公立学校教員の過去問
平成30年度(H31年度採用)
共通問題 問1

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問題

公立学校教員採用選考試験(教職教養) 平成30年度(H31年度採用) 共通問題 問1 (訂正依頼・報告はこちら)

日本国憲法に関する記述として、憲法及び判例に照らして最も適切なものは、次の1~5のうちではどれか。
  • 子供の教育は、専ら子供の利益のために行われるべきものであり、何が子供の利益であり、また、そのために何が必要であるかについては、学校において現実に子供の教育の任に当たる教師が、公権力による支配、介入を受けないで自由に教育内容を決定することができる。
  • 普通教育の場においては、児童・生徒の側の授業の内容を批判する能力や、学校、教師を選択する余地などを鑑みて、教育内容が中立・公正で、地域、学校のいかんにかかわらず全国的に一定の水準であることは、高等学校には要請されない。
  • 国は積極的に教育に関する諸施設を設けて国民の利用に供する責務を負うとともに、国民各自は、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有する。
  • 教科用図書は、普通教育の場において使用される児童・生徒用の図書であるとともに、学術研究の結果の発表を目的とするものであり、そこに記述された研究結果を執筆者が正当と判断したものであれば、国が当該教科用図書の発行に制限をかけることはできない。
  • 学問の自由は、学問的研究の自由とその研究成果の発表の自由を言うものであって、大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることに鑑みて、この自由の保障は大学の教授や研究者を対象としたもので、全ての国民の学問の自由を保障する趣旨ではない。

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この過去問の解説 (3件)

01

正答は3です。

1:教師は公権力による支配、介入を受けないで自由に教育内容を決定することはできないため、1は誤りです。
教育内容の決定には、学習指導要領が大きく関わっていますし、一教師の裁量で自由に決められるものではありません。

2:小中高すべての学習指導要領前文には、「学習指導要領が果たす役割の一つは、公の性質を有する学校における教育水準を全国的に確保すること」と記載されています。
全国的に一定の教育水準を保つことは、高等学校にも求められているため、2は誤りです。

3:旭川学力テスト事件の判例において、そのように述べられているため、3は正解です。

4:学校教育法第34条には、「文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない」と記載されています。
国は、教科用図書の発行に制限をかけることができるため、4は誤りです。

5:憲法23条に規定されている「学問の自由」は、広くすべての国民に対してその自由を保障します。
大学の教授や研究者のみを対象としたものではないため、5は誤りです。

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02

正解です。


1.誤りです。

 判例によると、「一定の範囲における公権力に対する教授の自由が認められるべきであるが、教職員の児童・生徒に対する強い影響力及び支配力並びに教育の機会均等という観点から、普通教育の場合においては…教職員の教授の自由は相当限定されたものと解するのが相当である」としています。(東京高判平23年1月28日 最民集66巻2号587頁)

 したがって、教師の自由は一定の範囲に限定されるものであり、「自由に教育内容を決定することができる」という点が誤りです。


2.誤りです。

 判例によると、「高等学校においても、教師が依然として生徒に対し相当な影響力、支配力を有しており、生徒の側には、いまだ教師の教育内容を批判する十分な能力は備わっていない」、また、「教師を選択する余地も大きくない」ことから、全国的に一定の水準を確保すべき要請がある、としています。(東京高判平23年1月28日 最民集66巻2号587頁)

 つまり、高校生でも批判する十分な能力は備わっておらず、教師を選択する余地も大きくないため、全国的に一定の水準を確保すべき要請は高等学校にも行われるという点で、誤りです。


3.正しいです。

 判例によると、憲法26条の規定は「国が積極的に教育に関する諸施設を設けて国民の利用に供する責務を負うことを明らかに」しており、また、「国民各自が、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有する」という観念が存在している、としています。(最大判昭和51年5月21日 刑集30巻5号615頁)

 したがって、3が適切な選択肢です。


4.誤りです。

 判例によると「教科書は…普通教育の場において使用される児童、生徒用の図書であって、学術研究の結果の発表を目的とするものではない」としています。

 さらに「記述された研究結果が、執筆者が正当と信ずるものであったとしても…児童、生徒の教育として取り上げるにふさわしい内容と認められないときなど」は発行を制限しても憲法23条の規定に違反しない、としています。(最判平5年3月16日 民集第47巻5号3483頁)

 したがって、「教科用図書は学術研究の結果の発表を目的とする」は誤りであり、国が教科用図書としての発行を制限をかけることは憲法の規定に照らしても適切とされます。


5.誤りです。

 判例によると、憲法23条の学問の自由は、「学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含むもの」であり、「広くすべての国民に対してそれらの自由を保障するとともに…大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることにかんがみて、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨としたものである」としています。(最大判昭和38年5月22日 刑集第17巻4号370頁)

 したがって、憲法23条は大学の教授や研究者だけが対象ではなく、全ての国民に対して学問の自由を保障するものであるため、誤りとなります。

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03

正答は3です。

1 . 教育内容は文部科学省が定期的に改定する「学習指導要領」に準じているため、教師が公権力による支配、介入を受けないで自由に教育内容を決定することはできません。
一般的には各学級によって学習内容や指導方法に差が出ることを避けるため、学年の教師間で教育内容や具体的な指導方法を揃えることも多いことから、誤りです。

2 .教育基本法 の第三章 教育行政(教育行政)第十六条「2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。」と書かれています。
また、小・中学校および高等学校の各学習指導要領の前文に「学習指導要領が果たす役割の一つは、公の性質を有する学校における教育水準を全国的に確保すること」と明記されているため、誤りです。

3 . 「国は積極的に教育に関する諸施設を設けて国民の利用に供する責務を負う」については、教育基本法の第二章 教育の実施に関する基本(社会教育)「第十二条 2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。」と明記されています。
「国民各自は、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有する。」は
同法の第一章 教育の目的及び理念(教育の機会均等)「第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。」に該当するため、正答です。

4 . 義務教育の教科用図書の内容については、学校教育法第34条「文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない」と明記されています。
文部科学省が定める教科用図書を使用する必要があるため、誤りです。

5 . 日本国憲法第二三条【学問の自由】とは、大学の教授や研究者に限らずすべての国民を対象としているため、誤りです。

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