司法書士の過去問
平成26年度
午前の部 問1
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問題
平成26年度 司法書士試験 午前の部 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
検閲に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 検閲とは、表現行為に先立ち公権力が何らかの方法でこれを抑制すること及び実質的にこれと同視することができる影響を表現行為に及ぼす規制方法をいう。
イ 検閲の禁止は、絶対的禁止を意味するものではなく、検閲に当たる場合であっても、厳格かつ明確な要件の下で検閲が許容される場合はあり得る。
ウ 裁判所の仮処分による出版物の事前差止めは、訴訟手続を経て行われるものではなく、争いのある権利関係を暫定的に規律するものであって、非訟的な要素を有するものであるから、検閲に当たる。
エ 教科用図書の検定は、不合格となった図書をそのまま一般図書として発行することを何ら妨げるものではないから、検閲には当たらない。
オ 書籍や図画の輸入手続における税関検査は、事前に表現物の発表そのものを禁止するものではなく、関税徴収手続に付随して行われるものであって、思想内容それ自体を網羅的に審査し規制することを目的とするものではないと、検査の主体となる税関も思想内容の規制をその独自の使命とする機関ではなく、当該表現物に関する税関長の通知につき司法審査の機会が与えられているから、検閲には当たらない。
ア 検閲とは、表現行為に先立ち公権力が何らかの方法でこれを抑制すること及び実質的にこれと同視することができる影響を表現行為に及ぼす規制方法をいう。
イ 検閲の禁止は、絶対的禁止を意味するものではなく、検閲に当たる場合であっても、厳格かつ明確な要件の下で検閲が許容される場合はあり得る。
ウ 裁判所の仮処分による出版物の事前差止めは、訴訟手続を経て行われるものではなく、争いのある権利関係を暫定的に規律するものであって、非訟的な要素を有するものであるから、検閲に当たる。
エ 教科用図書の検定は、不合格となった図書をそのまま一般図書として発行することを何ら妨げるものではないから、検閲には当たらない。
オ 書籍や図画の輸入手続における税関検査は、事前に表現物の発表そのものを禁止するものではなく、関税徴収手続に付随して行われるものであって、思想内容それ自体を網羅的に審査し規制することを目的とするものではないと、検査の主体となる税関も思想内容の規制をその独自の使命とする機関ではなく、当該表現物に関する税関長の通知につき司法審査の機会が与えられているから、検閲には当たらない。
- アイ
- アエ
- イウ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はエとオであり、5が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 判例は「憲法第21条2項に言う検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされり一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上で、不適当と認める者の発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと
解すべき」とされます。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 憲法21条2項は、「検閲は、これをしてはならない」と規定しています。検閲は絶対的禁止です。よって、本選択肢は誤りです。
ウ. 裁判所の仮処分による事前差し止めは、検閲には当たりません。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 教科書用の図書検定は、検閲には当たりません。従って、本選択肢は正解です。
オ. 税関検査は、検閲には当たりません。従って、本選択肢は正解です。
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02
ア 判例(最大判昭和59.12.12 税関検査事件)は、検閲を「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的、一般的に発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す」ととらえたうえで、検閲は絶対に禁止される、としています。本記述は、検閲主体を「公権力」と広く解している点で誤りです。
イ 上記ア記載の判例は、検閲に該当する場合には「公共の福祉を理由とする例外も認められない」として絶対的に禁止しています。したがって、本記述は、「例外的に許される場合がある」としている点で誤りです。
ウ 判例(最大判昭和61.6.11 北方ジャーナル事件)は、検閲の意義についてアの判例を踏襲し、裁判所の仮処分による事前差止めは、個別的な私人間の紛争について、司法裁判所によって被保全権利の存否や保全の必要性を審理判断してなされる点において行政権による網羅的一般的な審査がなされる場合とは異なる点などを理由に挙げ、「検閲には当たらない」としています。したがって、本記述は誤りです。
