社会保険労務士の過去問
第53回(令和3年度)
健康保険法 問9

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問題

社労士試験 第53回(令和3年度) 択一式 健康保険法 問9 (訂正依頼・報告はこちら)

健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 家族出産育児一時金は、被保険者の被扶養者である配偶者が出産した場合にのみ支給され、被保険者の被扶養者である子が出産した場合には支給されない。
  • 1年以上の継続した被保険者期間(任意継続被保険者であった期間、特例退職被保険者であった期間及び共済組合の組合員であった期間を除く。) を有する者であって、出産予定日から起算して40日前の日に退職した者が、退職日において通常勤務していた場合、退職日の翌日から被保険者として受けることができるはずであった期間、資格喪失後の出産手当金を受けることができる。
  • 傷病手当金の額は、これまでの被保険者期間にかかわらず、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。)を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額となる。
  • 傷病手当金の支給要件に係る療養は、一般の被保険者の場合、保険医から療養の給付を受けることを要件としており、自費診療による療養は該当しない。
  • 被保険者又はその被扶養者において、業務災害(労災保険法第7条第1項第1号に規定する、労働者の業務上の負傷、疾病等をいう。)と疑われる事例で健康保険の被保険者証を使用した場合、保険者は、被保険者又はその被扶養者に対して、まずは労災保険法に基づく保険給付の請求を促し、健康保険法に基づく保険給付を留保することができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

解答:「被保険者又はその被扶養者において・・・」が正解です。

選択肢1. 家族出産育児一時金は、被保険者の被扶養者である配偶者が出産した場合にのみ支給され、被保険者の被扶養者である子が出産した場合には支給されない。

×

被保険者の被扶養者である子が出産した場合にも「支給されます」。

選択肢2. 1年以上の継続した被保険者期間(任意継続被保険者であった期間、特例退職被保険者であった期間及び共済組合の組合員であった期間を除く。) を有する者であって、出産予定日から起算して40日前の日に退職した者が、退職日において通常勤務していた場合、退職日の翌日から被保険者として受けることができるはずであった期間、資格喪失後の出産手当金を受けることができる。

×

出産手当金は、次の2点を満たしている場合に退職後も引き続き、出産手当金の支給を受けることができます。

(資格喪失後の継続給付)

被保険者の資格を喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。

資格喪失時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。

なお、退職日に通常勤務していた場合は、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金は受けることができません。

選択肢3. 傷病手当金の額は、これまでの被保険者期間にかかわらず、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。)を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額となる。

× 

「これまでの被保険者期間にかかわらず」ではなく「被保険者期間が12月に満たない場合」です。

また、設問の金額と「資格取得時から傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額」を比較し、低額な方が支給されます。

選択肢4. 傷病手当金の支給要件に係る療養は、一般の被保険者の場合、保険医から療養の給付を受けることを要件としており、自費診療による療養は該当しない。

×

傷病手当金は、被保険者が業務外の事由による療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、支給されますので「自費診療による療養」でも支給される場合があります。

選択肢5. 被保険者又はその被扶養者において、業務災害(労災保険法第7条第1項第1号に規定する、労働者の業務上の負傷、疾病等をいう。)と疑われる事例で健康保険の被保険者証を使用した場合、保険者は、被保険者又はその被扶養者に対して、まずは労災保険法に基づく保険給付の請求を促し、健康保険法に基づく保険給付を留保することができる。

業務災害が疑われる場合は、まずは労災保険法に基づく保険給付の請求を促し、健康保険法に基づく保険給付を留保することになります。

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02

解説は以下のとおりです。

選択肢1. 家族出産育児一時金は、被保険者の被扶養者である配偶者が出産した場合にのみ支給され、被保険者の被扶養者である子が出産した場合には支給されない。

被扶養者が対象で、子供なども含み、配偶者には限定されません。

(家族出産育児一時金)

