管理栄養士の過去問
第38回
午後の部 問75

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問題

第38回 管理栄養士国家試験 午後の部 問75 (訂正依頼・報告はこちら)

K社健康保険組合の管理栄養士である。
対象者は、50歳、既婚男性、喫煙習慣なし。職場の健診で、特定保健指導の積極的支援を2年連続受けることになった。
前年の積極的支援では、週末の運動によって、6か月後に体重が6kg減少した。しかし、その2か月後に部署異動があり、接待での飲酒機会が週1回以上となった。さらに、家での飲酒も毎日、缶ビール2本(1本200kcal)に増えた。ビール以外の飲酒はない。部署異動から4か月後に健診を受けたところ、昨年の健診時とほぼ同じ体重になっていた。
今年の健診結果は、身長172cm、体重80kg、BMI 27.0kg/m2、運動は実施していない。

目標体重について、対象者から、最終的に前回達成した体重まで減らしたいという希望もあり、まず「3か月で−3kg」と設定した。目標達成のための計画である。最も適切なのはどれか。1つ選べ。

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この過去問の解説 (2件)

01

目標達成のために、1日に減らすべきエネルギー量を算出し、身体活動と食事両方からエネルギー量を減らす計画を立てます。

選択肢1. 家で飲む缶ビールを1本に減らす。

不適です。

 

家で飲む缶ビール1本を減らすと、減らせる摂取エネルギー量は1日200kcalです。

目標値に達していないことに加え、身体活動による消費も検討すべきです。

選択肢2. 家で飲む缶ビールをやめる。

不適です。

 

家で飲む缶ビールをやめると摂取エネルギー量は1日400kcal減らせますが、身体活動による消費も検討すべきです。

選択肢3. 接待時の飲酒量を控えめにして、3メッツの運動を週2時間行う。

不適です。

 

1週間に3メッツ2時間の運動では、安静時のエネルギー量1メッツを引いて

 5(メッツ)×体重80(kg)=400(kcal/週)

1日にすると57kcalしか減らせないので、接待時の飲酒量を控えめにしても目標には届かないと考えられます。

選択肢4. 週2日は休肝日とし、4メッツの運動を週4時間行う。

適切な計画です。

 

 

週2日の肝休日で1週間に800kcal、1日にして約114kcal

 

1週間4メッツ4時間の運動では、安静時のエネルギー量1メッツを引いて

 3(メッツ)×4(時間)×80(kg)=960(kcal/週)

1日にすると137kcal

 

合わせて1日約251kcal減らせるので適切な計画と言えます。

まとめ

体重を1kg減らすには、およそ7000kcalの削減が必要とされています。

 

目標達成のために減らすべき1日当たりのエネルギー量

 =3(kg)×7000(kcal)÷3(ヶ月)÷30日≒233(kcal/日)

 

食事と身体活動の両方からエネルギー量を減らす計画を立てることが望ましいです。

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02

体重を1kg減らすことはすなわち脂肪を1kg分消費することが必要です。脂肪1kgを消費するのに必要なエネルギーは、脂肪細胞の80%が脂質で構成されていることから、

9kcal(脂肪1gあたりのエネルギー)×1000(g)×0.8(80%)=7200(kcal)

となるため、体重(脂肪)1kg減らすには約7200kcalの消費が必要といえます。

 

本問において対象者は3か月で―3kgを目標としているため、1か月あたり―1kg、7200kcalの消費が必要です。7200(kcal)÷30(日)=240kcal

このことから1日当たり240kcalの消費が必要であることが分かります。

これらを踏まえて目標を検討しましょう。

選択肢1. 家で飲む缶ビールを1本に減らす。

不適切です。

毎日の缶ビールを1本に削減することで200kcalの削減はできますが、目標達成には1日当たり約240kcalの消費が必要であり、最適な目標ではありません。

選択肢2. 家で飲む缶ビールをやめる。

不適切です。

摂取エネルギーのコントロールとしては望ましいことですが、対象者の楽しみを奪ってしまうことは望ましくありません。無理のない範囲で継続可能な目標を設定することが重要です。

選択肢3. 接待時の飲酒量を控えめにして、3メッツの運動を週2時間行う。

不適切です。

身体活動強度(メッツ)と活動時間からエネルギー消費量推定値を算出します。

エネルギー消費量(kcal)=1.05×メッツ×時間(時)×体重(kg)・・・※(まとめにて解説)

この式に当てはめると

エネルギー消費量は、1.05×3×2×80=504kcal)となります。つまり1週間当たり504kcal、1日当たり72kcalの消費に繋がります。

目的達成のためには1日当たり240kcal消費する必要があり、この運動量では目標達成はできません。

また、接待時の飲酒をひかえ目にするという目標は具体的でなく、実行・評価がしにくいため目標として適切ではありません。

 

選択肢4. 週2日は休肝日とし、4メッツの運動を週4時間行う。

適しています。

週に2日休館日を設けることで、1日当たり2本のビールを2日間我慢することとなり、

200kcal×2本×2日=800kcal

1週間当たり800kcal、1日当たり114kcal、摂取をひかえることができます。

さらに4メッツの運動を週4時間実施することで、

1.05×4×4×80=1344kcal

となり、1週間で1344kcal、1日当たり192kcal消費することができます。

 

休肝日による摂取エネルギーの減少と運動による消費エネルギーの増加により

114+192=306 となり、1日当たり306kcalの消費が期待できます。

目標のエネルギー量を削減できるほか、具体的で実践しやすい目標設定であるため適しています。

まとめ

身体活動強度(メッツ)と活動時間からエネルギー消費量推定値を算出します。

エネルギー消費量(kcal)=1.05×メッツ×時間(時)×体重(kg)・・・※(まとめにて解説)

この計算式で1.05が乗じられている理由を含め計算式の解説します。

 

メッツとは安静時代謝量を1としたときに何倍の身体強度であるかを示したものです。

そのため消費エネルギー量を求めるにはまず、安静時代謝量のエネルギー量を明らかにする必要があります。

ここで、安静時の酸素の消費量は一般に3.5mL/kg/分(1分当たり、体重1kgあたり)であるとされており、酸素1L消費した時のエネルギー消費量は5kcalです。

このことから、1分当たり、体重1kgあたりの安静時のエネルギー消費量を任意の実数xとしたとき、

(1L=)1000mL:5kcal=3.5mL:xkcal

が成り立ち、この式を解くとx=0.0175(kcal)であることが分かります。

これによっての酸素消費量をもとにした1分間当たり体重1kgあたりのエネルギー消費量が0.0175kcalであることが求められました。

さらに運動時間を考慮するにあたって単位をそろえるため、1時間当たりに直すと

0.0175(kcal)×60(分)=1.05

となり、体重1kgあたりの1時間当たりの安静時エネルギー消費量の推定値が1.05であると算出できます。

 

このようにして安静時エネルギー消費量に運動強度、時間、体重を乗じることでエネルギーの消費推定量を算出できるようになります。

 

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