管理業務主任者 過去問
令和4年度(2022年)
問4
問題文
甲土地を所有するAが、B銀行から融資を受けるに当たり、甲土地にBのために抵当権を設定した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。ただし、甲土地には、Bの抵当権以外の担保権は設定されていないものとする。
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問題
管理業務主任者試験 令和4年度(2022年) 問4 (訂正依頼・報告はこちら)
甲土地を所有するAが、B銀行から融資を受けるに当たり、甲土地にBのために抵当権を設定した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。ただし、甲土地には、Bの抵当権以外の担保権は設定されていないものとする。
- 抵当権設定当時、甲土地上にA所有の建物があった場合には、当該抵当権の効力は当該建物にも及ぶ。
- 抵当権設定当時、甲土地が更地であった場合、当該抵当権の実行手続により買い受けたCから甲土地の明渡しが求められたときには、Aは、その請求に応じなければならない。
- 抵当権の設定行為において別段の合意がない限り、被担保債権の利息は当該抵当権によって担保されない。
- Bの抵当権は、Aに対しては、被担保債権が存在していても、時効によって消滅する。
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この過去問の解説 (2件)
01
本問は抵当権について基本的な条文知識を問うものです。
雑多な知識の詰め合わせ問題なので、肢相互の比較で解くことはできません。
知らないとどうしようもないのですが、落ち着いて考えれば、それはおかしいのではないか?という違和感で解けるのではないかと思います。
違和感に対する嗅覚を鍛えるには、やはり基礎となる知識が必要なので、知識を身に付ける必要に変わりはありませんが。
「最も適切」ではありません。
土地に設定した抵当権は土地に付加して一体となっている物に及びますが、建物だけは例外です。
民法第370条本文「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。」
日本では、土地及びその定着物はまとめて一つの不動産として扱いますが、建物だけは土地とは独立の不動産として扱います。
民法第86条「土地及びその定着物は、不動産とする。」
厳密に言うと、建物も土地の定着物の一つであり、建物を土地と独立の不動産とする明文の規定はありません。
であれば、建物もまた土地と一体として不動産となると考えるのが本来です(比較法的にはその方が普通と言っていいでしょう)。
しかし、日本の法制度全体を見ると明らかに区別しているという現実があり、法理論上、建物は土地とは別個の不動産ということが確立しています。
上記民法第370条本文が「建物を除き」としているのも、建物が土地とは別個の不動産であるということを前提にしているからと解釈されています(間接的な条文上の根拠だということです。他にも同様の規定があります)。
明文の根拠はないが土地と建物は別の不動産。これは民法というか法律の基礎中の基礎の知識です。常識として憶えてください。
「最も適切」です。よってこの肢が正解です。
一読しただけだと当たり前では?と思うかもしれません。
それで正解なので構わないのですが、この問題の趣旨は要するに、抵当権設定当時に更地であった場合、「その後に土地所有者が抵当土地上に建物を建てたとしても法定地上権は成立しない」という話です。
土地と建物は別個の不動産であり、土地に設定した抵当権の効力は建物には及びません。ですから、抵当権を実行した場合、換価されるのは土地だけであり、建物は執行対象とはならないのが原則です。
そこで抵当土地上に土地所有者の所有する建物があった場合、抵当権実行により土地の所有権が移転すると、建物を所有するために土地を占有する権原(*)を失います。
そうすると、建物を所有している状態は不法占有になり、建物所有者は建物を取り壊して撤去(法律的には一般に「収去」と言います)しなければなりません。これは社会に見て不経済ですし建物所有者にとっても酷です。
そこで、土地だけに対する抵当権設定当時に土地上に土地と所有者が同じ建物が存在した場合、その後抵当権実行により土地と建物の所有者が異なることになったときには、建物のために地上権が設定されたとみなされます(**)。
これを法定地上権と言います(なお、建物だけに抵当権を設定して、実行により所有者を異にするようになったとき、つまり逆のときも同様です)。
民法第388条前段「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。」
実際のところ、実務的には土地建物の両方に抵当権を設定するのが通常なので、本条の適用機会は少ないです。
ここで問題は、この土地上の建物がいつの時点で存在している必要があるのかです。判例(最判昭和36年2月10日)通説では、抵当権設定時に存在していることが必要だと解しています。
つまり、更地に抵当権が設定され、その後に建物が建てられた場合、抵当権実行により、土地と建物の所有者を異にすることになったとしても法定地上権は成立しないということです。
法定地上権が成立しない以上、建物所有者は土地の占有権原がなく、その結果として抵当土地の買受人からの明渡請求を拒めないということになります。
ちなみに、そもそも抵当権設定後に建物を建てなかった(例えば駐車場として使用していただけ)という場合には、法定地上権は当然問題になりません。この場合、抵当土地の買受人からの明渡請求に応じなければならないのは言うまでもありません。
