社会保険労務士の過去問
第50回(平成30年度)
労働基準法及び労働安全衛生法 問2

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問題

社労士試験 第50回(平成30年度) 択一式 労働基準法及び労働安全衛生法 問2 (訂正依頼・報告はこちら)

労働基準法の適用に関する次のアからオの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

ア  常時10人以上の労働者を使用する使用者が労働基準法第32条の3に定めるいわゆるフレックスタイム制により労働者を労働させる場合は、就業規則により、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとしておかなければならない。
イ  いわゆる一年単位の変形労働時間制においては、隔日勤務のタクシー運転者等暫定措置の対象とされているものを除き、1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は54時間とされている。
ウ  いわゆる一年単位の変形労働時間制においては、その労働日について、例えば7月から9月を対象期間の最初の期間とした場合において、この間の総休日数を40日と定めた上で、30日の休日はあらかじめ特定するが、残る10日については、「7月から9月までの間に労働者の指定する10日間について休日を与える。」として特定しないことは認められていない。
エ  労働基準法では、使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならないと規定しているが、解雇予告期間中に業務上負傷し又は疾病にかかりその療養のために休業した場合には、この解雇制限はかからないものと解されている。
オ  労働基準法第20条に定める解雇予告手当は、解雇の意思表示に際して支払わなければ解雇の効力を生じないものと解されており、一般には解雇予告手当については時効の問題は生じないとされている。
  • アとウ
  • アとエ
  • イとエ
  • イとオ
  • ウとオ

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この過去問の解説 (4件)

01

正解:3(イとエ)

ア:正
「始業及び終業の時刻」をその労働者の決定にゆだねる旨は、就業規則その他これに準ずるものに規定しなければなりません。

イ:誤
1年単位の変形労働時間制の場合、1週間の労働時間の限度は「54時間」ではなく「52時間」とされています。

ウ:正
対象期間を1か月以上の期間ごとに区分する場合、最初の期間(設問では7月から9月)における労働日及びその労働日ごとの労働時間を労使協定に定める必要があります。
設問のように、一部の休日を特定しないことは認められていません。

エ:誤
解雇予告期間期間中に業務上の傷病のため休業した場合は、解雇の効力が中止されるため解雇制限期間中の解雇はできなくなります。
従って、「解雇制限はかからない」は誤りです。

オ:正
解雇予告手当は、解雇の通告と同時に通貨で直接支払わなければなりません。後から支払うことを想定していない手当なので、設問の通り時効の問題は生じません。

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02

ア:正
 設問の通り、フレックスタイムは就業規則に定める必要があります。労働時間に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項です。そこには「その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねること」を規定しなければなりません。いずれも法の要件です。

イ:誤
 一年単位の変形労働時間制、1日の労働時間の上限は10時間、1週間の労働時間の上限は52時間です。細かい数字ですが正確に覚える必要があります。

ウ:正
 設問の通り、対象期間の労働日及び労働日ごとの労働時間を特定することは一年単位の変形労働時間の成立要件の一つです。但し、対象期間を1ヶ月以上の期間に区分することとした場合には、①最初の期間における労働日、②最初の期間における労働日ごとの労働時間、③最初の期間以外の期間における労働日数、④最初の期間以外の期間における総労働時間、を定めれば良いとされています(③で労働日/休日を特定する必要がない)。③と④は、その期間の始まる少なくとも30日前までに、当該事業所の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合(ない場合は過半数代表者)の同意を得て、書面により定めなければならない、とされています。

↑  ↑
変形労働時間制、フレックスタイム制度については、横断的学習が必須です。労働時間の上限(1日、1ヶ月)、就業規則だけで足りるのか、労使協定が必要なのか(そしてその協定を監督署に届け出る必要があるか)などを、ノートに書いて整理することをお勧めします!


エ:誤
 設問の末尾「解雇制限はかからない」は「解雇できる」という意味です。近々解雇されることが予告されている労働者が労災に遭い休業せねばならない状況なのに、解雇制限が解除されて解雇できる、という疑わしい肢です。ありえませんよね?
 労働基準法19条で「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない」と規定されています。また、設問の「解雇予告期間」は、同法20条に規定されています(30日以上前の予告、あるいは解雇予告手当の支払)。これら解雇制限と解雇予告が競合する場合(解雇予告期間中に解雇制限事由に該当した場合)、解雇制限期間中は解雇できません。

