介護福祉士 過去問
第37回(令和6年度)
問66 (介護の基本 問3)

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問題

介護福祉士試験 第37回(令和6年度) 問66(介護の基本 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

Aさん(75歳、女性)は、3か月前に、血管性認知症(vascular dementia)を発症し、軽度の左片麻痺(ひだりかたまひ)で杖歩行(つえほこう)となり、要介護3と認定された。Aさんは、料理が大好きで、娘と一緒に食事を作ることを楽しみに生活していた。1か月前から認知症(dementia)が進行し、ユニット型介護老人福祉施設に入所した。Aさんは夕方になると、「ご飯の支度をしないといけないから帰ります」と言いながら、興奮して歩き回る様子がみられるようになった。
Aさんへの介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
  • 居室に鍵をかけて、自室で過ごしてもらう。

  • 介護福祉職と一緒に、夕食の準備をしてもらう。
  • 杖(つえ)を預かり、低めの丸椅子に座ってもらう。
  • 介護福祉職の判断で、向精神薬を服用してもらう。
  • ここがAさんの自宅であることを、理解してもらう。

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この過去問の解説 (3件)

01

Aさんの状況を整理しましょう。

・血管性認知症で認知機能の低下が進行中

・夕方になると帰宅願望が強くなり、興奮して歩き回る

・生活歴(料理が好き、娘と食事の準備が楽しみだった)

などです。

この状況では、本人の不安の軽減、安心感の提供、生活歴を活かしたケアが求められます。

選択肢1.

居室に鍵をかけて、自室で過ごしてもらう。

×

居室に戻るように促しても、Aさんの帰宅願望や役割意識への不安が解消されないため、逆に不安や興奮を高める可能性があります。

選択肢2. 介護福祉職と一緒に、夕食の準備をしてもらう。

Aさんの生活歴(料理が好き、娘と食事の準備が楽しみだった)を活かした対応です。

役割を担っているという満足感・安心感を得ることで、不安や興奮が落ち着く可能性があります。認知症ケアでは、不安の背景にある本人の思いに寄り添う姿勢が基本です。

選択肢3. 杖(つえ)を預かり、低めの丸椅子に座ってもらう。

×

身体拘束に近い発想であり、不安や興奮を逆に高める可能性があります。

選択肢4. 介護福祉職の判断で、向精神薬を服用してもらう。

×

向精神薬の服用は医師の判断であり、介護職が判断・指示することはできません。

選択肢5. ここがAさんの自宅であることを、理解してもらう。

×

認知症の方に「現実を理解させようとする」説明は、かえって混乱や不安を招く恐れがあります。

まとめ

まとめ

「帰宅願望」「役割意識」に対し、安心感を与える活動への参加を促す対応が適切です。認知症ケアの基本である「その人らしさを支える」姿勢が求められます。

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02

問題文にある

 

『Aさんは夕方になると、

「ご飯の支度をしないといけないから帰ります」と言いながら、

興奮して歩き回る様子がみられる』

 

という部分は、夕暮れ症候群と呼ばれる症状です。

これは、施設だと、早番の介護スタッフが退勤したり、

デイサービスやショートステイの利用者が帰宅する、

外が暗くなることなどを契機に、「家に帰りたい」

という欲求が強くなることを言います。

 

認知症介護をするうえでよくみられるもので

正しい対応をすることで興奮を穏やかにすることが期待できます。

 

選択肢1.

居室に鍵をかけて、自室で過ごしてもらう。

×:誤りです。

 

これは、居室隔離とよばれる身体拘束です。

身体拘束は、身体拘束廃止委員会などの多職種での話し合いで、

①切迫性

②一時性

③非代替性

の3要件を満たしている場合にのみ許されています。

介護職の独断で行ってよいものではなく、

また、Aさんに自傷他害行為がみられているわけではないので

緊急性の要件を満たしているとは言えません。

選択肢2. 介護福祉職と一緒に、夕食の準備をしてもらう。

○:正しいです。

 

