社会保険労務士の過去問
第53回(令和3年度)
厚生年金保険法 問1

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問題

社労士試験 第53回(令和3年度) 択一式 厚生年金保険法 問1 (訂正依頼・報告はこちら)

厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 夫の死亡により、厚生年金保険法第58条第1項第4号に規定するいわゆる長期要件に該当する遺族厚生年金(その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものとする。)の受給権者となった妻が、その権利を取得した当時60歳であった場合は、中高齢寡婦加算として遺族厚生年金の額に満額の遺族基礎年金の額が加算されるが、その妻が、当該夫の死亡により遺族基礎年金も受給できるときは、その間、当該加算される額に相当する部分の支給が停止される。
  • 昭和32年4月1日生まれの妻は、遺族厚生年金の受給権者であり、中高齢寡婦加算が加算されている。当該妻が65歳に達したときは、中高齢寡婦加算は加算されなくなるが、経過的寡婦加算の額が加算される。
  • 2以上の種別の被保険者であった期間を有する者について、3号分割標準報酬改定請求の規定を適用する場合においては、各号の厚生年金被保険者期間のうち1の期間に係る標準報酬についての当該請求は、他の期間に係る標準報酬についての当該請求と同時に行わなければならない。
  • 3号分割標準報酬改定請求は、離婚が成立した日の翌日から起算して2年を経過したときまでに行う必要があるが、3号分割標準報酬改定請求に併せて厚生年金保険法第78条の2に規定するいわゆる合意分割の請求を行う場合であって、按分割合に関する審判の申立てをした場合は、その審判が確定した日の翌日から起算して2年を経過する日までは3号分割標準報酬改定請求を行うことができる。
  • 厚生年金保険法第78条の14に規定する特定被保険者が、特定期間の全部をその額の計算の基礎とする障害厚生年金の受給権者であったとしても、当該特定被保険者の被扶養配偶者は3号分割標準報酬改定請求をすることができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

解説は以下のとおりです。

選択肢1. 夫の死亡により、厚生年金保険法第58条第1項第4号に規定するいわゆる長期要件に該当する遺族厚生年金(その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものとする。)の受給権者となった妻が、その権利を取得した当時60歳であった場合は、中高齢寡婦加算として遺族厚生年金の額に満額の遺族基礎年金の額が加算されるが、その妻が、当該夫の死亡により遺族基礎年金も受給できるときは、その間、当該加算される額に相当する部分の支給が停止される。

【正誤】誤った記述です。

【ポイント・考え方】

 中高齢寡婦加算として支給される額は、遺族基礎年金の満額にあたる額ではなく、4分の3に相当する額です。

 本筋ではない考え方ですが、設問文中に「満額の」という表現が出た場合は、当該設問の正誤についてはいったん疑問を持つのもよいかもしれません。

【学習・実務に向けたワンポイント】

 厚生年金保険の成り立ちから、女性にかかる保障が男性と比較して不十分である期間があったことを鑑み、「夫」を亡くした「妻」については、子供の有無・年齢、本人の年齢により、どの制度にてどのような給付・加算がなされるかをまとめておくとよいでしょう。

選択肢2. 昭和32年4月1日生まれの妻は、遺族厚生年金の受給権者であり、中高齢寡婦加算が加算されている。当該妻が65歳に達したときは、中高齢寡婦加算は加算されなくなるが、経過的寡婦加算の額が加算される。

【正誤】誤った記述です。

【ポイント・考え方】

 昭和32年4月1日生まれの妻は、経過的寡婦加算が支給されません。

 経過的寡婦加算が支給されるのは、昭和31年4月1日以前に生まれた人です。

【学習・実務に向けたワンポイント】

 昭和31年4月1日以前に生まれた人、とは、昭和61(1986)年4月1日(=基礎年金制度がスタートした月)において30歳以上であった人です。

 このような人は、65歳になり自分の老齢基礎年金を受けるようになったときに、老齢基礎年金の額が中高齢寡婦加算の額に満たない場合が生ずるため、65歳到達前後における年金額の低下を防止するために設けられたものです。

