貸金業務取扱主任者の過去問
令和4年度(2022年)
貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること 問12

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問題

貸金業務取扱主任者資格試験 令和4年度(2022年) 貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること 問12 (訂正依頼・報告はこちら)

相殺に関する次の記述のうち、民法上、その内容が適切でないものを1つだけ選びなさい。
  • Aは、Bに対して悪意による不法行為に基づく損害賠償債権を有するとともに売買契約に基づく代金債務を負っている。この場合において、Aは、当該損害賠償債権と当該代金債務とを相殺することができない。
  • Aは、Bに対して売買契約に基づく代金債権を有するとともに金銭消費貸借契約に基づく借入金債務を負っている。当該売買契約においては、Bは、代金の支払期日に、Aからの商品の納品と引き換えに、代金をAに支払う旨の約定がなされている。この場合において、Aは、代金の支払期日が到来しても、Bに商品を納品していないときは、当該代金債権と当該借入金債務とを相殺することができない。
  • Bは、Aに対して売買契約に基づく代金債権を有しており、Bの債権者であるCは、当該代金債権を差し押さえた。Aに当該差押命令が送達された後、Aが、DからDのBに対する貸付金債権を譲り受けた場合、Aは、当該貸付金債権とBに対して負う代金債務との相殺をもってCに対抗することができない。
  • Aは、Bに対して金銭消費貸借契約に基づく貸付金債権を有するとともに売買契約に基づく代金債務を負っている。この場合において、AがBに当該貸付金債権と当該代金債務との相殺の意思表示をしたときは、当該意思表示は双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。

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この過去問の解説 (1件)

01

相殺の基本事項について理解しましょう。

選択肢1. Aは、Bに対して悪意による不法行為に基づく損害賠償債権を有するとともに売買契約に基づく代金債務を負っている。この場合において、Aは、当該損害賠償債権と当該代金債務とを相殺することができない。

適切ではありません。

 

悪意による不法行為に基づく損害賠償債務については、債務者はその債務を相殺によって消滅させることは認められていません。
しかし、本件では、Aが悪意による不法行為に基づく損害賠償「債権の債権者」であるため、Aが自身の債権を相殺によりBに対して行使することは可能です。

選択肢2. Aは、Bに対して売買契約に基づく代金債権を有するとともに金銭消費貸借契約に基づく借入金債務を負っている。当該売買契約においては、Bは、代金の支払期日に、Aからの商品の納品と引き換えに、代金をAに支払う旨の約定がなされている。この場合において、Aは、代金の支払期日が到来しても、Bに商品を納品していないときは、当該代金債権と当該借入金債務とを相殺することができない。

適切です。

 

自働債権(相殺に使う債権)に同時履行の抗弁権が付いている場合、その債権はまだ弁済期が到来していないものとみなされるため、相殺することはできません。本件では、AがBに商品を納入していない場合、Aの代金債権には同時履行の抗弁権が付着しているため、Aはこの代金債権を用いて相殺を主張することはできません。

選択肢3. Bは、Aに対して売買契約に基づく代金債権を有しており、Bの債権者であるCは、当該代金債権を差し押さえた。Aに当該差押命令が送達された後、Aが、DからDのBに対する貸付金債権を譲り受けた場合、Aは、当該貸付金債権とBに対して負う代金債務との相殺をもってCに対抗することができない。

適切です。

 

差押えを受けた債権に関して、第三債務者は「差押え後に取得した債権」を用いた相殺を、差押債権者に対して主張することはできません(民法511条2項)。本件では、代金債権が差押えを受けている状況で、第三債務者Aが差押え後にDから取得した貸付金債権を用いて相殺しようとしても、差押債権者Cに対抗することは認められません。

選択肢4. Aは、Bに対して金銭消費貸借契約に基づく貸付金債権を有するとともに売買契約に基づく代金債務を負っている。この場合において、AがBに当該貸付金債権と当該代金債務との相殺の意思表示をしたときは、当該意思表示は双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。

適切です。

 

相殺の意思表示は、双方の債務が相殺可能な状態になった時点に遡って効力を発揮します(民法506条2項)。 

まとめ

相殺は、その要件、相殺禁止債権、相殺の対抗力、相殺の効力発生時期など、様々な知識を必要とします。細かいところまで学習しましょう。

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