オ:正
 頻出問題! 設問の通りです。
 先に解雇の意思表示を行い、後日に解雇予告手当を支払っても、先の解雇予告は成立しません。解雇の意思表示と同時に解雇予告手当を支払う必要があることから、時効の問題が生じる余地はありません。

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03

正解:3(イとエ)

ア:正
使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねる必要があります。

イ:誤
一年単位の変形労働時間制における一週間の労働時間の限度は52時間です。なお、一日は10時間を限度とします。

ウ:正
対象期間を1か月以上の期間ごとに区分する場合は、最初の期間(対象期間の初日の属する期間)における労働日、最初の期間における労働日ごとの労働時間を定める必要があります。最初の期間以外の各期間における労働日及び労働日ごとの労働時間については、各期間の初日の少なくとも30日前に過半数労働組合(なければ過半数労働者の代表者)の同意を得て、書面により定める必要があります。

エ:誤
解雇予告期間中に設問のように解雇制限事由が生じた場合には、解雇制限の規定が適用されるため解雇制限中の解雇はできません。

オ:正
解雇予告手当は解雇と同時に支払うのが前提となるため、時効という概念はありません。なお賃金、災害補償その他の請求権は2年時効、退職手当については5年を時効としています。

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04

設問文ア.について

【正誤】正しい記述とします。(設問文イ.とエ.が明らかに誤りであり、本設問群においては、誤りが2つしかないこととなっているため)

【根拠条文等】労働基準法第32条の3第1項,平成11年3月31日基発168号

【ポイント・考え方】

 いわゆるフレックスタイム制(始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとする制度)の導入にあたっては、1)就業規則その他これに準ずるものによりその旨を定めること 2)労使協定で制度の基本的枠組みを定めること の2点を満たした場合に導入することができるものです。

 この設問文では、1)についてのみ述べているため、この記述での出題には筆者は若干の疑問を感じます。

【学習・実務でのワンポイント】

 フレックスタイム制は、厚生労働省のパンフレット等でも、「労働者にとっては、日々の都合に合わせて、時間という限られた資源をプライベートと仕事に自由に配分することができるため、プライベートと仕事とのバランスがとりやすくなります。」とうたっていますが、一方で時間外労働に関する取扱いが通常と異なるため、清算期間や労使協定の届出義務等、適用にあたっては留意すべき点が多いこともあわせて理解しておくとよいでしょう。

設問文イ.について

【正誤】誤った記述です。

【根拠条文等】労働基準法施行規則第12条の4第4項

【ポイント・考え方】

 設問文のうち、「54時間」は「52時間」が正しいです。

 知識問題として、この数値を覚えておくのがよいでしょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 本設問文に関連して、1週間あたりの労働時間の上限を52時間とする対象期間が3か月を超える場合には、さらに適用するための指定(制約)条件が加わりますので、あわせて確認しておくとよいでしょう。

設問文ウ.について

【正誤】正しい記述です。

【根拠条文等】労働基準法第32条の4第1項,平成6年5月31日基発330号

【ポイント・考え方】

 一年単位の変形労働時間制が採用される要件の1つに、「対象期間を定めた場合に、その対象期間が始まるまでに労働日を定めておかなければならない」があり、設問文はこれに抵触している(休日を特定しない=労働日が特定されない)ため、認められません。

【学習・実務でのワンポイント】

 設問文の他に、一年単位の変形労働時間制においては、労働日を定めていた場合であっても、後日休日の振替を行えるか否かについて、基本的には変更できない旨の行政解釈があり、知っておくとよいでしょう。

設問文エ.について

【正誤】誤った記述です。

【根拠条文等】労働基準法第19条,昭和26年6月25日基収2609号

【ポイント・考え方】

 業務上負傷し又は疾病にかかりその療養のために休業した場合は、その時点で当該労働者をその要因において最優先に保護するため、その他の規定や適用条件は、いったん留保される(停止になる)と理解しておくとよいでしょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 業務上の負傷・疾病については、労働者保護の観点から様々な配慮がなされているので、一度整理しておくとよいでしょう。

設問文オ.について

【正誤】正しい記述です。

【根拠条文等】労働基準法第20条,昭和27年5月17日基収1906号

【ポイント・考え方】

 解雇予告は、解雇予告手当を支払うことでその効力が生じる、という点を理解しておきましょう。

 このため、設問文のとおり、解雇予告手当については、時効の問題は発生しえません。

【学習・実務でのワンポイント】

 解雇予告については、さまざまな形でたびたび出題されているので、条件を正しく理解しておきましょう。

選択肢3. イとエ

【正しい選択肢】以上より、 イとエ が正しいです。

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