第百十四条 被保険者の被扶養者が出産したときは、家族出産育児一時金として、被保険者に対し、第百一条の政令で定める金額を支給する。

家族出産育児一時金は、被保険者の被扶養者である配偶者が出産した場合にのみ支給され、被保険者の被扶養者である子が出産した場合には支給されない。

選択肢2. 1年以上の継続した被保険者期間(任意継続被保険者であった期間、特例退職被保険者であった期間及び共済組合の組合員であった期間を除く。) を有する者であって、出産予定日から起算して40日前の日に退職した者が、退職日において通常勤務していた場合、退職日の翌日から被保険者として受けることができるはずであった期間、資格喪失後の出産手当金を受けることができる。

出産手当金は労務に服さなかった期間について日々支給されます。労務に服さなかったというのは労務可能であっても現実に労務に就かなければ支給されます。通常の労務に服している期間は報酬の多寡を問わずに出産一時金は支給されません。本肢の者は退職日に通常勤務しており、資格喪失時に出産手当金を受けておらず、出産手当金の継続給付は支給されません。

(出産手当金)

第百二条 被保険者が出産したときは、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前四十二日(多胎妊娠の場合においては、九十八日)から出産の日後五十六日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金を支給する。

1年以上の継続した被保険者期間(任意継続被保険者であった期間、特例退職被保険者であった期間及び共済組合の組合員であった期間を除く。) を有する者であって、出産予定日から起算して40日前の日に退職した者が、退職日において通常勤務していた場合、退職日の翌日から被保険者として受けることができるはずであった期間、資格喪失後の出産手当金を受けることができる。

選択肢3. 傷病手当金の額は、これまでの被保険者期間にかかわらず、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。)を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額となる。

傷病手当金の支給額に関する問です。本肢は直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が12月に満たない場合の2つ目の内容です。

(傷病手当金)

第九十九条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

 傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。以下この項において同じ。)を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が十二月に満たない場合にあっては、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。

 傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)

 傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の九月三十日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)

傷病手当金の額は、これまでの被保険者期間にかかわらず、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。)を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額となる。

選択肢4. 傷病手当金の支給要件に係る療養は、一般の被保険者の場合、保険医から療養の給付を受けることを要件としており、自費診療による療養は該当しない。

S3.9.11事発1811

傷病手当金の要件である療養とは保険事故たる疾病が対象です。美容整形などは保険事故ではないため対象外となります。保険事故たる疾病により労務に服することができない場合は、療養の給付を受けているか場合に限られず、自費診療又は自宅療養であっても医師の意見書、事業主の証明等があるときは支給の対象となることがあります。

傷病手当金の支給要件に係る療養は、一般の被保険者の場合、保険医から療養の給付を受けることを要件としており、自費診療による療養は該当しない

選択肢5. 被保険者又はその被扶養者において、業務災害(労災保険法第7条第1項第1号に規定する、労働者の業務上の負傷、疾病等をいう。)と疑われる事例で健康保険の被保険者証を使用した場合、保険者は、被保険者又はその被扶養者に対して、まずは労災保険法に基づく保険給付の請求を促し、健康保険法に基づく保険給付を留保することができる。

健康保険法の第1条(目的規定)等の改正に関するQ&Aについて(平成25年8月14日)(事務連絡

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9650&dataType=1&pageNo=1

【質問6】

被保険者またはその被扶養者において、業務災害・通勤災害と疑われる事例で健康保険の被保険者証を使用し、または現金給付の申請等が行われた場合、健康保険の保険者は、まずは労災保険への請求を促し、健康保険の給付を留保することができるか。

(回答)

○ 労災保険法における業務災害については健康保険の給付の対象外であり、また、労災保険法における通勤災害については労災保険からの給付が優先されるため、まずは労災保険の請求を促し、健康保険の給付を留保することができる。