エ 判例(最判平成5.3.16 第一次家永教科書訴訟)は、「教科書検定は検閲に当たらない」としています。その理由として同判例は、本記述のように、教科書検定において不合格となった場合、教科書としては発行できないとしても、一般図書として発行することは妨げられず、発表を禁止する目的や発表前の審査などの特質がない点を挙げています。したがって、本記述は正しいです。
オ 上記ア記載の判例は、検閲の意義をアのように解した上で、税関検査は、輸入が禁止されるだけで、発表の機会を全面的に奪うものではないこと、関税徴収手続に付随して行われるものであって、思想内容それ自体を網羅的に審査し規制することを目的とするものではないこと、検査の主体となる税関も思想内容の規制をその独自の使命とする機関ではないこと、当該表現物に関する税関長の通知につき司法審査の機会が与えられていること、などを理由に、「検閲には当たらない」としています。したがって、本記述は正しいです。
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03
正解は5。
ア:誤
判例は、憲法21条2項前段にいう「検閲」とは、「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと」(最大判昭和59年12月12日民集38巻12号1308頁)としています。主体は「行政権」とされており、対象、方法などについてより限定的なものとされているのです。
よって、誤った記述です。
イ:誤
判例(最大判昭和59年12月12日民集38巻12号1308頁)は、(アで引用した)憲法21条2前段にいう「検閲」の定義を述べるにあたって、「憲法が、表現の自由につき、広くこれを保障する旨の一般的規定を同条一項[引用者:憲法21条1項]に置きながら、別に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは、検閲がその性質上表現の自由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ、これについては、公共の福祉を理由とする例外の許容(憲法一二条、一三条参照)をも認めない趣旨を明らかにしたもの」としています。すなわち、判例は21条2項前段にいう「検閲」は絶対的に禁止されているとしているのです。
よって、誤った記述です。
ウ:誤
判例(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)は、一定の記事を掲載した雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、裁判の形式によるとはいえ、口頭弁論ないし債務者の審尋を必要的とせず、立証についても疎明で足りるとされているなど簡略な手続によるものであり、また、いわゆる満足的仮処分として争いのある権利関係を暫定的に規律するものであつて、非訟的な要素を有することを否定することはできないが、仮処分による事前差止めは、表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合とは異なり、個別的な私人間の紛争について、司法裁判所により、当事者の申請に基づき差止請求権等の私法上の被保全権利の存否、保全の必要性の有無を審理判断して発せられるものであつて、右判示にいう「検閲」には当たらないものというべきである」としています。
よって、誤った記述です。
エ:正
判例(最判平成5年3月16日民集第47巻5号3483頁)は、「不合格とされた図書は、右のような特別な取 扱いを受けることができず、教科書としての発行の道が閉ざされることになるが、 右制約は、普通教育の場において使用義務が課せられている教科書という特殊な形 態に限定されるのであって、不合格図書をそのまま一般図書として発行し、教師、 児童、生徒を含む国民一般にこれを発表すること、すなわち思想の自由市場に登場させることは、何ら妨げられるところはな」く、「発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから」検閲に当たらないとしています。
よって、正しい記述です。
オ:正
判例(最大判昭和59年12月12日民集38巻12号1308頁)は、書籍や図画の輸入手続における税関検査は、「事前規制そのものということはできない」こと、「思想内容等それ自体を網羅的に審査し規制することを目的とするものではない」こと、「税関検査は行政権によって行われるとはいえ、その主体となる税関は、関税の確定及び徴収を本来の職務内容とする機関であって、特に思想内容等を対象としてこれを規制することを独自の使命とするものではなく、また、前述のように、思想内容等の表現物につき税関長の通知がされたときは司法審査の機会が与えられているのであって、行政権の判断が最終的なものとされるわけではない」ことなどを述べて、検閲にはあたらないとしています。
よって、正しい記述です。
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