社会保険労務士の過去問
第50回(平成30年度)
労働基準法及び労働安全衛生法 問1
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問題
社労士試験 第50回(平成30年度) 択一式 労働基準法及び労働安全衛生法 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
労働時間等に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア 労働基準法第32条の3に定めるいわゆるフレックスタイム制において、実際に労働した時間が清算期間における総労働時間として定められた時間に比べて過剰であった場合、総労働時間として定められた時間分はその期間の賃金支払日に支払い、総労働時間を超えて労働した時間分は次の清算期間中の総労働時間の一部に充当してもよい。
イ 貨物自動車に運転手が二人乗り込んで交替で運転に当たる場合において、運転しない者については、助手席において仮眠している間は労働時間としないことが認められている。
ウ 常時10人未満の労働者を使用する小売業では、1週間の労働時間を44時間とする労働時間の特例が認められているが、事業場規模を決める場合の労働者数を算定するに当たっては、例えば週に2日勤務する労働者であっても、継続的に当該事業場で労働している者はその数に入るとされている。
エ 使用者は、労働基準法第56条第1項に定める最低年齢を満たした者であっても、満18歳に満たない者には、労働基準法第36条の協定によって時間外労働を行わせることはできないが、同法第33条の定めに従い、災害等による臨時の必要がある場合に時間外労働を行わせることは禁止されていない。
オ 労働基準法第32条第1項は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」と定めているが、ここにいう1週間は、例えば、日曜から土曜までと限定されたものではなく、何曜から始まる1週間とするかについては、就業規則等で別に定めることが認められている。
ア 労働基準法第32条の3に定めるいわゆるフレックスタイム制において、実際に労働した時間が清算期間における総労働時間として定められた時間に比べて過剰であった場合、総労働時間として定められた時間分はその期間の賃金支払日に支払い、総労働時間を超えて労働した時間分は次の清算期間中の総労働時間の一部に充当してもよい。
イ 貨物自動車に運転手が二人乗り込んで交替で運転に当たる場合において、運転しない者については、助手席において仮眠している間は労働時間としないことが認められている。
ウ 常時10人未満の労働者を使用する小売業では、1週間の労働時間を44時間とする労働時間の特例が認められているが、事業場規模を決める場合の労働者数を算定するに当たっては、例えば週に2日勤務する労働者であっても、継続的に当該事業場で労働している者はその数に入るとされている。
エ 使用者は、労働基準法第56条第1項に定める最低年齢を満たした者であっても、満18歳に満たない者には、労働基準法第36条の協定によって時間外労働を行わせることはできないが、同法第33条の定めに従い、災害等による臨時の必要がある場合に時間外労働を行わせることは禁止されていない。
オ 労働基準法第32条第1項は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」と定めているが、ここにいう1週間は、例えば、日曜から土曜までと限定されたものではなく、何曜から始まる1週間とするかについては、就業規則等で別に定めることが認められている。
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この過去問の解説 (4件)
01
ア:誤
賃金全額払いの原則に違反してしまうため、「充当してもよい」というのは誤りです。
イ:誤
万が一事故や故障が起きた際には、運転しない者も対応に当たる必要があります。
従って、「仮眠している間」も労働時間とみなされます。
ウ:正
「週に2日勤務」のようなパートタイマーやアルバイトでも、「継続的に」常時雇用している労働者は全員労働者数にカウントされます。
エ:正
原則として満18歳未満の者には36協定による時間外・休日労働などは適用されません。
ただし、災害等又は公務のために臨時の必要がある場合は、時間外・休日労働をさせることができます。
オ:正
就業規則その他に別段の定めがある場合は、何曜日から始まる1週間であっても問題ありません。
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02
労働基準法24条「賃金支払い5原則」を参照下さい。設問のケースは「全額払いの原則」に反しています。当該清算期間における総労働時間として定められた時間を超えて労働しているのですから、時間外労働としてその割増賃金を「その期間の賃金支払日」に支払わなければなりません。当該「過剰であった」労働時間を次の清算期間(翌月)の労働時間とすることはできません。時間外労働の割増賃金も含めた「全額」を「その期間の賃金支払日」に支払わなければなりません。
解き方のコツとして、自分の身に置き換えて考えてみて下さい。「次の清算期間中の総労働時間の一部に充当してもよい」これが認められると、何時間残業しても残業代が支払われないことになります。毎月毎月、超過した労働時間が翌月に繰り越されていくことになるのですから。極度の緊張を強いられる本試験ですが「テキストにこんなこと書いてあったっけ?」と焦るのは時間の無駄です。深呼吸して頭の切り替えを!
