fさんの問題行動は気分変動とは異なる特性であり、診断基準に合わないため不正解です。

まとめ

「本人の症状より何に該当するか」は介護福祉士の試験ではよく出題されます。時間があるときに利用者の「アセスメントシート」や「フェイスシート」を見ておくと、介護技術の向上+試験対策ができるので、良いかもしれません。

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