司法書士の過去問
平成26年度
午前の部 問3
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
平成26年度 司法書士試験 午前の部 問3 (訂正依頼・報告はこちら)
司法権の範囲又はその限界に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 国家試験における合格又は不合格の判定は、学問上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、試験実施機関の最終判断に委ねられるべきものであって、司法審査の対象とならない。
イ 当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体の内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、宗教上の教義や信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものであるときは、当該権利義務ないし法律関係は、司法審査の対象とならない。
ウ 地方議会は自律的な法規範を持つ団体であって、当該規範の実現については内部規律の問題として自治的措置に任せるべきであるから、地方議会議員の除名処分については、司法審査の対象とならない。
エ 政党は、議会制民主主義を支える上において極めて重要な存在であるから、その組織内の自律的な運営として党員に対してした処分は、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまるものであっても、司法審査の対象となる。
オ 衆議院の解散については、たとえその有効又は無効の判断が法律上可能である場合であっても、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負う政府、国会等の政治部門の判断に委ねられ、最終的には国民の政治的判断に委ねられるべきであり、司法審査の対象とならない。
ア 国家試験における合格又は不合格の判定は、学問上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、試験実施機関の最終判断に委ねられるべきものであって、司法審査の対象とならない。
イ 当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体の内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、宗教上の教義や信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものであるときは、当該権利義務ないし法律関係は、司法審査の対象とならない。
ウ 地方議会は自律的な法規範を持つ団体であって、当該規範の実現については内部規律の問題として自治的措置に任せるべきであるから、地方議会議員の除名処分については、司法審査の対象とならない。
エ 政党は、議会制民主主義を支える上において極めて重要な存在であるから、その組織内の自律的な運営として党員に対してした処分は、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまるものであっても、司法審査の対象となる。
オ 衆議院の解散については、たとえその有効又は無効の判断が法律上可能である場合であっても、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負う政府、国会等の政治部門の判断に委ねられ、最終的には国民の政治的判断に委ねられるべきであり、司法審査の対象とならない。
- アエ
- アオ
- イウ
- イオ
- ウエ
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (3件)
01
誤っている選択肢はウとエなので、5が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 国家試験における合格、不合格の判定は、司法審査の対象となりません。従って、本選択肢は正解です。
イ. 最高裁判所の平成元年9.8判決で、「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体の内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、宗教上の教義や信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものであるときは、当該権利義務ないし法律関係は、司法審査の対象とならない。」と示されています。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 地方議員の除名処分は、司法審査の対象となります。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 処分が一般法秩序と直接関係を有しない内部的な問題にとどまる場合には、司法審査の対象となりません。従って、本選択肢は誤りです。
オ. 直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、たとえ法律上の争訟として有効無効の判断が可能であるとしても、司法権の対象とはなりません。従って、本選択肢は正しいです。
参考になった数16
この解説の修正を提案する
02
ア 判例(最判昭和41.2.8)は、「国家試験における合否の判定は、試験実施機関の最終判断に委ねられるべきであって、司法審査の対象とはならない」としています。したがって、本記述は正しいです。
イ 判例(最判平成1.9.8)は、「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体の内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、宗教上の教義や信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものであるときは、当該権利義務ないし法律関係は、司法審査の対象とならない」として、「権利義務に関する争訟であっても、宗教問題が前提となっている場合は、裁判所は判断をすることはできない」としています。したがって、本記述は正しいです。
ウ 判例(最大判昭和35.10.19)は、「裁判所は、地方議会議員に対する懲罰のうち、出席停止については判断できないが、除名処分については判断できる」としています。その理由として、自律的法規範を持つ社会、団体にあっては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せるのがよいが(部分社会の法理)、一般市民秩序につながる問題(除名処分等)については司法審査権の範囲内であることを挙げています。したがって、本記述は誤りです。
エ 判例(最判昭和63.12.20 共産党袴田事件)は、「政党が党員に対してした処分は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない」としています。したがって、本記述は誤りです。
オ 判例(最大判昭和35.6.8 苫米地事件)は、「衆議院の解散のごとき直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、たとえ法律上の争訟として有効無効の判断が可能であるとしても、司法権の対象とはならない」としています(統治行為論)。したがって、本記述は正しいです。
参考になった数5
この解説の修正を提案する
03
正解は5。
ア:正
判例は、「国家試験における合格、不合格の判定も学問または技術上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、その試験実施機関の最終判断に委せられるべきものであつて、その判断の当否を審査し具体的に法令を適用して、その争を解決調整できるものとはいえない」として、「法律上の争訟」(裁判所法3条)にあたらないとして、司法審査の対象とならないとしています(最判昭和41年2月8日民集20巻2号196頁)。
よって、正しい記述です。
イ:正
宗教法人である宗教団体の代表役員の地位にあるかということが問題となっている場合でも、その審理・判断において、「宗教団体の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理、判断することが必要不可欠である場合」には、宗教法人である宗教団体の代表役員の地位にあるかについて審理、判断することができないとしています(最判平成5年9月7日民集47巻7号4667頁)。宗教団体の教義、信仰の内容については裁判所の審判権は及ばないため、結局、代表役員の地位の存否も審理、判断することができないことになるからです。このような場合について、裁判所は、「法令の適用によって終局的な解決を図ることができない訴訟として、裁判所法3条にいう『法律上の争訟』に当たらない」としています。
よって、正しい記述である。
ウ:誤
判例は、地方議会議員の「除名」処分については司法審査の対象となることを認めています(最大判昭和35年3月9日民集14巻3号355頁)。
「自律的な法規範をもつ社会ないし団体に在っては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ」るべき事項があるとして、地方議会議員の「出席停止」処分が司法審査の対象とはならないとした最大判昭和35年10月19日民集14巻12号2633頁とは異なります(この違いは、この判決でも、先行する上記の判決に言及して確認されています)。
よって、誤った記述です。
エ:誤
判例は、政党が党員に対してした処分が「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない」としています。
これは、「政党に対しては、高度の自主性と自律権を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない」一方で、政党への加入・脱退の任意性から党員の権利・自由への一定の制約がありうるものであり、「政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決にゆだねる」のが相当であるからです(最判昭和63年12月20日判時1307号113頁)。
よって、誤った記述です。
オ:正
判例は、衆議院の解散のような「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治的判断にゆだねられている」として、衆議院の解散の有効・無効は司法審査の対象とはならないとしています(最大判昭和35年6月18日民集14巻7号1206頁)。
よって、正しい記述です。
参考になった数2
この解説の修正を提案する
前の問題(問2)へ
平成26年度問題一覧
次の問題(問4)へ