イ:誤
仮眠時間(不活動休眠時間)において、完全に労働の義務からの解放が保障されていると認められる場合に限り、労働時間としない(休憩時間とする)ことが認められています。設問の場合、仮眠している労働者が完全に労働の義務から解放されているか、明記されていません(嫌な出題です)。仮眠中といえど、事故や荷崩れなどの緊急対応もありうるでしょうし、それらが完全に免除されていることが明記されていない本肢を正と判断することはできません。
なお、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいいます(三菱重工長崎造船所判決:最一小判平成12年3月9日)。休憩時間とは、労働者が労働時間の途中に休憩のために労働の義務から解放される時間のことをいいます(労働基準法34条)。
ウ:○
労働基準法第40条 労働基準法別表第1第8号(商業)、10号(映画・演劇業)、13号(保健衛生業)、14号(接客娯楽業)。
週所定労働時間44時間の特例は、設問の事業場(常時10人未満の労働者を使用する小売業)に認められています。
「常時10人未満」の労働者には、短時間労働者であっても常態として雇用されている労働者が含まれます。事業場の「規模」を判断する基準ですので、所定労働日数・時間が少なくても、常時雇用されている労働者は除外されません。逆に、常時8人の労働者を雇用する特例措置対象事業場であって、繁忙期など一時的にアルバイトを雇い入れて10人以上の労働者を雇用する場合は、常時10人未満と認められます。
エ:○
満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでにある児童(中学生以下)を使用することは原則として禁止されています(労働基準法第56条第1項)。設問の「労働基準法第56条第1項に定める最低年齢を満たした者」とは、この「満15歳に達した日以後の最初の3月31日」を経過した人です。最低年齢を満たしているので労働者として使用することはできますが、18歳未満(年少者)ですので36協定による時間外・休日労働は禁止されています(同法60条、61条)。但し、災害等による臨時の必要がある場合(同法29条)、現業でない官公署において公務のために臨時の必要がある場合(同法33条3項)における時間外労働、休日労働は認められます。設問のケースはこれに当たります。これらは36協定によらない時間外労働ですので、同法60条・61条の制限がかかりません。
オ:○
設問の通り。就業規則で特に定めがない場合、一週間は暦週「日曜から土曜まで」、一日は暦日「午前0時から午後12時まで」とされています。
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03
設問の通りに充当すると、清算期間内における労働の対価である賃金が支払われないことになるため、賃金全額払の原則に反することから誤りとなります。
イ:誤
設問の場合は、事故等の発生により交代運転、修理等の発生が考えられることから、手待ち時間であり労働時間と解されます。よって誤りとなります。
ウ:正
一週の労働時間を44時間とする特例は、常時10人未満の労働者を使用する商業、映画演劇業、保健衛生業、接客娯楽業につき認められる特例ですが、労働者数の算定には設問のように継続雇用されるパートタイマーやアルバイトの数も含まれます。よって正となります。
エ:正
満18歳に満たない者については36協定による時間外、休日労働は適用されませんが、災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合であり、かつ使用者が行政官庁の許可を受けることで法定労働時間を延長し、又は法定休日に労働させることができます。なお、事態急迫のために許可を受ける暇がない場合は、事後に遅滞なく届け出る必要があります。
オ:正
設問の通り、就業規則に定めがある場合は一週間の起算日はその定めた日が一週間の起算日となります。なお、就業規則に別段の定めがなければ日曜日から土曜日までの暦週と解されます。
