管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問27

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問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問27 (訂正依頼・報告はこちら)

次の記述のうち、標準管理規約(単棟型)によれば、管理組合が修繕積立金を充当できる費用として適切なものはいくつあるか。
ただし、規約に別段の定めはないものとする。

ア  外灯設備の管球の交換に要した費用
イ  一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕工事を前提に専門家に建物診断を委託した費用
ウ  新たに整備された公共下水道に汚水を直接放流するので、不要となった浄化槽を解体し、その場所にプレイロットを新設するのに要した費用
エ  排水管取替え工事において、共用配管と構造上一体となった専有部分である配管の工事に要した費用
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この過去問の解説 (2件)

01

適切なものは「イ・ウ」二つです。

 

ア 不適切

この費用は共用設備の補助維持費に該当します。

これは管理費から充当するものであり、修繕積立金から充当するものではありません(標準管理規約第27条3項)。

 

イ 適切

一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕は、修繕積立金から充当できます(標準管理規約第28条1号)。

また、修繕工事の前提としての劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、修繕工事の一環としての経費であることから、原則として修繕積立金から取り崩すこととなります標準管理規約コメント第32条関係④)。

 

ウ 適切

この費用は敷地及び共用部分等の変更に該当します。

これは修繕積立金から充当するものとなります(標準管理規約第28条1項3号)。

 

エ 不適切

配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものです。

なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられます。その場合には、あらかじめ費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定することが必要です(標準管理規約コメント第21条関係⑦)。

本問題では規約に別段の定めはないものとされているため、修繕積立金から充当することはできません。

まとめ

管理費及び修繕積立金をどのような経費に充当することができるかを問われている問題です。

以下にまとめましたので確認しておきましょう。

 

管理費は、次に掲げる通常の管理に要する経費に充当します。

①管理員人件費

②公租公課

③共用設備の保守維持費及び運転費

④備品費、通信費その他の事務費

⑤共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料

⑥経常的な補修費

⑦清掃費、消毒費及びごみ処理費

⑧委託業務費

⑨専門的知識を有する者の活用に要する費用

⑩管理組合の運営に要する費用

⑪その他第32条に定める業務に要する費用(次条に規定する経費を除く)

(標準管理規約第27条)

 

管理組合が積み立てた修繕積立金は、次に掲げる経費に充当する場合に限って取り崩すことができます。 

①一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕

②不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕

③敷地及び共用部分等の変更

④建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査

⑤その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

(標準管理規約第28条1項)

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02

本問は標準管理規約(単棟型)における修繕積立金の使途に関する基本的知識を問う問題です。


一般に、区分所有者が定期に管理組合に納入する金銭は、管理費と修繕積立金があります。
管理費は日常の管理修繕等に要する費用に充当し、修繕積立金は特別の管理修繕等に要する費用に充当します。大まかに言えば、毎日毎週毎月毎年必要な管理修繕等又は滅多になくても少額で即対応するようなものは管理費、長期の計画又は突発的な事態による修繕等は修繕積立金だと思っておけば、たいていの問題は答えが出ます。
あとは特殊な場合だけ憶えておけば十分です。

 


アは適切ではありません。

 

照明設備の管球の交換費用は一般的に、日常の管理の範囲内です。
金額も少額ですし、超寿命のLEDが普及して交換頻度が下がったとはいえ、元々数カ月から1年程度で交換することは普通です。
ですから、特別の管理修繕等のための修繕積立金を使用することはできません。管理費を充当します。

 

標準管理規約(単棟型)第27条「管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。
一 管理員人件費
二 公租公課
三 共用設備の保守維持費及び運転費
四 備品費、通信費その他の事務費
五 共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料
六 経常的な補修費
七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
八 委託業務費
九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
十 管理組合の運営に要する費用
十一 その他第32条に定める業務に要する費用(次条に規定する経費を除
く。)

 

照明設備の管球交換は、第3号「共用設備の保守維持費」に該当します。

 

標準管理規約(単棟型)第28条「管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
三 敷地及び共用部分等の変更
四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査
五 その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
2 前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項の建替え決議(以下「建替え決議」という。)又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後であっても、マンションの建替え等の円滑化に関する法律((略)以下「円滑化法」という。)第9条のマンション建替組合の設立の認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間において、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。
3 第1項にかかわらず、円滑化法第108条第1項のマンション敷地売却決議(以下「マンション敷地売却決議」という。)の後であっても、円滑化法第120条のマンション敷地売却組合の設立の認可までの間において、マンション敷地売却に係る計画等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時にマンション敷地売却不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。
4 管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕
積立金をもってその償還に充てることができる。
(第5項略)

