社会福祉士の過去問
第35回(令和4年度)
地域福祉の理論と方法 問3

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問題

社会福祉士試験 第35回(令和4年度) 地域福祉の理論と方法 問3 (訂正依頼・報告はこちら)

地域共生社会の実現に向けた、厚生労働省の取組に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
(注1)「福祉の提供ビジョン」とは、「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現 −新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン−」のことである。
(注2)「地域力強化検討会」とは、「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会」のことである。
(注3)「地域共生社会推進検討会」とは、「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」のことである。
  • 2015年(平成27年)の「福祉の提供ビジョン」において、重層的支援体制整備事業の整備の必要性が示された。
  • 2016年(平成28年)の「地域力強化検討会」の中間とりまとめにおいて、初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示された。
  • 2017年(平成29年)の「地域力強化検討会」の最終とりまとめにおいて、縦割りの支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とする等の包括的な支援体制の整備の必要性が示された。
  • 2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は特定の分野の専門性に特化して養成すべきであると提言された。
  • 2019年(令和元年)の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめにおいて、生活困窮者自立支援法の創設の必要性が示された。

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この過去問の解説 (6件)

01

現代日本では生活課題が複雑化、多様化しています。それらに対応する事が出来るよう、様々な制度が創設されています。

選択肢1. 2015年(平成27年)の「福祉の提供ビジョン」において、重層的支援体制整備事業の整備の必要性が示された。

✕ 重層的支援体制整備事業とは、対象者の属性などのみに捉われ、その制度に当てはまらない制度の狭間にいる人達が取り残されないよう包括的な支援を行うために創設された制度です。

2015年の福祉の提供ビジョンではその必要性は示されておらず、制度としては令和3年4月から社会福祉法第106条に規定される事となりました。

選択肢2. 2016年(平成28年)の「地域力強化検討会」の中間とりまとめにおいて、初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示された。

✕ 地域包括ケアシステムは、2012年の介護保険制度改正において、介護保険法に初めて明記された用語です。理念自体はそれ以前から存在しているため、2016年の地域力強化検討会の中間とりまとめで初めて明示された訳ではありません。

選択肢3. 2017年(平成29年)の「地域力強化検討会」の最終とりまとめにおいて、縦割りの支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とする等の包括的な支援体制の整備の必要性が示された。

〇 選択肢の通りです。

選択肢4. 2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は特定の分野の専門性に特化して養成すべきであると提言された。

✕ 多様化、複雑化する生活課題に対応するためには、分野の垣根を越えて、丸ごと繋がる事を重要視しています。分野の専門性に限らず様々な生活課題に対応できるように養成する事が必要と言われています。

選択肢5. 2019年(令和元年)の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめにおいて、生活困窮者自立支援法の創設の必要性が示された。

✕ 生活困窮者自立支援法は平成27年に創設されています。地域共生社会推進検討会の最終とりまとめで創設の必要性が示された訳ではありません。

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02

国は地域共生社会の実現のため、地域課題の解決力の強化、地域丸ごとのつながりの強化、地域を基盤とする包括的支援の強化、専門的人材の機能強化・最大活用を図ることとしています。

選択肢1. 2015年(平成27年)の「福祉の提供ビジョン」において、重層的支援体制整備事業の整備の必要性が示された。

「福祉の提供ビジョン」で示されているのは、「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」と「地域の実情に合った総合的な福祉サービスの提供」です。

選択肢2. 2016年(平成28年)の「地域力強化検討会」の中間とりまとめにおいて、初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示された。

地域域包括ケアシステムは、2013 (平成25年)年制定の「社会保障改革プログラム法」(持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律)においてに示されています。

選択肢3. 2017年(平成29年)の「地域力強化検討会」の最終とりまとめにおいて、縦割りの支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とする等の包括的な支援体制の整備の必要性が示された。

地域力強化検討会の最終とりまとめで包括的な支援体制の整備の必要性が示されています。

選択肢4. 2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は特定の分野の専門性に特化して養成すべきであると提言された。

「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」では、地域共生社会を担う人材が求められています。

選択肢5. 2019年(令和元年)の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめにおいて、生活困窮者自立支援法の創設の必要性が示された。

生活困窮者自立支援法は2013(平成 25)年に制定されています。

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03

各取組の名称と特徴を時代背景とともに把握しましょう。

選択肢1. 2015年(平成27年)の「福祉の提供ビジョン」において、重層的支援体制整備事業の整備の必要性が示された。

解答:

2015年の福祉の提供ビジョンでは、複合的な課題を抱える人たちに包括的な支援システムを構築するとともに、地域に必要とされる社会資源を創ること、また、高齢者、障碍者、児童などの福祉サービスを総合的に提供できる仕組みを推進することを示しました。

選択肢2. 2016年(平成28年)の「地域力強化検討会」の中間とりまとめにおいて、初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示された。

解答:

地域包括ケアシステムは、2011年に「地自体が地域包括ケアシステム推進の業務を担う」と明記されました

選択肢3. 2017年(平成29年)の「地域力強化検討会」の最終とりまとめにおいて、縦割りの支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とする等の包括的な支援体制の整備の必要性が示された。

解答:

2016年の地域力強化検討会の最終とりまとめでは、地域住民が「我が事」として、主体的に取り組む仕組みを作り、地域づくりの取り組み支援と公的な福祉サービスを含めた「丸ごと」の総合相談支援体制を整備するため、「我が事・丸ごと」の地域づくりを推進する包括的相談支援体制について検討しました。

選択肢4. 2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は特定の分野の専門性に特化して養成すべきであると提言された。

解答:

ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等については、多様化・複雑化する地域の課題に対応できる能力をさらに開発・活用してくことために、具体的な役割の明確化や実践力の強化の検討が必要であるとされました。

選択肢5. 2019年(令和元年)の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめにおいて、生活困窮者自立支援法の創設の必要性が示された。

解答:

地域共生社会推進検討会の最終とりまとめでは、包括的な支援体制の構築を推進するため、「断らない相談支援」、「参加支援」、「地域づくりに向けた支援」を一体的に行う市町村の新たな事業を創るべきとしました。

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04

地域共生社会の実現に向けた厚生労働省の取り組みについて、各選択肢を確認していきます。

選択肢1. 2015年(平成27年)の「福祉の提供ビジョン」において、重層的支援体制整備事業の整備の必要性が示された。

不正解です。

福祉の提供ビジョンでは、「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」と「地域の実情に合った総合的な福祉サービスの提供」が示されました。

選択肢2. 2016年(平成28年)の「地域力強化検討会」の中間とりまとめにおいて、初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示された。

不正解です。

地域包括ケアシステムは、2013年(平成25年)の「社会保障改革プログラム法」において

定義されました。

選択肢3. 2017年(平成29年)の「地域力強化検討会」の最終とりまとめにおいて、縦割りの支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とする等の包括的な支援体制の整備の必要性が示された。

正解です。

選択肢の説明文の通りです。

選択肢4. 2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は特定の分野の専門性に特化して養成すべきであると提言された。

不正解です。

2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は多職種と連携しながら包括的に課題を解決するべきであると提言されました。

選択肢5. 2019年(令和元年)の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめにおいて、生活困窮者自立支援法の創設の必要性が示された。

不正解です。

生活困窮者自立支援法は2013年に成立した法律です。

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05

厚生労働省の取組について、変遷を確認しておきましょう。地域福祉の分野では重層的支援体制整備事業のように、これからの動向もおさえておく必要があります。

選択肢1. 2015年(平成27年)の「福祉の提供ビジョン」において、重層的支援体制整備事業の整備の必要性が示された。

不適切です。「重層的支援体制整備事業」ではなく、「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」について示されました。

選択肢2. 2016年(平成28年)の「地域力強化検討会」の中間とりまとめにおいて、初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示された。

不適切です。「地域包括ケアシステム」という言葉は、2016年よりも前から言われており、住み慣れた地域で住民が長く暮らすための医療・介護の連携等の体制を構築していくことです。

選択肢3. 2017年(平成29年)の「地域力強化検討会」の最終とりまとめにおいて、縦割りの支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とする等の包括的な支援体制の整備の必要性が示された。

適切です。高齢者福祉・障がい者福祉といった縦割りではなく、分野を超えて「丸ごと」として考えていくことが必要です。

選択肢4. 2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は特定の分野の専門性に特化して養成すべきであると提言された。

不適切です。「特定の分野の専門性に特化」して養成するのではなく、新たに生じる課題や複雑化した課題に対応できるようにすることが求められています。

選択肢5. 2019年(令和元年)の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめにおいて、生活困窮者自立支援法の創設の必要性が示された。

不適切です。生活困窮者自立支援法は、2013年制定、2015年に施行されています。

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06

正答:③

複雑化・多様化する日本の社会課題において、地域共生社会実現に向けた取り組みの重要性が指摘されています。厚生労働省が実施してる取り組みや法制度を中心に、しっかり学習しておきましょう。

選択肢1. 2015年(平成27年)の「福祉の提供ビジョン」において、重層的支援体制整備事業の整備の必要性が示された。

解答:×

2015年の「福祉の提供ビジョン」によって示されたのは、「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」です。

選択肢2. 2016年(平成28年)の「地域力強化検討会」の中間とりまとめにおいて、初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示された。

正答:×

地域包括ケアシステムが示されたのは、2013年制定の「社会保障改革プログラム法」(持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律)です。介護保険制度においても重要なキーワードですので、内容も含めてしっかり覚えておきましょう。

選択肢3. 2017年(平成29年)の「地域力強化検討会」の最終とりまとめにおいて、縦割りの支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とする等の包括的な支援体制の整備の必要性が示された。

正答:〇

設問の通りです。

選択肢4. 2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は特定の分野の専門性に特化して養成すべきであると提言された。

正答:×

特定分野に特化するのではなく、新たに生じる課題や複雑化した課題に対応できるようにすることが求められています。社会福祉士個人でできることには限界があるので、周囲の支援者と連携するスキルも磨いておきましょう。

選択肢5. 2019年(令和元年)の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめにおいて、生活困窮者自立支援法の創設の必要性が示された。

正答:×

域共生社会推進検討会の最終とりまとめでは、重層的支援体制整備事業(「断らない相談支援」、「参加支援」、「地域づくりに向けた支援」)の実施が提唱されました。

まとめ

地域共生社会の実現に向けた厚生労働省の取り組みについては、社会背景の変化を時系列にそって覚えておくとよいでしょう。

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