認知症ケアの基本は、

本人の世界観を否定せずに受け入れることです。

これをバリデーションと言います。

不安を和らげ、自尊心を回復させ、

コミュニケーションを円滑にすることを目的としています。

 

この事例では、夕方になると夜ご飯の支度をしなければならない

という、役割と気持ちに対して寄り添うことでAさんの欲求を充足させ

気持ちの落ち着きを得て、それを邪魔せず助けてくれた人として

介護職を認識してもらい信頼関係の構築と向上が期待できます。

 

また、「料理が大好きで、娘と一緒に食事を作ることを楽しみに生活していた」

というAさんの習慣や楽しみを中心に考え、尊重したケアを行うことを

パーソンセンタードケアと呼び、これも認知症ケアの基本的な考え方です。

選択肢3. 杖(つえ)を預かり、低めの丸椅子に座ってもらう。

×:誤りです。

 

杖を使って歩行しているAさんの杖を奪い

立ち上がりが大変になる低い椅子に座らせる行為は

権利侵害である上に、身体拘束と言えます。

身体拘束は、身体拘束廃止委員会などの多職種での話し合いで、

①切迫性

②一時性

③非代替性

の3要件を満たしている場合にのみ許されています。

介護職の独断で行ってよいものではなく、

また、Aさんに自傷他害行為がみられているわけではないので

緊急性の要件を満たしているとは言えません。

 

更には、丸椅子には背もたれがないので

転倒等のリスクが高くなることからも

不適切なケアと言えます。

選択肢4. 介護福祉職の判断で、向精神薬を服用してもらう。

×:誤りです。

 

向精神薬の服用は、医師の判断によって行われるべきです。

介護職の一存で行うべきではありません。

 

ただし、頓用として処方されている場合は、

対応している介護職員の判断で服用することはあり得ますが、

本事例では自傷他害行為は確認されておらず、

向精神薬の服用による副作用を考慮すると、

誤りであると判断します。

選択肢5. ここがAさんの自宅であることを、理解してもらう。

×:誤りです。

 

Aさんにとって、施設は自宅でないと認識しています。

それを自宅だと本人の認識と異なる説明(否定)をしても、

Aさんの信じている事実を否定することになるので、

受け入れてもらえる可能性は限りなく低く、寧ろ

嘘をつく人、ごまかす人として、

信頼関係を大きく損なう可能性があります。

 

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03

正解は「介護福祉職と一緒に、夕食の準備をしてもらう」です。

 

Aさんの不安要素を傾聴し、帰りたい気持ちを緩和させてあげましょう。
「ご飯の支度をしないといけない」という思いに応えられる対応として、最も適した選択肢です。

選択肢1.

居室に鍵をかけて、自室で過ごしてもらう。

不適切

 

施錠して行動を抑制させるのは、身体拘束です。
Aさんの不安な気持ちは何も解決できていないので、不適切となります。

選択肢2. 介護福祉職と一緒に、夕食の準備をしてもらう。

適切

 

Aさんは、元々娘と一緒に食事を作ることを楽しみにしていました。
施設で職員と一緒に夕食を作ることで、安心感があり興奮も落ち着いてくるでしょう。

選択肢3. 杖(つえ)を預かり、低めの丸椅子に座ってもらう。

不適切

 

椅子から立ち上がって歩き出す可能性もあり、転倒のリスクが高いです。
杖が使えないのに低めの丸椅子に座らせる行為は、移動を抑制している状態なので身体拘束に該当します。

選択肢4. 介護福祉職の判断で、向精神薬を服用してもらう。

不適切

 

医療行為に当たるため、原則として行えません。
よって不適切となります。

選択肢5. ここがAさんの自宅であることを、理解してもらう。

不適切

 

認知症の方は理解するのが困難です。

先に不安に感じていることを聞き、安心できる対応が求められるので、不適切となります。

まとめ

今回は、認知症の方の対応方法でした。

 

ポイントとなるのは、AさんのADLと不安に感じていることです。
杖を預かったり、施錠をしたりせず、しっかり傾聴し共感する姿勢をもって対応しましょう。

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