管理業務主任者の過去問
平成30年度(2018年)
問6

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問題

管理業務主任者試験 平成30年度(2018年) 問6 (訂正依頼・報告はこちら)

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  • 不法行為の時点で胎児であった被害者は、出生後、加害者に対して財産的損害の賠償を請求することはできない。
  • 不法行為による慰謝料請求権は、被害者がこれを行使する意思を表明し、又はこれを表明したと同視すべき状況にあったときはじめて相続の対象となる。
  • 使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたこと、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを証明できなければ、被用者に故意又は過失がなくても、使用者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければならない。
  • 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵(かし)があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者がその損害を賠償する責任を負うが、当該占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

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この過去問の解説 (3件)

01

1:不適切です。
不法行為の時点で胎児であっても損害賠償の請求は可能です。

2:不適切です。
不法行為による慰謝料請求権は、意思の表明に関係なく相続の対象となります。

3:不適切です。
被用者(従業者)に故意又は過失がない場合は不法行為要件として成立しないため、使用者責任としての損害賠償は発生しません。

4:適切です。
第一次責任者である占有者が必要な注意を講じていた場合は、所有者が損害賠償義務を負います。

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02

不法行為は,民法709条から724条の2までとそれほど条文の数は多くありませんので,基本的な条文や判例については,各自がお持ちのテキスト等でおさえましょう。

選択肢1. 不法行為の時点で胎児であった被害者は、出生後、加害者に対して財産的損害の賠償を請求することはできない。

誤りです。

民法721条によれば,胎児は,不法行為においては,生まれたものとみなします

ですから,胎児は,民法721条に基づいて,本肢の不法行為に基づく損害賠償請求を加害者に対して行なうことができます。

 

なお,胎児が生まれたものとみなされる場合は,前述の①民法721条に基づく不法行為に基づく損害賠償請求のほかに2つあります。

②相続(民法886条1項),③遺贈(民法965条・886条1項)の2つです。 

以上のとおり,胎児は,前述の3つについては,権利主体となります。 

選択肢2. 不法行為による慰謝料請求権は、被害者がこれを行使する意思を表明し、又はこれを表明したと同視すべき状況にあったときはじめて相続の対象となる。

誤りです。

この肢は,判例知識です。

慰謝料請求権は,金銭債権ですから,被害者が死亡したときに当然に相続されます(最大判昭和42年11月1日)。

本人の請求意思の表明の有無は問いません。 

したがって,「被害者がこれを行使する意思を表明し,又はこれを表明したと同視すべき状況にあったときはじめて相続の対象となる。」という部分が誤りです。 

選択肢3. 使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたこと、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを証明できなければ、被用者に故意又は過失がなくても、使用者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければならない。

誤りです。

使用者責任についての問題です。

民法715条1項に規定があります。

同項ただし書において「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。」と規定されています。

使用者責任の規定は,被用者に一般的不法行為の要件(民法709条)が備わっていることが前提となっています(大判大正4年1月30日)。 

  

本肢のように,被用者に故意又は過失がないということは一般的不法行為の要件を備えていないことになりますので,使用者は,第三者に損害を与えても賠償責任は負いません。 

選択肢4. 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵(かし)があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者がその損害を賠償する責任を負うが、当該占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

正しいです。

いわゆる工作物責任についての問題です。民法717条に規定されています。

同条1項は,土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があり,それにより他人に損害を与えた場合(瑕疵と損害との間に因果関係がある)に,免責事由がないことを要件として,第1次的には,占有者に損害賠償責任を負わせ,第2次的に所有者に損害賠償責任を負わせています。

これは,瑕疵ある工作物を支配している者に相応の責任を負わせるという「危険責任の法理」に基づいています。

 

つまり,第1次的に占有者,第2次的に所有者が責任を負うことになります。

本肢は,正しいです。

不可抗力を除けば,占有者も所有者も責任を負わないという事態は起きないことになります。  

まとめ

不法行為は,本問の論点だけでなく,

①責任無能力者の監督義務者等の責任(失火責任法との関係で,監督義務者に責任無能力者の監督について重過失がなければ不法行為責任を免れる)

②共同不法行為者の責任

③不法行為と債務不履行の比較(帰責事由,過失相殺,消滅時効等)

については,いずれも問われやすいのでおさえておきましょう。 

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03

本問題は、不法行為に関連するさまざまなケースについて、民法の規定及び判例に基づいた正しい解釈を問う内容です。

具体的には胎児時の損害賠償請求、慰謝料請求権の相続、使用者責任、工作物責任に関する事例が扱われています。

選択肢1. 不法行為の時点で胎児であった被害者は、出生後、加害者に対して財産的損害の賠償を請求することはできない。

誤り

解説:不法行為の時点で胎児であった被害者は、出生後に加害者に対して財産的損害賠償を請求できます。

民法721条では、不法行為の被害者が胎児であっても出生後に損害賠償を請求する権利を有していると規定されています。

選択肢2. 不法行為による慰謝料請求権は、被害者がこれを行使する意思を表明し、又はこれを表明したと同視すべき状況にあったときはじめて相続の対象となる。

誤り

解説:不法行為による慰謝料請求権は、被害者の意思表示に関わらず相続の対象となります。

慰謝料請求権は金銭債権の一形態であり、被害者の死亡によりその相続人に移転します。

選択肢3. 使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたこと、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを証明できなければ、被用者に故意又は過失がなくても、使用者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければならない。

誤り

解説:使用者責任において、被用者(従業者)に故意または過失がなければ、使用者は損害賠償責任を負いません。

民法715条に基づく使用者責任は、被用者の故意または過失がある場合に限定されています。

選択肢4. 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵(かし)があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者がその損害を賠償する責任を負うが、当該占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

正しい

解説:土地の工作物の設置または保存に瑕疵があり他人に損害を与えた場合、占有者がその損害を賠償する責任を負います。

しかし、占有者が損害の発生を防止するために必要な注意を尽くしていた場合は、所有者がその損害を賠償する責任を負います。

まとめ

不法行為に関連する問題を解く際には、民法の関連条文や判例に基づいて様々なシナリオを評価する必要があります。

胎児の損害賠償請求権、慰謝料請求権の相続、使用者責任の範囲、及び工作物責任の条件など、不法行為に関する基本的な知識が問われます。

特に、胎児が被害者となる場合や、慰謝料請求権の相続に関しては、明確な理解が求められる重要なポイントです。

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