社会福祉士の過去問
第35回(令和4年度)
現代社会と福祉 問6

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問題

社会福祉士試験 第35回(令和4年度) 現代社会と福祉 問6 (訂正依頼・報告はこちら)

福祉のニーズとその充足に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
(注)「ウルフェンデン報告」とは、1978年にイギリスのウルフェンデン委員会が発表した報告書「The Future of Voluntary Organisations」のことである。
  • ジャッジ(Judge, K.)は、福祉ニーズを充足する資源が不足する場合に、市場メカニズムを活用して両者の調整を行うことを割当(ラショニング)と呼んだ。
  • 「ウルフェンデン報告(Wolfenden Report)」は、福祉ニーズを充足する部門を、インフォーマル、ボランタリー、法定(公定)の三つに分類した。
  • 三浦文夫は、日本における社会福祉の発展の中で、非貨幣的ニーズが貨幣的ニーズと並んで、あるいはそれに代わって、社会福祉の主要な課題になると述べた。
  • ブラッドショー(Bradshaw, J.)は、サービスの必要性を個人が自覚したニーズの類型として、「規範的ニード」を挙げた。
  • フレイザー(Fraser, N.)は、ニーズの中身が、当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況を、「必要解釈の政治」と呼んだ。

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この過去問の解説 (6件)

01

福祉ニーズに対する設問は頻出問題です。人物名やそれぞれの人物が提唱した内容について覚えておく必要があります。

選択肢1. ジャッジ(Judge, K.)は、福祉ニーズを充足する資源が不足する場合に、市場メカニズムを活用して両者の調整を行うことを割当(ラショニング)と呼んだ。

✕ ジャッジが提唱した割当(ラショニング)は、福祉ニーズが充足する資源が不足する場合に、市場のメカニズムを使わずに分配する方法の事を言います。市場メカニズムを活用せず、分配方法に条件をつける事で、福祉ニーズの必要性が高い人に少ない資源を分配する事が可能となります。

選択肢2. 「ウルフェンデン報告(Wolfenden Report)」は、福祉ニーズを充足する部門を、インフォーマル、ボランタリー、法定(公定)の三つに分類した。

✕ ウルフェンデン報告では、福祉ニーズを充足する部門を「インフォーマル」「ボランタリー」「法定(公定)」「民間非営利」の四つに分類しています。

選択肢3. 三浦文夫は、日本における社会福祉の発展の中で、非貨幣的ニーズが貨幣的ニーズと並んで、あるいはそれに代わって、社会福祉の主要な課題になると述べた。

〇 選択肢の通りです。貨幣的ニーズとは、金銭給付によって充足するニーズの事です。対して非貨幣的ニーズとは、金銭給付では充足できないニーズの事を言います。貧困に対しては、まずは貨幣的ニーズを充足してから非貨幣的ニーズの充足の必要性が高まるとされています。

選択肢4. ブラッドショー(Bradshaw, J.)は、サービスの必要性を個人が自覚したニーズの類型として、「規範的ニード」を挙げた。

✕ ブラッドショーはニーズの類型を「規範的ニード」「表明されたニード」「自覚ニード」「比較ニード」の四つに分けて提唱しました。本選択肢の内容は自覚ニードの説明となっています。

選択肢5. フレイザー(Fraser, N.)は、ニーズの中身が、当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況を、「必要解釈の政治」と呼んだ。

✕ 選択肢の内容は、フレイザーが述べた「必要充足の政治」の説明となっています。

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02

難しい問題です。

学習範囲外の内容に関しては、選択肢の内容に誤りを見つけていきましょう。

選択肢1. ジャッジ(Judge, K.)は、福祉ニーズを充足する資源が不足する場合に、市場メカニズムを活用して両者の調整を行うことを割当(ラショニング)と呼んだ。

解答:

ジャッジの割当(ラショニング)は、市場を通さずに、抽選や申込順などの方法を用いて、資源を供給する方法です。

資源が不足しているのに、市場を通して調整行うことに対して違和感を感じましょう。

選択肢2. 「ウルフェンデン報告(Wolfenden Report)」は、福祉ニーズを充足する部門を、インフォーマル、ボランタリー、法定(公定)の三つに分類した。

解答:

ウルフェンデン報告は、公定(国)、ボランタリー(民間非営利)、インボランタリー(民間営利)、インフォーマル(家族や友人)の4つに分類しました。

福祉ニーズを充足するためには、国、家族、民間非営利だけでは不足しているのでは?と疑問を持ちましょう。

選択肢3. 三浦文夫は、日本における社会福祉の発展の中で、非貨幣的ニーズが貨幣的ニーズと並んで、あるいはそれに代わって、社会福祉の主要な課題になると述べた。

解答:

三浦文夫は、お金によって充足するニーズを貨幣的ニーズ、お金では充足しないニーズを非貨幣的ニーズと呼び、非貨幣的ニーズの必要性を説きました

現代における福祉の課題では、お金だけでは解決されない課題が多々あります。介護難民や認知症高齢者の増加、少子高齢化など、福祉サービスの供給が間に合っていない実情をイメージしましょう。

選択肢4. ブラッドショー(Bradshaw, J.)は、サービスの必要性を個人が自覚したニーズの類型として、「規範的ニード」を挙げた。

解答:

個人が自覚したニーズは感得されたニードと呼びます。規範的ニードは社会的に望ましい状態である場合です。

自覚したという言葉と規範的という言葉が結び付かないことに違和感を感じましょう。

選択肢5. フレイザー(Fraser, N.)は、ニーズの中身が、当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況を、「必要解釈の政治」と呼んだ。

解答:

専門職によって客観的に決定されるニーズを必要充足の政治当事者の思いを含めて、ニーズを解釈すべきであるとするニーズを必要解釈の政治と言います。

言葉が難しくイメージがつきにくいですが、決定される状況を解釈と表現することに違和感を感じましょう。

まとめ

学習していない範囲が出題された場合、簡単にあきらめるのはもったいないです。

選択肢を読み、内容に誤り、もしくは違和感を見つけることが貴重な1点につながります。

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03

三浦文夫は、日本の社会福祉の発展において、非貨幣的ニードの充足(現物給付・対人サービス)が貨幣的ニード(金銭給付)と並んで主要課題になると主張しました。

選択肢1. ジャッジ(Judge, K.)は、福祉ニーズを充足する資源が不足する場合に、市場メカニズムを活用して両者の調整を行うことを割当(ラショニング)と呼んだ。

ラショニングとは、福祉ニーズを充足する資源が不足する際に、市場メカニズムを活用することなく、ニーズの調整を行う福祉政策を指します。

選択肢2. 「ウルフェンデン報告(Wolfenden Report)」は、福祉ニーズを充足する部門を、インフォーマル、ボランタリー、法定(公定)の三つに分類した。

ウルフェンデン報告は、福祉ニーズを充足する部門をインフォーマル、ボランタリー、法定、営利の4つの部門に分類しました。

選択肢3. 三浦文夫は、日本における社会福祉の発展の中で、非貨幣的ニーズが貨幣的ニーズと並んで、あるいはそれに代わって、社会福祉の主要な課題になると述べた。

三浦文夫は、貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズを提唱しました。介護や子育てなどが非貨幣的ニーズに該当します。

選択肢4. ブラッドショー(Bradshaw, J.)は、サービスの必要性を個人が自覚したニーズの類型として、「規範的ニード」を挙げた。

サービスの必要性を個人が自覚したニーズは、感得されたニードです。規範的ニードは、専門家などが「望ましい状態」と比較することでニードがある認識されるニードです。

選択肢5. フレイザー(Fraser, N.)は、ニーズの中身が、当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況を、「必要解釈の政治」と呼んだ。

必要解釈の政治とは、誰がニーズを解釈するのかをいいます。ニーズの中身が当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況は、必要充足の政治といいます。

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04

正答:③

福祉ニーズに関する問題は非常に出題率が高くなっています。人名・提唱した理論・理論の内容を3点セットで覚えておく必要があります。

選択肢1. ジャッジ(Judge, K.)は、福祉ニーズを充足する資源が不足する場合に、市場メカニズムを活用して両者の調整を行うことを割当(ラショニング)と呼んだ。

解答:✕

ジャッジが提唱した割当(ラショニング)とは、市場を通さずに(店舗に並べずに)抽選や先着順等の方法で資源を供給する方法です。

選択肢2. 「ウルフェンデン報告(Wolfenden Report)」は、福祉ニーズを充足する部門を、インフォーマル、ボランタリー、法定(公定)の三つに分類した。