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04
設問文ア.について
【正誤】誤った記述です。
【根拠条文等】労働基準法第32条の3第1項,昭和63年1月1日基発1号
【ポイント・考え方】
設問文のように、実際に労働した時間が定められた時間に比べて「過剰」であった場合は、労働時間の対価の一部が適時に支払われないことになり、労働基準法に抵触すると理解しておくとよいでしょう。
【学習・実務でのワンポイント】
逆に定められた時間に比べて少ない労働時間であった場合には、次の清算期間における労働時間と清算が可能であり、特に問題にはなりません。
設問文イ.について
【正誤】誤った記述です。
【根拠条文等】労働基準法第32条,昭和33年10月11日基収6286号
【ポイント・考え方】
労働時間にならない(=休憩時間など)ためには、労働者がその時間を自由に使えることが要件になるので、そのような自由がない待機時間については、労働時間になると理解しておきましょう。
【学習・実務でのワンポイント】
なお、休憩時間を自由に使用できる条件が整っている上で、職場の安全・規律の観点から、最低限の報告を監督者に行うことを求められる等の場合については、労働時間としないことが認められる場合がある点も、あわせて理解しておきましょう。
(つまり、休憩時間であっても、事情により完全に労働者の自由な行動を認めるわけではない場合もありえます)
設問文ウ.について
【正誤】正しい記述です。
【根拠条文等】労働基準法第40条1項,労働基準法施行規則第25条の2第1項,昭和63年3月14日基発150号
【ポイント・考え方】
設問文のとおり理解しておきましょう。
労働者の側から見ると、1週間の労働時間を44時間とする特例は、簡単に言いかえると、小規模事業でやむを得ない場合に限定的に許容されるものであり、事業場の規模の判断にあたっては、継続的に労働している人は、1週間の勤務が2日であっても労働者の数に「加える」こととなっている、と理解しておくとよいでしょう。
【学習・実務でのワンポイント】
設問文のような週に2日勤務するようないわゆるパートタイム労働者については、各方面で、正社員と同等の労働条件や健康保険・厚生年金保険等における被保険者とする方向に見直しが継続的にかかっている点を、意識しておくとよいでしょう。
設問文エ.について
【正誤】正しい記述です。
【根拠条文等】労働基準法第60条1項,第33条
【ポイント・考え方】
「災害等による」臨時の必要がある場合には、「人命確保等を優先させるために」、18歳に満たない者にも時間外労働を行わせることが可能だと理解しておくとよいでしょう。
(なおその場合にも、年齢を考慮した法令の本来の精神(いわゆる若年者の保護)に基づき、過剰な時間外労働をさせてはならない点はいうまでもありません)
【学習・実務でのワンポイント】
いわゆる若年者にかかる保護規定については、一度学習しておくとよいでしょう。
設問文オ.について
【正誤】正しい記述です。
【根拠条文等】労働基準法第32条1項,昭和63年1月1日基発1号
【ポイント・考え方】
世の中の業界・業態等々によっては、日曜から土曜までを1週間を考えて規定をあてはめることが実態に合わない場合も少なからずあるでしょう。
そのような場合に対応するため、何曜から始まる1週間とするかについては、就業規則等の規程に明確に定めればよいことになっている、と理解しておくとよいでしょう。
【学習・実務でのワンポイント】
就業規則におけるいわゆる絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項を、学習・理解しておくようにしましょう。
【正しい選択肢】二つ が正しいです。(ア・イの2つが誤り)
【全体総括】
本設問群における各条件は、いずれも身近に起こりうる争点/観点なので、関連知識を含めて理解を深めておくとよいでしょう。
参考になった数9
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