○ ただし、保険者において、健康保険の給付を留保するに当たっては、関係する医療機関等に連絡を行うなど、十分な配慮を行うこと。

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03

解説は以下の通りです。

選択肢1. 家族出産育児一時金は、被保険者の被扶養者である配偶者が出産した場合にのみ支給され、被保険者の被扶養者である子が出産した場合には支給されない。

【正誤】誤った記述です。

【根拠条文等】健康保険法第114条

【ポイント・考え方】

 設問文のような規定はなく、子であっても被扶養者である場合は家族出産育児一時金は支給されます。

【学習・実務でのワンポイント】

 被扶養者の範囲と条件については、あらためて整理しておくとよいでしょう。

選択肢2. 1年以上の継続した被保険者期間(任意継続被保険者であった期間、特例退職被保険者であった期間及び共済組合の組合員であった期間を除く。) を有する者であって、出産予定日から起算して40日前の日に退職した者が、退職日において通常勤務していた場合、退職日の翌日から被保険者として受けることができるはずであった期間、資格喪失後の出産手当金を受けることができる。

【正誤】誤った記述です。

【根拠条文等】健康保険法第102条,104条,平成18年6月21日庁保発0621001号

【ポイント・考え方】

 退職日において通常勤務していた場合は、出産手当金を受給していないので、資格喪失後の継続受給の対象とはならず、資格喪失後の出産手当金を受けることができません。

 出産手当金は、出産のために「労務に服することができない」ことに対する所得保障の目的があるため、被保険者資格喪失後(つまりそもそも労務に服する意思がない(とみられてしまう)状態)に支給されるものではない点も、理解しておくとよいでしょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 上記のため、設問文の場合は、退職日において産前休業を開始していることが、出社手当金の継続受給ができる要件となります。

 実生活の場面でも起こりうる状況なので、理解しておくとよいでしょう。

選択肢3. 傷病手当金の額は、これまでの被保険者期間にかかわらず、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。)を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額となる。

【正誤】誤った記述です。

【根拠条文等】健康保険法第99条2項

【ポイント・考え方】

 設問文のような「全被保険者の~額」を算出の基礎とする方法は例外的なものであり、本来は当該被保険者自身の標準報酬月額をもとに算出されるべきものである点を、理解しておくとよいでしょう。

 (なぜなら、傷病により労務に服することができない本人の所得保障が目的であるので)

【学習・実務でのワンポイント】

 設問文にある例外的な算出方法についても、健康保険法の本則にて規定されている事項ではあるので、適用条件を理解しておくとよいでしょう。

選択肢4. 傷病手当金の支給要件に係る療養は、一般の被保険者の場合、保険医から療養の給付を受けることを要件としており、自費診療による療養は該当しない。

【正誤】誤った記述です。

【根拠条文等】健康保険法第99条1項,昭和2年2月26日保発345号

【ポイント・考え方】

 設問文の場合、保険医からの療養を受けられない事情がある場合に、自費診療による療養であることを理由として傷病手当金の支給が受けられないとすると、労務に服することができない場合の所得保障を目的とする傷病手当金の目的に照らし、支給有無で不公平が生じることとなる点より、誤りであると判断できるとよいでしょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 なお、傷病手当金の支給要件については、労務不能となった日から起算し連続した3日間を待期と称し、この期間は傷病手当金が支給されない点も、理解しておくとよいでしょう。

選択肢5. 被保険者又はその被扶養者において、業務災害(労災保険法第7条第1項第1号に規定する、労働者の業務上の負傷、疾病等をいう。)と疑われる事例で健康保険の被保険者証を使用した場合、保険者は、被保険者又はその被扶養者に対して、まずは労災保険法に基づく保険給付の請求を促し、健康保険法に基づく保険給付を留保することができる。

【正誤】正しい記述です。

【根拠条文等】健康保険法第1条,平成25年8月14日事務連絡

【ポイント・考え方】

 設問文のとおり、業務災害・通勤災害と疑われる事例は、まず労災保険による給付が優先される点を、理解しておくとよいでしょう。

 この場合に、健康保険の被保険者証を使用した場合は、健康保険法に基づく保険給付が留保となる点も、あわせて理解しておきましょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 実生活でも十分に起こりうる事項ですので、本設問文はぜひ理解しておきましょう。

参考になった数4