司法書士の過去問
平成27年度
(旧)平成27年度 問1
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問題
平成27年度 司法書士試験 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
精神的自由に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有するから、警察官が正当な理由なく個人の容貌・姿態を撮影することは許されない。
イ 裁判所が、他人の名誉を毀損した加害者に対して、被害者の名誉を回復するのに適当な処分として謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを命ずることは、その加害者の人格を無視し意思決定の自由を不当に制限することとなるので、その内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであったとしても、当該加害者の思想及び良心の自由を侵害し、許されない。
ウ 剣道実技の科目が必修とされている公立の高等専門学校において、特定の宗教を信仰していることにより剣道実技に参加することができない学生に対し代替措置として、他の体育実技の履修やレポートの提出を求めた上で、その成果に応じた評価をすることは、その目的において宗教的意義はないものの、その宗教を援助、助長、促進する効果を有し、他の宗教者又は無宗教者に圧迫、干渉を加える効果があるから、政教分離の原則に違反する。
エ 報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものであるから、報道の自由及び報道のための取材の自由はいずれも憲法上保障されており、裁判所が、刑事裁判の証拠に使う目的で、報道機関に対しその取材フィルムの提出を命ずることは許されない。
オ 大学において学生の集会が行われた場合であっても、その集会が、真に学問的な研究又はその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ、公開の集会又はこれに準じるものであるときは、その集会への警察官の立入りは、大学の学問の自由と自治を侵害するものではない。
ア 個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有するから、警察官が正当な理由なく個人の容貌・姿態を撮影することは許されない。
イ 裁判所が、他人の名誉を毀損した加害者に対して、被害者の名誉を回復するのに適当な処分として謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを命ずることは、その加害者の人格を無視し意思決定の自由を不当に制限することとなるので、その内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであったとしても、当該加害者の思想及び良心の自由を侵害し、許されない。
ウ 剣道実技の科目が必修とされている公立の高等専門学校において、特定の宗教を信仰していることにより剣道実技に参加することができない学生に対し代替措置として、他の体育実技の履修やレポートの提出を求めた上で、その成果に応じた評価をすることは、その目的において宗教的意義はないものの、その宗教を援助、助長、促進する効果を有し、他の宗教者又は無宗教者に圧迫、干渉を加える効果があるから、政教分離の原則に違反する。
エ 報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものであるから、報道の自由及び報道のための取材の自由はいずれも憲法上保障されており、裁判所が、刑事裁判の証拠に使う目的で、報道機関に対しその取材フィルムの提出を命ずることは許されない。
オ 大学において学生の集会が行われた場合であっても、その集会が、真に学問的な研究又はその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ、公開の集会又はこれに準じるものであるときは、その集会への警察官の立入りは、大学の学問の自由と自治を侵害するものではない。
- アイ
- アオ
- イエ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
肖像権は、憲法第13条(個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重)より認められた新しい人権です。何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有しますが、現行犯の場合や証拠保全の緊急性、必要性がある場合で撮影が相当な方法による場合であれば、警察官は個人の容貌・姿態を撮影することが許されます。【京都市公安条例違反デモ事件(最判昭44.12.24)】
イ ×
謝罪広告は、憲法第19条(思想・良心の自由)の観点から問題になります。判例によると、謝罪広告であっても、その内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであったのであれば、加害者の思想及び良心の自由を侵害するとは言えないとされています。【謝罪広告事件(最判昭31.7.4)】
ウ ×
憲法第20条(信教の自由、国の宗教活動の禁止)の観点から問題になります。判例によると、剣道実技の科目が必修とされていたとしても、体育の教育効果をあげるために必要不可欠なものとはいえず、代替措置として他の体育実技の履修やレポートの提出を求めた上で、その成果に応じた評価をすることが必要と判示しており、本肢とは逆の立場をとっています。【エホバの証人剣道実技拒否事件(最判平8.3.8)】
エ ×
通説によりますと、報道の自由及び取材の自由は、表現の自由(憲法第21条)より派生する権利です。報道の自由が憲法上保障される権利なのに対し、取材の自由は、憲法21条で保障された権利ではなく、その精神に照らし十分尊重される権利という位置づけになります。よって、取材の自由は憲法上保障される権利ではなく、裁判所が、刑事裁判の証拠に使う目的で、報道機関に対しその取材フィルムの提出を命ずることは許されるとされています。【博多駅TVフィルム提出命令事件(最決昭44.11.26)】
オ 〇
