司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問40

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問題

平成31年度 司法書士試験 午後の部 問40 (訂正依頼・報告はこちら)

裁判によらない訴訟の完結に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、どれか。

ア  提起された訴えが訴えの利益を欠く場合には、訴訟上の和解をしたとしても、当該和解は、無効である。
イ  訴えの取下げは、和解の期日において口頭ですることができる。
ウ  当事者が期日外において裁判所に対し請求の放棄をする旨の書面を提出した場合であっても、その当事者が口頭弁論の期日に出頭してその旨の陳述をしない限り、請求の放棄の効力は生じない。

工  口頭弁論の期日で訴訟上の和解が成立した場合において、錯誤による無効を理由に当該和解の効力を争う当事者は、口頭弁論の期日の指定の申立てをすることができる。

オ  訴えの取下げは、相手方が訴えの却下を求める準備書面を提出した後にあっては、当該相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解:4

ア:誤
訴訟上の和解の要件として、訴訟要件の具備が必要かは明確な判例はありません。
学説上は、不要とする説は、訴訟要件は本案判決の要件であること、訴訟継続を前提としない即決和解(民事訴訟法275条)の場合にも和解調書の効力が認められること(267条)などを根拠とします。訴訟要件の中でも、訴えの利益については、即時確定の利益など、もっぱら被告の利益保護のためのものもあるため、訴訟上の和解が有効であるために必ずしも求められないとする見解も有力です。
したがって、判例の趣旨に照らして、「提起された訴えが訴えの利益を欠く場合には、訴訟上の和解をしたとしても、当該和解は、無効である」とはいえません。
よって、誤った記述です。

イ:正
民事訴訟法261条3項は、「訴えの取下げは、書面でしなければならない。ただし、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)においては、口頭ですることを妨げない」と規定しています。つまり、訴えの取り下げは、原則として書面でしなければならないのですが、和解の期日においては、口頭ですることができるのです。
よって、正しい記述です。

ウ:誤
民事訴訟法266条2項は、「請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる」と定めています。
したがって、当事者が口頭弁論期日に出頭して請求の放棄をした旨の陳述をしなくても、陳述したとみなされて、請求の放棄の効力が生じることがあります。
よって、誤った記述です。

エ:正
判例は、訴訟上の和解が成立した場合にも、訴訟が終了していないことを前提として口頭弁論期日の指定の申立てをして和解の効力を争うことができるとしています(大決昭和6年4月22日民集10巻380頁)。
よって、正しい記述です。

なお、和解無効確認の訴え(大判大正14年4月24日民集4巻195頁)、和解調書による強制執行を回避するための請求異議の訴え(民事執行法35条)の提起(大判昭和14年8月12日民集18巻903頁)などによることも認められています。

オ:誤
民事訴訟法261条2項本文は「訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない」と定めています。
これは、「本案について準備書面」を提出した場合であって、「訴えの却下を求める準備書面」を提出した場合ではありませんので、後者の場合には相手方の同意なく訴えの取り下げをすることができます。
よって、誤った記述です。

参考になった数14

02


正解 4

ア 誤り
訴訟上の和解に訴訟要件の具備は必要ないと解されています。
よって、提起された訴えが訴えの利益を欠く場合であっても、訴訟上の和解が成立した場合には、当該和解は有効です。

イ 正しい
訴えの取下げは、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日において口頭でする場合を除き、書面でしなければなりません(民事訴訟法261条3項)。

ウ 誤り
当事者が期日外において裁判所に対し請求の放棄をする旨の書面を提出した場合、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができます(民事訴訟法266条2項)。
よって、本肢の場合、当事者が口頭弁論の期日に出頭してその旨の陳述をしなくとも、裁判所等がその旨の陳述をしたものとみなせば、請求の放棄の効力は生じます。

エ 正しい
訴訟上の和解が成立した場合において、錯誤による無効を理由に当該和解の効力を争うことの可否について、判例は、「裁判上の和解であっても、要素の錯誤に基づくときには無効となり、訴訟はなお存続する。当事者が和解の無効を主張し期日指定の申立てを行ったときは、口頭弁論を開いて申立ての有無を調査し、判決をもって裁判すべきである(大決昭和6年4月22日)」としています。

オ 誤り
訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じません(民事訴訟法261条2項)。
本肢にいう「訴えの却下を求める準備書面」は、いずれにもあたらないため、相手方の同意を得ることなく、訴えを取り下げることができます。

以上から、正しい選択肢はイとエとなり、4が正解となります。

参考になった数6

03

正解:4

ア:誤
訴訟上の和解をするのに訴訟要件の具備は必要ないとされていますので、提起された訴えが訴えの利益を欠く場合であっても訴訟上の和解は有効です。

イ:正
訴えの取下げは、書面でしなければなりませんが、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日においては、口頭ですることができます(民訴261Ⅲ)。

ウ:誤
請求の放棄又は認諾は、口頭弁論等の期日においてします(民訴266Ⅰ)。また、請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができます(民訴266Ⅱ)。

エ:正
判例は、「裁判上の和解であっても、要素の錯誤に基づくときには無効となり、訴訟はなお存続する。当事者が和解の無効を主張し期日指定の申立てを行ったときは、口頭弁論を開いて申立ての有無を調査し、判決をもって裁判すべきである(大決昭6.4.22)」としています。

オ:誤
訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じません(民訴261Ⅱ本文)。
本肢については、訴えの却下を求める準備書面の提出後であるので、相手方の同意を要しません。

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