社会福祉士 過去問
第37回(令和6年度)
問112 (ソーシャルワークの基盤と専門職(専門) 問4)

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問題

社会福祉士試験 第37回(令和6年度) 問112(ソーシャルワークの基盤と専門職(専門) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

「バークレイ報告」の内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
(注)「バークレイ報告」とは、1982年の「Social Workers:Their Role and Tasks」のことである。
  • 年齢やカテゴリー別の援助ではなく、家族全体を視野に入れた、総合的なアセスメントに基づく家族ソーシャルワークの実施を強調した。
  • 地方自治体の議会にソーシャルサービス委員会を設置することが必要であると指摘した。
  • ソーシャルワーカーの任務として、それぞれが責任を持つ地理的範囲やクライエントのためのネットワークを見いだすとともに、必要があれば作り出すことに関心を持たなければならないとされた。
  • 地域ケア計画を作成するにあたり、ケースマネジメントの技能を応用し、明確な財源システムを目指すことが期待された。
  • 福祉サービスと保健医療改革を一体的に法定化し、継ぎ目のないサービスの提供を目標とした。

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この過去問の解説 (2件)

01

バークレイ報告単体で覚えるよりも、下記の

英国における、ソーシャルワーク発展の経過を把握しましょう。

年号を暗記する必要はありませんが、

時代背景を理解することは重要です。

 

 

(1942年)

ヴェバリッジ報告

 ・第二次世界大戦後のイギリス社会再建の社会保障計画を提示し、既存制度の再編を図った。

 ・再建目標を五つの巨人(疾病、無知、不潔、無為、窮乏)への攻撃にたとえた。

 ・窮乏に対する所得保障には社会保険を重視し、

   その基本原則にナショナル・ミニマム保障均一給付・均一拠出を提唱した。

 

 

(1959年)

ヤングハズバンド報告

 ・専門的に細分化されたソーシャルワークの現状に対し

   ジェネラリストの育成の重要性を説いた。

 ・支援を必要とする1家族に対し1人のソーシャルワーカーが

   担当をする『ワンドアシステム』とした。

 

 

(1968年)

シーボーム報告

 ・高齢、障害、児童など分かれていた支援を統合した。

 ・シーボーム報告を受けて1970年に『地方自治体社会サービス法』が

   制定され、ソーシャルワーカーの教育の強化が図られた。

 

 

(1969年)

エイブス報告

 ・ボランティアの役割の重要性を強調した。

   ⇒この公私協働という考え方は、

    日本の特定非営利活動促進法(NPO法)にも影響を与えた。

 

 

(1978年)

ウェルフェンデン報告

 ・ボランティアの役割の重要性を強調した。

 ・福祉サービスを以下の多元主義と考えた。

    ①インフォーマル ②フォーマル(公的)

    ③民間営利 ④民間非営利

 

 

(1982年) 

バークレイ報告

 ・1973年の石油ショック、1976年のポンドショックにより

   困窮に陥る人が増えて福祉の対象範囲の拡大が必要になった。

 ・従来のソーシャルワークは、ケースワークやグループワークが主流だったが

   これらを統合して『コミュニティワーク』の重要性を説いた。

   ⇒ソーシャルワークがコミュニティを基盤とした地域福祉へと舵を切った。

 

 

(1988年) 

ワグナー報告

 ・入所施設の役割として5つのCの重要性を主張し、質の向上を求めた。

   Caring(良質なケア)

   Choice(人生の選択をする権利)

   Continuity(継続性)

   Change(変化、柔軟性)

   Common values(社会共有の福祉理念)

グリフィス報告

 ・コミュニティケアについて、地方自治体が責任を持つことを提唱した。

 ・ケアマネジメントの導入を推奨し、支援計画の重要性を説いた。

 

 

(1990年) 

国民保健サービス及びコミュニティケア法

 ・グリフィス報告の影響で、地域における包括的ケア体制の構築を義務化し、

   ケアマネジメント、アセスメントの実施などを定めた。

 

 

(2014年)

介護法(ケア法) 

