社会保険労務士の過去問
第54回(令和4年度)
労働基準法及び労働安全衛生法 問5

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問題

社労士試験 第54回(令和4年度) 択一式 労働基準法及び労働安全衛生法 問5 (訂正依頼・報告はこちら)

労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 社会保険労務士の国家資格を有する労働者について、労働基準法第14条に基づき契約期間の上限を5年とする労働契約を締結するためには、社会保険労務士の資格を有していることだけでは足りず、社会保険労務士の名称を用いて社会保険労務士の資格に係る業務を行うことが労働契約上認められている等が必要である。
  • 労働基準法第15条第3項にいう「契約解除の日から14日以内」であるとは、解除当日から数えて14日をいい、例えば、9月1日に労働契約を解除した場合は、9月1日から9月14日までをいう。
  • 労働基準法第16条のいわゆる「賠償予定の禁止」については、違約金又はあらかじめ定めた損害賠償額を現実に徴収したときにはじめて違反が成立する。
  • 「前借金」とは、労働契約の締結の際又はその後に、労働することを条件として使用者から借り入れ、将来の賃金により弁済することを約する金銭をいい、労働基準法第17条は前借金そのものを全面的に禁止している。
  • 労働基準法第22条第1項に基づいて交付される証明書は、労働者が同項に定める法定記載事項の一部のみが記入された証明書を請求した場合でも、法定記載事項をすべて記入しなければならない。

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この過去問の解説 (3件)

01

労働契約については、労働者保護の観点からさまざまな規定がありますが、設問文においては、細かい点からいわゆる引っかけ問題も出題されることがあります。設問文の内容・条件をよく読んで取り組みましょう。

選択肢1. 社会保険労務士の国家資格を有する労働者について、労働基準法第14条に基づき契約期間の上限を5年とする労働契約を締結するためには、社会保険労務士の資格を有していることだけでは足りず、社会保険労務士の名称を用いて社会保険労務士の資格に係る業務を行うことが労働契約上認められている等が必要である。

本設問文のとおりです。

国家資格を有する労働者の契約期間の上限を定める労働契約の締結条件を理解しておくとよいでしょう。

選択肢2. 労働基準法第15条第3項にいう「契約解除の日から14日以内」であるとは、解除当日から数えて14日をいい、例えば、9月1日に労働契約を解除した場合は、9月1日から9月14日までをいう。

「契約解除の日から14 日以内」であるか否かの計算は、民法の期間計算の原則により「翌日」から起算します。

このため、9月1日に労働契約を解除した場合は、翌日の9月2日から起算して14日、つまり9月15日までとなります。

多くの場合、事象発生当日はカウントに含めない(でないと当日のどの時点で事象が発生したか(例えば朝一番だったのか夕刻遅くだったのか) により、人によって不公平な状態になりえるから)と理解しておくとよいでしょう。

選択肢3. 労働基準法第16条のいわゆる「賠償予定の禁止」については、違約金又はあらかじめ定めた損害賠償額を現実に徴収したときにはじめて違反が成立する。

労働基準法第16条は、賠償の「予定」を禁止しているので、違約金又は損害賠償額を「予定した契約を締結したとき」に違反が成立します。

なお、本条の賠償の「予定」については、「額」をあらかじめ決めておくことが問題(違反)なのであって、「現実に損害が発生した場合に(それに見合う)賠償をしてもらう」主旨の規定は違反ではなく、当該観点で出題される場合もあるので、設問文を注意して読むようにするとよいでしょう。

選択肢4. 「前借金」とは、労働契約の締結の際又はその後に、労働することを条件として使用者から借り入れ、将来の賃金により弁済することを約する金銭をいい、労働基準法第17条は前借金そのものを全面的に禁止している。

労働基準法第17条は、前借金そのものは禁止しておらず、賃金と前借金を相殺することを禁止するにとどめたものであると理解しておきましょう。

前者が労働者側からの申し入れの場合もあり得ること、後者が使用者側のみからの実施によるものであることを鑑み、労働者を守る(労働者側の主体的行動については許容する)考え方があるものと理解しておくとよいでしょう。

選択肢5. 労働基準法第22条第1項に基づいて交付される証明書は、労働者が同項に定める法定記載事項の一部のみが記入された証明書を請求した場合でも、法定記載事項をすべて記入しなければならない。

当該証明書には、労働者の請求した事項のみを記入すればよく、労働者の請求しない事項は、たとえ法定記載事項であってもすべて記入すべきものではないと理解しておきましょう。

労働者の主体的判断・行動に基づくものについては許容されるという考え方があるものと理解しておくとよいでしょう。

まとめ

本設問における各選択肢の内容は、落ち着いて読み込むことで正誤を判断することが可能だと筆者は考えます。

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02

正解肢を含む他の選択肢、労働契約の解除時の起算日、賠償予定、前借金相殺はテキストでも前の方に出てくる基本事項です。退職時の証明も趣旨を理解すれば記憶に残りやすいでしょう。

選択肢1. 社会保険労務士の国家資格を有する労働者について、労働基準法第14条に基づき契約期間の上限を5年とする労働契約を締結するためには、社会保険労務士の資格を有していることだけでは足りず、社会保険労務士の名称を用いて社会保険労務士の資格に係る業務を行うことが労働契約上認められている等が必要である。