解答:✕

ウルフェンデン報告とは、福祉ニーズを充足させる部門をインフォーマル、ボランタリー、インボランタリー、公定の4つに分類しました。

選択肢3. 三浦文夫は、日本における社会福祉の発展の中で、非貨幣的ニーズが貨幣的ニーズと並んで、あるいはそれに代わって、社会福祉の主要な課題になると述べた。

解答:◯

設問のとおりです。なお、貨幣的ニーズとはお金で解決できる課題で、非貨幣的ニーズとはお金で解決することが難しいニーズを指します。

選択肢4. ブラッドショー(Bradshaw, J.)は、サービスの必要性を個人が自覚したニーズの類型として、「規範的ニード」を挙げた。

解答:✕

個人が自覚したニーズは「感得されたニード」です。社会的に望ましい状態であることを「規範的ニード」と称しています。

選択肢5. フレイザー(Fraser, N.)は、ニーズの中身が、当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況を、「必要解釈の政治」と呼んだ。

解答:✕

「必要解釈の政治」とは、クライエントの思いを汲んで決定すべきニーズを指します。専門職によって客観的に決定されるニーズが「必要充足の政治」です。

まとめ

福祉ニーズの問題に関しては、単に用語と解説内容の組み合わせで間違い選択肢が作られている場合と、理論の内容の正誤自体が問われている場合があります。非常に難易度が高い問題なので、人名・提唱した理論・理論の内容を3点セットで覚えることが重要です。

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05

人物と提唱した理論の用語だけではなく、中身も知っておく必要がある問題です。過去問を何回も解き、よく出てくる理論や人物をおさえておきましょう。

選択肢1. ジャッジ(Judge, K.)は、福祉ニーズを充足する資源が不足する場合に、市場メカニズムを活用して両者の調整を行うことを割当(ラショニング)と呼んだ。

不適切です。「市場メカニズムを活用せずに」行います。

選択肢2. 「ウルフェンデン報告(Wolfenden Report)」は、福祉ニーズを充足する部門を、インフォーマル、ボランタリー、法定(公定)の三つに分類した。

不適切です。「ウルフェンデン報告」では、「インフォーマル」「ボランタリー」「法定(公定)」「民間営利」の4つに分類しています。

選択肢3. 三浦文夫は、日本における社会福祉の発展の中で、非貨幣的ニーズが貨幣的ニーズと並んで、あるいはそれに代わって、社会福祉の主要な課題になると述べた。

適切です。記述の通りです。

選択肢4. ブラッドショー(Bradshaw, J.)は、サービスの必要性を個人が自覚したニーズの類型として、「規範的ニード」を挙げた。

不適切です。記述内容は、「規範的ニード」ではなく「感得されたニード」についての説明です。

選択肢5. フレイザー(Fraser, N.)は、ニーズの中身が、当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況を、「必要解釈の政治」と呼んだ。

不適切です。記述内容は、「必要解釈の政治」ではなく「必要充足の政治」についての説明です。

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06

福祉のニーズとその充足について、各選択肢の内容を確認していきます。

選択肢1. ジャッジ(Judge, K.)は、福祉ニーズを充足する資源が不足する場合に、市場メカニズムを活用して両者の調整を行うことを割当(ラショニング)と呼んだ。

不正解です。

ラショニングとは、福祉ニーズを充足する資源が不足する場合に、市場メカニズムを用いずに両者の調整を行うことです。

選択肢2. 「ウルフェンデン報告(Wolfenden Report)」は、福祉ニーズを充足する部門を、インフォーマル、ボランタリー、法定(公定)の三つに分類した。

不正解です。

ウルフェンデン報告では、福祉ニーズを充足する部門を「インフォーマル」、「ボランタリー」、「法定(公定)」、「民間営利」の4つに分類しました。

選択肢3. 三浦文夫は、日本における社会福祉の発展の中で、非貨幣的ニーズが貨幣的ニーズと並んで、あるいはそれに代わって、社会福祉の主要な課題になると述べた。

正解です。

三浦文夫は、非貨幣的ニーズと貨幣的ニーズを提唱しました。

選択肢4. ブラッドショー(Bradshaw, J.)は、サービスの必要性を個人が自覚したニーズの類型として、「規範的ニード」を挙げた。

不正解です。

サービスの必要性を個人が自覚したニーズの類型はフェルト・ニード(感得されたニード)です。

選択肢5. フレイザー(Fraser, N.)は、ニーズの中身が、当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況を、「必要解釈の政治」と呼んだ。

不正解です。

フレイザーは、ニーズの中身が、当事者によってではなく、専門職によって客観的に決定されている状況を、「必要充足の政治」と呼びました。

参考になった数2