 

照明設備の管球の交換はどれにも該当しません。

ちなみに「管球」とは「電"球"」と「蛍光"管"」のことです。今般、LED化が進んでいるので、「LED電"球"」と「直"管"LED」になってますが。

 


イは適切です。

 

一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕工事というのは、一般に大規模修繕工事のことだと思って構いません。これは長期の計画に従って行う特別の管理修繕等であり、まさに修繕積立金はそのために存在します。
そして、この修繕の一環として行う事前調査である建物診断等もまた、特別の管理修繕等の範囲内として修繕積立金を使用することができます。

 

標準管理規約(単棟型)第28条第1項「(略)修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
(第2号以下略)


ただし、修繕工事の計画を作成し又はその内容を変更するための建物診断は、実際の具体的な修繕工事を前提としておらず、あくまでも、来るべき修繕工事に備える日常的な準備とも言えます。
そして、金額的にもそれほど多額の費用を要するわけでもありません。
そこでこの場合には、管理組合の財産状態等に応じて修繕積立金を充てることも管理費を充てることもどちらも可能です。

これは特殊な場合として憶えておきましょう。

 

標準管理規約(単棟型)コメント第32条関係
「④長期修繕計画の作成又は変更に要する経費及び長期修繕計画の作成等のための劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでもできる。
ただし、修繕工事の前提としての劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、修繕工事の一環としての経費であることから、原則として修繕積立金から取り崩すこととなる。」

 


ウは適切です。

 

程度論ではありますが、基本的に既存の設備を撤去し、新たな設備を設置するような工事は日常の管理修繕等の範囲とは言えません。

 

標準管理規約(単棟型)第28条第1項「(略)修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
(第1号及び第2号略)
三 敷地及び共用部分等の変更
(第4号以下略)

 

例えばバリアフリー化を目的とする手すり、スロープ等の設置、エレベーター、共用廊下、共用階段の改修などもそうです。
修理のついでにできるようなちょっとした改良程度であればともかく、ある程度の規模の改修は日常的な修繕とは言えず、特別の管理修繕等だと思ってください。
軽微な改良程度であれば、標準管理規約(単棟型)第32条第9号の「敷地及び共用部分等の変更」に該当し、標準管理規約(単棟型)第27条第11号「その他第32条に定める業務に要する費用」として管理費を充当することは可能です。

 


エは適切ではありません。

 

専有部分の整備改修等にかかる費用は専有部分の所有者が負担するのが原則です。
標準管理規約(単棟型)では、組合の管理する共用部分と構造上一体となっている専有部分について共用部分と一体として管理する必要があるときは、管理組合が管理するとは書いてありますが、修繕を行い費用を負担するとは書いてありません

管理組合が修繕と費用を負担する旨の規約の定めがあれば可能ですが、本問は「規約に別段の定めはない」となっているので修繕積立金を使用することはできません。

 

標準管理規約(単棟型)第21条第2項「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。」

 

標準管理規約(単棟型)コメント第21条関係
「⑦第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。」


ちなみにこの内容は、毎年のように、しかも複数の設問で出題される必須知識です。絶対に憶えておきましょう。

専有部分の管理修繕等に掛かる費用は原則、専有部分の所有者の負担です。
ただし、共用部分と一体として修繕等を行う方が安上がりならば、管理組合の負担で修繕を行う旨の定めを規約に設けて管理組合が費用負担することができます。


※余談ですが本問はそもそも「標準管理規約(単棟型)によれば」という前提なので「規約に別段の定めがある」はずがありません。
標準管理規約に別段の定めを付け加えた時点でそれはすでに標準管理規約ではないのです。規約で別段の定めをすることができるというのは、あくまでもコメントで注釈として書いてあるだけで、標準管理規約(単棟型)自体には書いてありません(当たり前ですが)。
その意味では厳密に言うと、「ただし」以下は単なる注意的な記述で、極論を言えば余事記載です。あっても問題があるわけではありませんが。

 


以上、適切なものはイとウの二つです。

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