司法書士の過去問
平成30年度
午前の部 問1
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問題
平成30年度 司法書士試験 午前の部 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
プライバシーに関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 少年法第61条が禁止する報道に当たるかどうかは、その記事等により、不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断される。
イ 刑事事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的な意義が認められたとしても、ノンフィクション作品において当該刑事事件の当事者について実名を明らかにすることは許されない。
ウ 大学主催の講演会に参加を希望する学生から収集した学籍番号、氏名、住所及び電話番号は、大学が参加者に無断で警察に開示したとしても、プライバシーを侵害するものとはいえない。
エ 住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の氏名、生年月日、性別、住所等の本人確認情報を収集、管理又は利用する行為は、当該住民が同意しない限り許されない。
オ みだりに指紋の押なつを強制されない自由は、在留外国人にも保障される。
ア 少年法第61条が禁止する報道に当たるかどうかは、その記事等により、不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断される。
イ 刑事事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的な意義が認められたとしても、ノンフィクション作品において当該刑事事件の当事者について実名を明らかにすることは許されない。
ウ 大学主催の講演会に参加を希望する学生から収集した学籍番号、氏名、住所及び電話番号は、大学が参加者に無断で警察に開示したとしても、プライバシーを侵害するものとはいえない。
エ 住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の氏名、生年月日、性別、住所等の本人確認情報を収集、管理又は利用する行為は、当該住民が同意しない限り許されない。
オ みだりに指紋の押なつを強制されない自由は、在留外国人にも保障される。
- アイ
- アオ
- イウ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア ○ 判例(損害賠償請求事件、最判平15.3.14)は、「少年法61条が禁止している推知報道かどうかは,その記事等により、不特定多数の一般人が本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断すべき」としています。
イ × 判例(ノンフィクション逆転事件、最判平6.2.8)は、「事件それ自体を公表することによって歴史的又は社会的な意義が認められるような場合には、事件の当事者の実名を明らかにすることが許されないとは言えない」としています。
ウ × 判例(早稲田大学名簿提出事件、最判平15.9.12)は、「大学が主催する講演会に参加を申し込んだ学生の氏名、住所等の情報を警察に開示した行為は、あらかじめ参加申込者の承諾を求めることが困難であったという特別の事情がないという場合には、プライバシーを侵害する不法行為にあたる」としています。
エ × 判例(住基ネット事件、最判平20.3.6)は、「行政機関が住基ネットにより住民の本人確認情報を管理、利用等をする行為は、個人に対する情報をみだりに第三者に開示又は公表しているとは言えず、同意していないとしても、憲法13条により保障された自由を侵害するものではない」としています。
オ ○ 判例(外国人登録法違反事件、最判平7.12.15)は、「国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、憲法13条の趣旨に反して許されず、この自由の保障は在留する外国人に対しても等しく及ぶ」としています。
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02
ア…正しいです。犯行時少年であった者の犯行態様、経歴等を記載した週刊誌(実名は公表していない)は違法であるかについて、判例は、「記事がプライバシーを侵害する内容を含むとしても、記事の掲載によって不法行為が成立するか否かは、被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無等を審理し、個別具体的に判断すべきであり、またプライバシーの侵害については、その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立する」としています(最判平15・3・14)。
イ…誤りです。元陪審員が著作に服役者の実名を使用したのは、プライバシーの侵害にあたるかどうかについて、判例は、「前科等に関わる事実は、それが刑事事件ないし刑事裁判という社会一般の関心あるいは批判の対象となるべき事項に関わるものであるから、事件それ自体を公表することに歴史的または社会的な意義が認められるような場合には、事件の当事者についても実名を明らかにすることが許されないとは言えない」、としています(最判平6・2・8、ノンフィクション『逆転』事件)。したがって、実名を公表することを認めることもありえます。
ウ…誤りです。大学主催の講演会に出席した学生の個人情報を無断で警察に開示した件について、判例は、「本件個人情報は、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となるものであり、同大学は本件個人情報を警察に開示させることをあらかじめ明記したうえで、学生らに開示についての承諾をとることは容易であったと考えられ、プライバシーを侵害するものとして不法行為を構成するものというべきである」としています(最判平15・9・12、早稲田大学講演会名簿提出事件)。
エ…誤りです。行政機関による住基ネットを用いた本人確認情報の管理・利用はプライバシーの侵害にあたるかどうかについて、判例は、住基ネットで使用される氏名、生年月日、性別、住所はいずれも個人の内面に関するような秘匿性の高い情報とはいえず、13条違反ではない」としています(住基ネット事件、最判平20・3・6)。
オ…正しいです。在留外国人が外国人登録用の書類などに指紋の押捺を強制されたことが、憲法13条違反ではないかという訴えについて、判例は、「①指紋それ自体では個人の内心に関する情報となるものではないが、利用方法次第では私生活あるいはプライバシーが侵害されるおそれがあり、国家機関が正当な理由なく押捺を強制することは13条違反である②ただし、本件は外国人登録において居住関係および身分関係を明確にするための最も確実な制度といえ、13条違反ではない」としています(最判平7・12・15)。したがって、当該訴えにおいては違憲ではないとしながらも、在留外国人にも指紋押捺を強制されない自由を認めています。
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03
ア 正しい
判例(最判平成15年3月14日)は、本肢と同様の事案において、「少年法61条が禁止しているいわゆる推知報道に当たるか否かは、その記事等により、不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断すべきである。」としています。
イ 誤り
判例(最判平成6年2月8日)は、本肢と同様の事案において、「ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義、その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。」としています。
判例の立場によれば、前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に劣後するときは、実名を明らかにされることは許されるということになります。
ウ 誤り
判例(最判平成15年9月12日)は、本肢と同様の事案において、「大学が講演会の主催者として学生から参加者を募る際に収集した参加申込者の学籍番号、氏名、住所及び電話番号に係る情報は、参加申込者のプライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。」としています。
エ 誤り
判例(最判平成20年3月6日)は、本肢と同様の事案において、「住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集、管理又は利用する行為は、当該住民がこれに同意していないとしても、憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。」としています。
オ 正しい
判例(最判平成7年12月15日)は、本肢と同様の事案において、「憲法13条は、国民の私生活上の自由が国家権力の行使に対して保護されるべきことを規定していると解されるので、個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有するものというべきであり、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、同条の趣旨に反して許されず、また、右の自由の保障は我が国に在留する外国人にも等しく及ぶと解される。」としています。
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