管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問22

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問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問22 (訂正依頼・報告はこちら)

長期修繕計画作成ガイドラインに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  • 修繕積立金は、不測の事故や自然災害(台風、大雨、大雪等)による被害の復旧など、特別な事由による修繕工事に要する経費に充当する場合に取り崩すことができる。
  • 修繕積立金は、マンションの建替えを目的とした調査等に要する経費に充当する場合に取り崩すことができる。
  • 修繕積立基金又は一時金の負担がある場合は、これらを修繕積立金会計とは区分して管理する。
  • 長期修繕計画の作成に要する経費は、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでも充当することができる。

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この過去問の解説 (2件)

01

長期修繕計画作成ガイドラインに関する問題です。

選択肢1. 修繕積立金は、不測の事故や自然災害(台風、大雨、大雪等)による被害の復旧など、特別な事由による修繕工事に要する経費に充当する場合に取り崩すことができる。

適切

 

修繕積立金は、災害不測の事故に伴う特別の修繕工事に要する経費に充当する場合に取り崩すことができます(長期修繕計画作成ガイドラインコメント第2章第1節3二)。 

選択肢2. 修繕積立金は、マンションの建替えを目的とした調査等に要する経費に充当する場合に取り崩すことができる。

適切

 

修繕積立金は、マンションの建替えを目的とした調査等に要する経費に充当する場合に取り崩すことができます(長期修繕計画作成ガイドラインコメント第2章第1節3二)。 

選択肢3. 修繕積立基金又は一時金の負担がある場合は、これらを修繕積立金会計とは区分して管理する。

不適切

 

購入時に将来の計画修繕工事に要する経費として修繕積立基金を負担する場合又は修繕積立金の総額の不足などから一時金を負担する場合は、これらを修繕積立金会計に繰り入れます(長期修繕計画作成ガイドライン第3章第2節2)。

したがって、これらを修繕積立金会計と区分して管理するわけではありません。

選択肢4. 長期修繕計画の作成に要する経費は、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでも充当することができる。

適切

 

長期修繕計画の作成に要する経費は、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金どちらからでも充当することができます(長期修繕計画作成ガイドラインコメント第2章第1節3二)。  

まとめ

長期修繕計画作成ガイドラインのコメントから問われる選択肢が多い問題でした。

原文に加えコメントも読み込み、内容を理解することが重要です。

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02

本問は長期修繕計画作成ガイドライン(以下、単にガイドライン)の修繕積立金に関する内容について問うものです。
とは言っても、ガイドラインの記述に即した問題なのでガイドラインの問題となっていますが、修繕積立金の使途については具体的な定めが標準管理規約にあり、また、ガイドライン自体が標準管理規約に準拠しているので実質において標準管理規約の問題です。


ガイドラインは、国交省のウェブサイトの住宅:マンション管理 - 国土交通省にリンクがあります。
コメントまで含めて140ページもありますから、全部目を通すのはなかなか現実的ではありませんが、テキスト、過去問に登場した部分は適宜参照して目を通しておくのがよいと思います。
詠むとしたら前書き部分と第3編「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」以下だけでいいと思います。それでも100ページ以上ありますが。

選択肢1. 修繕積立金は、不測の事故や自然災害(台風、大雨、大雪等)による被害の復旧など、特別な事由による修繕工事に要する経費に充当する場合に取り崩すことができる。

「最も不適切」ではありません。

 

ざっくり言えば計画修繕や緊急の復旧などのために多額の資金が必要となるときに備えて資金をプールしておくのが修繕積立金です。
つまり、まさに肢の通り「特別な事由」による修繕工事のための積立金です。

 

ガイドライン第2章第1節3「長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定の条件」
「二 会計処理
管理組合は、修繕積立金に関して、次に掲げる事項により会計処理を行うことが必要です。
①修繕積立金は管理費と区分して経理する。
②専用庭等の専用使用料及び駐車場等の使用料は、これらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。
③修繕積立金(修繕積立基金を含む。)を適切に管理及び運用する。
④修繕積立金の使途は、標準管理規約第28条に定められた事項に要する経費に充当する場合に限る

 

同コメント
「◆積み立てた修繕積立金は、計画修繕工事に要する経費に充当する場合に取り崩すことができます。また、災害や不測の事故に伴う特別の修繕等やマンションの建替えを目的とした調査等に要する経費に充当する場合にも取り崩すことができます。」
 

この根拠となるのが標準管理規約(単棟型)第28条第1項です。

 

標準管理規約(単棟型)第28条第1項「管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
(第1号略)
二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
(第3号以下略)

選択肢2. 修繕積立金は、マンションの建替えを目的とした調査等に要する経費に充当する場合に取り崩すことができる。

「最も不適切」ではありません。

 

建替えは、通常の管理ではありません。
そして、その通常の管理でない建替えのための調査もまた通常の管理ではありません。
よって、建替え目的の調査等に要する費用もまた修繕積立金を充てることができます。