選択肢3. 2以上の種別の被保険者であった期間を有する者について、3号分割標準報酬改定請求の規定を適用する場合においては、各号の厚生年金被保険者期間のうち1の期間に係る標準報酬についての当該請求は、他の期間に係る標準報酬についての当該請求と同時に行わなければならない。

【正誤】正しい記述です。

【ポイント・考え方】

 いわゆる3号分割(離婚等によるもの)は、関係者が同じ件で何度も苦い思いをしないで済むよう、まとめて1回で行うもの、と理解しておくとよいでしょう。

【学習・実務に向けたワンポイント】

 離婚等による年金の分割については、離婚分割(合意分割)と3号分割の2種類の制度があります。

 両制度の特徴・適用条件を整理しておくとよいでしょう。

選択肢4. 3号分割標準報酬改定請求は、離婚が成立した日の翌日から起算して2年を経過したときまでに行う必要があるが、3号分割標準報酬改定請求に併せて厚生年金保険法第78条の2に規定するいわゆる合意分割の請求を行う場合であって、按分割合に関する審判の申立てをした場合は、その審判が確定した日の翌日から起算して2年を経過する日までは3号分割標準報酬改定請求を行うことができる。

【正誤】誤った記述です。

【ポイント・考え方】

 3号分割標準報酬改定請求期限の例外にあたる条件についての設問です。

 設問文にある審判が確定した場合は、その翌日から起算して「6か月」を経過する日までが、改定請求を行える期間です。

【学習・実務に向けたワンポイント】

 審判や審査の結果が出てからの対応期間(猶予)は、基となった行動(審判の申し立て)が能動的である点もふまえられ、通常1年以内(6か月や3か月等)となる場合が多いので、1年を超える期間は長すぎるという感触を持っているとよいと思います。

選択肢5. 厚生年金保険法第78条の14に規定する特定被保険者が、特定期間の全部をその額の計算の基礎とする障害厚生年金の受給権者であったとしても、当該特定被保険者の被扶養配偶者は3号分割標準報酬改定請求をすることができる。

【正誤】誤った記述です。

【ポイント・考え方】

 設問文における「特定被保険者」(離婚時に年金額を分割される人、などと簡単に理解しておきましょう)について、それが設問文のような障害厚生年金の受給権者であるときは、改定請求をすることができません。

【学習・実務に向けたワンポイント】

 障害にかかる各種給付は、その目的と特性をふまえ、当該受給権者のみにかかるもの(分割の対象外とされる)と理解しておくとよいでしょう。

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02

1誤です。

中高齢寡婦加算の問題です。

ポイントは、

夫の死亡により、妻がもらえる、長期要件

この単語になります。

長期の要件ですが、満額はもらえません。

4分の3になります。

2誤です。

経過的寡婦加算の問題です。

昭和31年4月1日以前生まれの妻に支給されます。

3正です。

3号分割の問題です。

同時に請求を行います。

片方だけの請求は出来ません。

4誤です。

3号分割の請求の問題です。

2年経った後に、審判が確定した場合は6カ月です。

5誤です。

特定被保険者とは、3号の夫の事です。

3号分割は、夫に対して強制的に分割するものなので

障害厚生年金の受給権者の場合は

全部の部分は間違いです。

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03

解説は以下のとおりです。

選択肢1. 夫の死亡により、厚生年金保険法第58条第1項第4号に規定するいわゆる長期要件に該当する遺族厚生年金(その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものとする。)の受給権者となった妻が、その権利を取得した当時60歳であった場合は、中高齢寡婦加算として遺族厚生年金の額に満額の遺族基礎年金の額が加算されるが、その妻が、当該夫の死亡により遺族基礎年金も受給できるときは、その間、当該加算される額に相当する部分の支給が停止される。

中高齢の寡婦加算額に関する問です。中高齢の寡婦加算額は、遺族基礎年金の額に4分の3を乗じて得た額です。

夫の死亡により、厚生年金保険法第58条第1項第4号に規定するいわゆる長期要件に該当する遺族厚生年金(その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものとする。)の受給権者となった妻が、その権利を取得した当時60歳であった場合は、中高齢寡婦加算として遺族厚生年金の額に満額の遺族基礎年金の額が加算されるが、その妻が、当該夫の死亡により遺族基礎年金も受給できるときは、その間、当該加算される額に相当する部分の支給が停止される。