 ・グリフィス報告を受けて成立した。

 ・地方自治体はヤングケアラーの発見

   及び、ニーズに関するアセスメントを積極的におこなうことを求めた。

 ・医療・福祉・介護の連携で総合的なケアの提供をすることで、

   継ぎ目のないサービスを実現することを目指した。

選択肢1. 年齢やカテゴリー別の援助ではなく、家族全体を視野に入れた、総合的なアセスメントに基づく家族ソーシャルワークの実施を強調した。

×:誤りです。

 

これは、ヤングハズバンド報告の内容です。

詳細は、解説の冒頭を参照ください。

家族という言葉がポイントです。

選択肢2. 地方自治体の議会にソーシャルサービス委員会を設置することが必要であると指摘した。

×:誤りです。

 

これは、グリフィス報告の内容です。

詳細は、解説の冒頭を参照ください。

地方自治体という言葉がポイントです。

 

選択肢3. ソーシャルワーカーの任務として、それぞれが責任を持つ地理的範囲やクライエントのためのネットワークを見いだすとともに、必要があれば作り出すことに関心を持たなければならないとされた。

○:正しいです。

 

地理的範囲やネットワークという言葉から、

コミュニティワークに関するものだと分かり、

バークレイ報告と判断できます。

選択肢4. 地域ケア計画を作成するにあたり、ケースマネジメントの技能を応用し、明確な財源システムを目指すことが期待された。

×:誤りです。

 

これは、国民保健サービス及びコミュニティケア法の説明です。

地域ケア計画、ケースマネジメントがポイントです。

 

選択肢5. 福祉サービスと保健医療改革を一体的に法定化し、継ぎ目のないサービスの提供を目標とした。

×:誤りです。

 

これは、介護法(ケア法)の内容です。

詳細は、解説の冒頭を参照ください。

一体的と継ぎ目のないという言葉がポイントです。

 

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02

この問題にあるバークレイ報告とは1982年にコミュニティソーシャルワークの重要性が提唱されたものです。

選択肢1. 年齢やカテゴリー別の援助ではなく、家族全体を視野に入れた、総合的なアセスメントに基づく家族ソーシャルワークの実施を強調した。

不適切。
ファミリーソーシャルワークとは、さまざまな家族の生活上の問題・課題の問題解決をはかり、その回復をめざすソーシャルワーク実践の一分野となります。社会的養護において、子どもが家庭に戻るための家庭復帰支援のことを指すことが多くなっています。
 

選択肢2. 地方自治体の議会にソーシャルサービス委員会を設置することが必要であると指摘した。

不適切。
ソーシャルサービスとは、社会福祉事業のことになります。助けを必要としている人々を支援するコミュニティ資源のひとつとなります。

選択肢3. ソーシャルワーカーの任務として、それぞれが責任を持つ地理的範囲やクライエントのためのネットワークを見いだすとともに、必要があれば作り出すことに関心を持たなければならないとされた。

設問の通り。

バークレイ報告とは、コミュニティを基盤としたカウンセリングと社会的ケア計画を統合した実践であるコミュニティソーシャルワークを提唱しました。ソーシャルワーカーの任務として、それぞれが責任を持つ地理的範囲やクライエントのためのネットワークを見出だすとともに、必要があれば作り出すことに関心を持たなければならないとされています。

選択肢4. 地域ケア計画を作成するにあたり、ケースマネジメントの技能を応用し、明確な財源システムを目指すことが期待された。

不適切。
ケースマネジメントとは、生活困難な状態になり援助を必要とする利用者を個別のケースと捉え、必要とされる全ての保健・医療・福祉サービスなどを受けられるように調整をすることとなります。明確な財源システムを目指すものではありません。

選択肢5. 福祉サービスと保健医療改革を一体的に法定化し、継ぎ目のないサービスの提供を目標とした。

不適切。
福祉サービスと保健医療改革は、サービスを利用する側に立ち、サービスが切れ目なく、かつ、効率的に提供されているかどうかという観点から再点検していく必要があります。
 

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