司法書士の過去問
平成26年度
午前の部 問2

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問題

平成26年度 司法書士試験 午前の部 問2 (訂正依頼・報告はこちら)

国会に関する次の1から5までの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、どれか。
  • 議院の国政調査権は、立法のために特別に与えられた権限であるから、その対象は立法をするのに必要な範囲に限られ、個別具体的な行政事務の処理の当否を調査する目的で国政調査権を行使することはできない。
  • 両議院は、それぞれその総議員の3分の1以上の出席がなければ、議決をすることができないだけでなく、議事を開くこともできない。
  • 予算については、衆議院の優越が定められており、参議院が衆議院と異なった議決をした場合であっても、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び議決したときは、衆議院の議決を国会の議決とすることができる。
  • 両議院の議員は、院内で行なった演説、討論又は表決について院外で責任を問われないため、議員が行ったこれらの行為につき、国が賠償資任を負うことはない。
  • 特別会は、衆議院の解散に伴う衆議院議員の総選挙後に召集されるものであり、その会期中は、参議院は閉会となる。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は2です。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

1. 国政調査権の対象は、立法をするのに必要な範囲に限られず、個別具体的な行政事務の当否も含みます。従って、本選択肢は誤りです。

2. 憲法第56条第1項で「両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き、議決をすることができない」とあります。本選択肢は、この憲法の規定に一致するものなので、本選択肢は正解です。

3. 憲法第60条第2項では、「予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても、意見が一致しないとき、又は、参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会会期中を除いて、30日以内に議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする」と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。

4. 例外的に特別の事情がある場合には、両議院の議員が、院内で行なった演説、討論又は表決について院外で責任を問われることがあり、議員が行ったこれらの行為につき、国が賠償資任を負います。従って、本選択肢は誤りです。

5. 国会法では、両議員の同時活動の原則が定められているため、衆議院の特別会の会期中に、参議院が閉会となることはありません。従って、本選択肢は誤りです。

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02

正解は2。

1:誤

議員の国政調査権は、議員の諸権能を実効的に行使するための補助的権能とされており、その対象は、立法のために限られません。そして、行政監督は議院の権能です。

したがって、個別具体的な行政事務の処理の当否を調査する目的で国政調査権を行使することができます。

よって、誤った記述です。

2:正

憲法56条1項は「両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」と定めています。

よって、正しい記述です。

3:誤

憲法60条2項は、「予算について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする」と定めています。法律案について、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数での再び議決する必要があるのとは異なります(憲法59条2項参照)。

関連事項として、予算については衆議院の先議が定められています(憲法60条1項)。なお、憲法60条2項は、「条約の締結に必要な国会の承認」に準用されます(61条)。

よって、誤った記述です。

4:誤

憲法51条の定める免責特権は議員についてものであり、国が国家賠償法上の責任を負うことまでは否定されません。判例は、「国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではなく、右責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする」としています (最判平成9年9月9日民集51巻8号3850頁)。

したがって、限られた場合ではありますが、両議院の議員が院内で行なった演説、討論又は表決につき、国が、国家賠償法1条1項に基づいて賠償責任を負うことが認められることがあります。

よって、誤った記述です。

5:誤

特別会とは、「衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない」ということに基づくものです(憲法54条1項)。この会期中も、参議院は活動します。

よって、誤った記述です。

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03

正しい記述は2であり、2が正解です。

1 国政調査権の性質については、補助的権能説(議院に与えられた権能を実効的に行使するために認められた補助的な権能である、とする説)と、独立権能説(国権の最高機関性に基づく、国家統括のための独立した権能である、とする説)がありますが、いずれの見解に立ったとしても、「個別具体的な行政事務の処理の当否を調査する目的で国政調査権を行使することはできない」ことにはなりません。したがって、本記述は誤りです。

2 憲法56条1項は、「両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」としています。本記述は条文の内容どおりの記載をしています。したがって、本記述は正しいです。

3 憲法60条2項は、予算に関する衆議院の優越の内容について、「参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする」としています。本記述のような、3分の2以上による衆議院の再議決によって成案となるのは、法律案に関する衆議院の優越の内容です(憲法59条2項)。したがって、本記述は誤りです。

4 判例(最判平成9.9.9)は、「国会議員が国会で行った質疑等において、国民の名誉や信用を低下させる発言があり、それが国家賠償法のいう違法な行為に該当したとしても、国の損害賠償責任が生じるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法または不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別な事情のあることが必要である」としています。したがって、本記述は、「国が賠償責任を負うことはない」とする点で誤りです。

5 特別会においても、同時活動の原則は適用されますので、特別会の会期中も衆議院と参議院はともに開会されます。したがって、本記述は「参議院は閉会となる」としている点で誤りです。

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