憲法第23条(学問の自由)を保障するために、通常大学には、人事を行い、施設、予算、学生などを管理する大学の自治が認められています。ただし本事件においては、実社会の政治的社会的活動であり、かつ、公開の集会又はこれに準じるものであるため、その集会への警察官の立入りは、大学の学問の自由と自治を侵害するものではないとされています。【東大ポポロ事件(最判昭38.5.22)】
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02
正しい選択肢は、ア及びオなので、2が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 判例は「憲法13条は、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌、姿態を撮影されない自由を有するというべきである。警察官が、正当な理由もないのに、個人の容貌等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されない」(最高裁昭和44年12月24日判決)、としています。従って、本選択肢は正しいです。
イ. 判例は「民法723条に、いわゆる、他人の名誉を棄損した者に対して被害者の名誉を回復するに適当な処分、として、謝罪広告を新聞紙等に掲載すべきことを加害者に命じることは、従来学説判例の肯定するところであり、また、謝罪広告を新聞紙等に掲載することは、我が国国民生活の実際においても行われているものである」、「単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するに止まる程度のものにあっては、これが強制執行の代替作為として民事訴訟法733条の手続きによることを得るものと言わざるを得ない」(最高裁昭和31年7月4日判決)としています。従って、裁判所が、他人の名誉を棄損した加害者に対して、被害者の名誉を回復するに適当な処分として、謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを命じることは、その内容が、単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであれば、許されるので、本選択肢は誤りです。
ウ. 判例は「信仰上の真摯な理由から、剣道実技にに参加することができない学生に対して、代替措置として、例えば、他の体育実技の履修、レポートの提出等を求めた上で、その成果に応じた評価をすることが、その目的において宗教的な意義を有し、特定の宗教を援助、助長、促進する効果を有するものとはいうことができず、他の宗教者又は無宗教者に圧迫、干渉を加えることかがあるとも言えないのであって、およそ、代替措置をとることが、その方法、態様の如何を問わず、憲法20条3項に違反するということができないことは明らかである」(最高裁平成8年3月8日判決)、としています。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 判例は「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するものである。従って、思想の表明の自由と並んで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあることはいうまでもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道の自由とともに、取材の自由も、憲法21除の精神に照らし、十分尊重に値するものと言わざるを得ない。」「しかし、取材の自由といっても、もとより、なんらの制約を受けないものではなく、例えば、公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは、ある程度の制約を受けることのあることも否定することができない」「公正な刑事裁判を実現することは、国家の基本的な要請であり、刑事裁判においては、実質的な真実の発見が要請されることは言うまでもない。このような公正な刑事裁判を実現を保障するために、報道機関の取材活動によって得られたものが、証拠として必要と認められるような場合には、取材の自由がある程度の制約を蒙ることになっても、やむを得ないところというべきである」としています。従って、本選択肢は誤りです。
オ. 判例は「大学における学生の集会が、真に学問的な研究又はその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しないといわなければならない。また、その集会が学生のみのものでなく、特に一般の公衆の入場を許す場合には、むしろ公開の集会とみなされるべきであり、少なくとも、これに準じるものというべきである」「本件集会は、真に学問的な研究と発表のものでなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ、公開の集会又はこれに準じるものであって、大学の学問の自由と自治は、これを享有しないといわなければならない。従って、本件集会に警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と自治を犯すものではない」(最高裁昭和38年5月22日判決)、としています。従って、本選択肢は正しいです。
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03
ア 京都市公安条例違反デモ事件
憲法13条を根拠とした肖像権があります。現に犯罪が行われ証拠保全の必要があり限度を超えなければ個人の容貌を撮影することは肖像権違反になりません。
イ 謝罪広告事件
単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであれば謝罪広告を強制することができます。
ウ エホバの証人剣道実技拒否事件
剣道を拒否する行為は信仰の核心部分と密接不可分で代替措置をとることが容易であります。よって政教分離原則違反とはなりません
エ 博多駅TVフィルム提出命令事件
フィルムは被疑者の在籍について重大な証拠となりうる可能性がありますまた報道の自由は妨げられていませんしたがってテレビ局はフィルムを提出しなければなりません。
オ 東大ポポロ事件
学生による演劇は政治活動であるため学問の自由が保障されている大学の自治とは一線を画しているため警察官が演劇会場に立ち入る事は許されます。
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