選択肢2. 昭和32年4月1日生まれの妻は、遺族厚生年金の受給権者であり、中高齢寡婦加算が加算されている。当該妻が65歳に達したときは、中高齢寡婦加算は加算されなくなるが、経過的寡婦加算の額が加算される。

経過的寡婦加算の要件に関する問です。遺族厚生年金の受給権者であって昭和31年4月1日以前に生まれたもの(死亡した厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者の妻であった者に限ります)が対象です。

昭和32年4月1日生まれの妻は、遺族厚生年金の受給権者であり、中高齢寡婦加算が加算されている。当該妻が65歳に達したときは、中高齢寡婦加算は加算されなくなるが、経過的寡婦加算の額が加算される。

選択肢3. 2以上の種別の被保険者であった期間を有する者について、3号分割標準報酬改定請求の規定を適用する場合においては、各号の厚生年金被保険者期間のうち1の期間に係る標準報酬についての当該請求は、他の期間に係る標準報酬についての当該請求と同時に行わなければならない。

(被扶養配偶者である期間についての特例)

第七十八条の三十六 二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者について、第七十八条の十四第一項の規定を適用する場合においては、各号の厚生年金被保険者期間のうち一の期間に係る標準報酬についての同項の規定による請求は、他の期間に係る標準報酬についての当該請求と同時に行わなければならない。

選択肢4. 3号分割標準報酬改定請求は、離婚が成立した日の翌日から起算して2年を経過したときまでに行う必要があるが、3号分割標準報酬改定請求に併せて厚生年金保険法第78条の2に規定するいわゆる合意分割の請求を行う場合であって、按分割合に関する審判の申立てをした場合は、その審判が確定した日の翌日から起算して2年を経過する日までは3号分割標準報酬改定請求を行うことができる。

3号分割標準報酬改定の請求の期限に関する問です。審判が確定した日の翌日から起算して6カ月を経過する日までは、標準報酬改定請求を行うことができます(則78条3)。

(標準報酬改定請求の請求期限)

第七十八条の三

 前項各号に掲げる日の翌日から起算して二年を経過した日以後に、又は同項各号に掲げる日の翌日から起算して二年を経過した日前六月以内に次の各号のいずれかに該当した場合(第一号又は第二号に掲げる場合に該当した場合にあつては、同項各号に掲げる日の翌日から起算して二年を経過した日前に請求すべき按あん分割合(法第七十八条の二第一項第一号に規定する請求すべき按あん分割合をいう。以下同じ。)に関する審判又は調停の申立てがあつたときに限る。)について、同条第一項ただし書に規定する厚生労働省令で定める場合は、前項本文の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当することとなつた日の翌日から起算して六月を経過した場合とする。

 請求すべき按あん分割合を定めた審判が確定したとき

 請求すべき按あん分割合を定めた調停が成立したとき

 人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第三十二条第一項の規定による請求すべき按あん分割合を定めた判決が確定したとき

3号分割標準報酬改定請求は、離婚が成立した日の翌日から起算して2年を経過したときまでに行う必要があるが、3号分割標準報酬改定請求に併せて厚生年金保険法第78条の2に規定するいわゆる合意分割の請求を行う場合であって、按分割合に関する審判の申立てをした場合は、その審判が確定した日の翌日から起算して2年を経過する日までは3号分割標準報酬改定請求を行うことができる。

選択肢5. 厚生年金保険法第78条の14に規定する特定被保険者が、特定期間の全部をその額の計算の基礎とする障害厚生年金の受給権者であったとしても、当該特定被保険者の被扶養配偶者は3号分割標準報酬改定請求をすることができる。

3号分割を請求することができないときに関する問です。

3号分割標準報酬改定請求のあった日に特定被保険者が障害厚生年金の受給権者であって、特定期間の全部又は一部がその額の計算の基礎となっている場合は3号分割を請求することができません。(分割されてしまう特定被保険者の障害厚生年金が下がってしまうため)

厚生年金保険法第78条の14に規定する特定被保険者が、特定期間の全部をその額の計算の基礎とする障害厚生年金の受給権者であったとしても、当該特定被保険者の被扶養配偶者は3号分割標準報酬改定請求をすることができる

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