なお、法定地上権が成立しない場合には一括競売という処理が可能です。
つまり、本来は抵当権の効力の及ばない建物も土地と一緒にまとめて競売してしまうことができます。
実際上は、二束三文の建物は取り壊して売る方がむしろ高く売れて抵当権設定者にとっても利益になることもありますが。
民法第389条第1項「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。」
(*)何らかの行為なり状態なりの事実について、法律上正当化する根拠のことです。建物を土地上に所有するためには、土地の占有権“限”(こちらは単なる権能という意味です)が必要であり、この場合、所有権です。占有権限としての土地所有権がそのまま占有を正当化する根拠としての権原となります。まあ、権限と権原という二つの概念があるという程度の理解で十分です)。
(**)「みなす」は法律用語です。法律上の擬制と言い、「法律上はそうであるものとして扱い、実際にはそうでないとしてもそれを立証して覆すことを認めない」という意味です。反証を認めないという法律効果は強力なので、法令上の根拠なく認めることはできません。
法律論において、安易に「みなす」を使うのは素人です。厳に慎みましょう。
「最も適切」ではありません。
抵当権の被担保債権の範囲は、被担保債権から生じる利息債権の最後の2年分にも及びます。
民法第375条第1項本文「抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。」
また、ただし書により、最後の2年分より前の利息についても満期後に特別の登記をすれば抵当権の効力が及びます。
民法第375条第1項ただし書「ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。」
この2年間に制限する規定の趣旨は、利息が増えると被担保債権額が大きくなり後順位抵当権者などの利益を害するのでそれを防ぐことです。
とすると、高順位抵当権者などを害しない限りは、2年を超える利息を担保していても問題はありません。
そこで、抵当権設定者あるいは抵当不動産の第三取得者との関係では、抵当権は2年分を超える利息についても抵当権の効力は及び、利息全額を弁済しない限り、抵当権を消滅させることはできません。
言い換えれば優先弁済権がないだけで抵当権の被担保債権であること自体は否定されないということです。
「最も適切」ではありません。
抵当権は被担保債権と独立して時効により消滅することがありますが、抵当権設定者(及び債務者)との関係では、被担保債権から独立して時効消滅することはありません。
民法第396条「抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。」
まあ、ある意味当然とも言えます。
金を借りて抵当権を設定した者が、金を返さずに抵当権の消滅を主張するって虫が良すぎるでしょう。
この条文の反対解釈により、債務者及び抵当権設定者以外に対しては、被担保債権と独立して消滅時効にかかる可能性があるということになります(大判昭和15年11月26日)。
この点は理論的には争いのあるところではありますが、管理業務主任者試験では気にする必要はないでしょう。
ともかく、債務者及び抵当権設定者は、被担保債権が存在する以上、抵当権の負担を負うべきであるというのは、いわば当然のことと理解してください。
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02
抵当権は、登場人物が多いわりにこれといった図の書き方がないです。
以下を例に、自分が分かりやすいと思う図の書き方を模索しましょう。
----←※土地を表している
A|B|←※土地にBの抵当権がくっついている
-
不適切。抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である抵当不動産に付加して一体となっている物に及びます(民法370条)。
裏を返せば、土地に設定した抵当権の効力は、建物には及ばないということです。
適切。抵当不動産の第三取得者Cは、その競売において買受人となることができます(民法390条)。
したがって、抵当権設定当時、甲土地が更地であった場合、当該抵当権の実行手続により買い受けたCから甲土地の明渡しが求められたときには、Aは、その請求に応じなければならないと言えます。
不適切。抵当権者Bは、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができます(民法375条1項)。
したがって、抵当権の設定行為において別段の合意がない限り、被担保債権の利息は満期となった最後の2年分についてのみ、当該抵当権によって担保されると言えます。
不適切。抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しません(民法396条)。
これを「付従性」と言います。
難しい用語がたくさん使われているので、以下のようにそれぞれ言い換えると分かりやすくなります。
(1)抵当権:Aから借金が返されなかったときに、甲土地を売って代金を回収する権利
(2)債務者及び抵当権設定者:借金返済の債務を負っている者及び抵当権を設定した者(いずれもAのこと)
(3)その担保する債権:被担保債権。Aから借金を返済してもらえる権利
難解な選択肢もありますが、いずれも頻出な論点です。
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