正:期間の定めのある労働契約の期間の上限に関する問です。専門的な知識、技術又は経験(専門的知識等)があるため5年が上限とされているため、専門的知識等を使わない業務であれば5年とはなりません。高度の専門知識を有するため、立場が強い。5年にしも不利益を被らないだろうという考えがあります。

(契約期間等)

第十四条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。

一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約

選択肢2. 労働基準法第15条第3項にいう「契約解除の日から14日以内」であるとは、解除当日から数えて14日をいい、例えば、9月1日に労働契約を解除した場合は、9月1日から9月14日までをいう。

誤:労働契約の即時解除及び帰郷旅費からの出題です。契約解除の起算日を問いますが、翌日起算です。9月1日に14日を足して9月15日までを言います。

(労働条件の明示)

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。(中略)

③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

選択肢3. 労働基準法第16条のいわゆる「賠償予定の禁止」については、違約金又はあらかじめ定めた損害賠償額を現実に徴収したときにはじめて違反が成立する。

誤:賠償予定の禁止からの出題です。この規定では損害賠償額を予定する契約をしてはならないので、本肢のように損害賠償額を現実に徴収したときにはじめて違反が成立ではありません。

(賠償予定の禁止)

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

選択肢4. 「前借金」とは、労働契約の締結の際又はその後に、労働することを条件として使用者から借り入れ、将来の賃金により弁済することを約する金銭をいい、労働基準法第17条は前借金そのものを全面的に禁止している。

誤:前借金相殺の禁止からの出題です。賃金の前払いのような弁済期の繰上げ等で明らかに身分的拘束を伴わないような前借金はそれ自体が禁止されているのではない。うちで働くならお金を貸してやるといった賃金と相殺することは禁止されています。相殺は一方的に言える非常に強力なもので相殺する側(使用者)の一方的な意思表示によるものについて禁止されています。労働者自ら毎月n万円を給与から毎月返済するといった自己の意思による相殺は禁止されていません。

(前借金相殺の禁止)

第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

「前借金」とは、労働契約の締結の際又はその後に、労働することを条件として使用者から借り入れ、将来の賃金により弁済することを約する金銭をいい、労働基準法第17条は前借金そのものを全面的に禁止している。

選択肢5. 労働基準法第22条第1項に基づいて交付される証明書は、労働者が同項に定める法定記載事項の一部のみが記入された証明書を請求した場合でも、法定記載事項をすべて記入しなければならない。

誤:退職時等の証明に関する出題です。退職時の証明書は再就職活動をする際に有力な資料となる証明書の交付を労働者が請求した場合に使用者が応じることを規定しています。労働者が請求しない事項を記載してしまうと再就職活動の妨げになるなどが想定されます。

(退職時等の証明)

第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。(中略)

③ 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

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03

この問題は、労働基準法に定められた労働契約に関する各種規定の理解を問うものです。

問題では、国家資格を持つ労働者の契約期間、契約解除後の期間の計算、賠償予定の禁止、前借金の扱い、退職時の証明書の交付条件について触れています。

選択肢1. 社会保険労務士の国家資格を有する労働者について、労働基準法第14条に基づき契約期間の上限を5年とする労働契約を締結するためには、社会保険労務士の資格を有していることだけでは足りず、社会保険労務士の名称を用いて社会保険労務士の資格に係る業務を行うことが労働契約上認められている等が必要である。

正しい

解説:労働基準法第14条に基づく契約期間の上限を5年とする場合、社会保険労務士としての資格を有することに加え、その業務を行うことが契約上認められている必要があります。

選択肢2. 労働基準法第15条第3項にいう「契約解除の日から14日以内」であるとは、解除当日から数えて14日をいい、例えば、9月1日に労働契約を解除した場合は、9月1日から9月14日までをいう。

誤り

解説:「契約解除の日から14日以内」は解除翌日から起算して14日間を指します。

したがって、9月1日に解除した場合、期間は9月2日から9月15日までとなります。

選択肢3. 労働基準法第16条のいわゆる「賠償予定の禁止」については、違約金又はあらかじめ定めた損害賠償額を現実に徴収したときにはじめて違反が成立する。

誤り

解説:第16条における「賠償予定の禁止」は、違約金や損害賠償額を予定する契約を締結した時点で違反が成立します。

徴収の有無は関係ありません。

選択肢4. 「前借金」とは、労働契約の締結の際又はその後に、労働することを条件として使用者から借り入れ、将来の賃金により弁済することを約する金銭をいい、労働基準法第17条は前借金そのものを全面的に禁止している。

誤り

解説:労働基準法第17条では、前借金そのものを禁止しているわけではなく、賃金との相殺を禁止しています。

選択肢5. 労働基準法第22条第1項に基づいて交付される証明書は、労働者が同項に定める法定記載事項の一部のみが記入された証明書を請求した場合でも、法定記載事項をすべて記入しなければならない。

誤り

解説:労働者が退職時に証明書を請求する場合、使用者は労働者が請求した法定記載事項のみを記入すればよく、すべてを記入する必要はありません。

まとめ

労働基準法に定められている労働契約に関する規定は、労働者の保護を目的としています。

そのため、法の趣旨を理解し、具体的な条文の内容を正確に把握することが重要です。

特に、契約期間の上限、契約解除後の取り扱い、賠償予定の禁止、前借金の相殺禁止、退職時の証明書交付条件などは、労働者と使用者の双方にとって重要な知識です。

これらの規定を適切に適用することで、公平かつ透明な労働関係を維持することが可能になります。

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