 

ガイドライン第2章第1節3二「会計処理」コメント
「◆積み立てた修繕積立金は、計画修繕工事に要する経費に充当する場合に取り崩すことができます。また、災害や不測の事故に伴う特別の修繕等やマンションの建替えを目的とした調査等に要する経費に充当する場合にも取り崩すことができます。」

 

この根拠もまた標準管理規約第28条第1項です。

 

標準管理規約(単棟型)第28条第1項「管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
(第1号ないし第3号略)
四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査
(第5号略)

選択肢3. 修繕積立基金又は一時金の負担がある場合は、これらを修繕積立金会計とは区分して管理する。

「最も不適切」です。よってこの肢が正解です。

 

使途が明らかに異なるからこそ管理費会計と修繕積立金会計は区分管理をしています。
修繕積立基金又は一時金であっても修繕積立金の一部であることに変わりはないので要するに使途は同じです。ならば修繕積立金会計と区分する必要はありません。
意味もなく会計を区分して増やすのは負担にしかなりませんから、分ける意味がないのなら一緒にしておけばいいです。一時金は名前の通り単発的で何度も発生するものではないのでわざわざ分ける意味がありません。

 

ガイドライン第3章第2節2「収入の考え方」
「(略)
また、購入時に将来の計画修繕工事に要する経費として修繕積立基金を負担する場合又は修繕積立金の総額の不足などから一時金を負担する場合は、これらを修繕積立金会計に繰り入れます。」

 

同コメント
「◆修繕積立金会計を管理費会計と区分して設けることが必要です。その計画期間の収入としては、(計画の見直しの場合は修繕積立金の残高のほか)①修繕積立金、②専用庭等の専用使用料や駐車場等の使用料などからの繰入金、③修繕積立金の運用益などがあります。
また、④分譲時に修繕積立基金を負担する場合や⑤修繕積立金の総額の不足などから一時金を負担する場合はこれらを含めます
なお、計画期間の支出としては、①推定修繕工事費の累計額のほか、②借入金がある場合は、計画期間の償還金(元本と利息)を含めます。」

 

標準管理規約(単棟型)コメント第28条関係
「②分譲会社が分譲時において将来の計画修繕に要する経費に充当していくため、一括して購入者より修繕積立基金として徴収している場合や、修繕時に、既存の修繕積立金の額が修繕費用に不足すること等から、一時負担金が区分所有者から徴収される場合があるが、これらについても修繕積立金として積み立てられ、区分経理されるべきものである。」

 


なお、機械式駐車場など単体で点検修繕に多額の費用を要することが想定される場合には、比較的費用の掛からない平置きも含めた駐車場使用料を独立した会計にするという風に、管理費と修繕積立金の二本立て以外の会計区分を設けることがないわけではありません。
駐車場使用料は継続的に発生するものですからその収支を期間で管理する意味があります。単発的な一時金とは異なります。

 

同コメント
「◆二段式、多段式等の機械式駐車場があり、点検や修繕に多額の費用を要することが想定される場合は、平置駐車場を含めて、管理費会計及び修繕積立金会計とは区分して駐車場使用料会計を設けることも考えられます。」

選択肢4. 長期修繕計画の作成に要する経費は、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでも充当することができる。

「最も不適切」ではありません。

 

長期修繕自体は確かに通常の管理ではありませんが、一定の期間で必ず発生するものであり、他の突発的又は例外的な場合とは若干性質が違います。そして、その一定の期間で必ず発生する長期修繕に備えてあらかじめ長期修繕計画を作成することは長期修繕の当然の前提であり一部であるとも言えますが、日頃から行う通常の管理の延長として捉えることもできます。
そして、計画の作成自体は必ずしも費用が多額というわけでもなく、管理費からでも十分に支弁することができます。
であるならば、必ずしも修繕積立金を充当しなくても、柔軟に対応して構いません。

 

ガイドライン第2章第1節3二「会計処理」コメント
「標準管理規約 第32条(業務)関係コメント④によれば、長期修繕計画の作成(又は見直し)に要する経費及びそのために事前に行う調査・診断に要する経費は、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでも充当することができます。」

 

標準管理規約(単棟型)コメント第32条関係
「④長期修繕計画の作成又は変更に要する経費及び長期修繕計画の作成等のための劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでもできる。」


ただし、これはあくまでも日頃から備えとして行う修繕「計画」の作成(又は変更及びそのための劣化診断)に要する経費の話であり、実際に修繕工事を行うことを前提とした劣化診断はもはや現実化した修繕工事の一部として経常的な管理とは言えませんから、修繕積立金を充当するべきです。

 

同コメントただし書
「ただし、修繕工事の前提としての劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、修繕工事の一環としての経費であることから、原則として修繕積立金から取り崩すこととなる。」

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