司法書士の過去問
平成31年度
午後の部 問42
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問題
平成31年度 司法書士試験 午後の部 問42 (訂正依頼・報告はこちら)
次の対話は、民事執行に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、どれか。
教授:まず、民事調停において当事者間に合意が成立し、これが調書に記載されて調停が成立したときは、その記載は、強制執行をするために必要な債務名義に該当しますか。
学生:ア 該当しません。
教授:では、金銭の支払を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものは、強制執行をするために必要な債務名義に該当しますか。
学生:イ そのような公正証書であれば、その支払の額が明記されておらず、かつ、公正証書の記載から一定の数額を確認、算定することができない場合であっても、強制執行をするために必要な債務名義に該当します。
教授:強制執行の開始には、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が債務者に送達されたことが必要ですか。
学生:ウ 強制執行の開始には、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送逹されたことが必要ですが、執行裁判所の許可を受ければ債務者に対する送達前に強制執行を開始することができます。
教授:確定した執行判決のある外国裁判所の判決は、強制執行をするために必要な債務名義に該当しますか。
学生:工 該当します。
教授:最後に、仮執行の宜言を付した判決を有する金銭債権の債権者が財産開示手続を申し立てることは、認められていますか。
学生:オ 認められていません。
教授:まず、民事調停において当事者間に合意が成立し、これが調書に記載されて調停が成立したときは、その記載は、強制執行をするために必要な債務名義に該当しますか。
学生:ア 該当しません。
教授:では、金銭の支払を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものは、強制執行をするために必要な債務名義に該当しますか。
学生:イ そのような公正証書であれば、その支払の額が明記されておらず、かつ、公正証書の記載から一定の数額を確認、算定することができない場合であっても、強制執行をするために必要な債務名義に該当します。
教授:強制執行の開始には、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が債務者に送達されたことが必要ですか。
学生:ウ 強制執行の開始には、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送逹されたことが必要ですが、執行裁判所の許可を受ければ債務者に対する送達前に強制執行を開始することができます。
教授:確定した執行判決のある外国裁判所の判決は、強制執行をするために必要な債務名義に該当しますか。
学生:工 該当します。
教授:最後に、仮執行の宜言を付した判決を有する金銭債権の債権者が財産開示手続を申し立てることは、認められていますか。
学生:オ 認められていません。
- アイ
- アオ
- イウ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア:誤
債務名義の種類の一つに、確定判決と同一の効力を有するもの(民執22⑦)があります。この確定判決と同一の効力を有するものには、和解調書や認諾調書(民訴267)などがあります。
よって、民事調停において当事者間に合意が成立し、これが調書に記載されて調停が成立したときは、その記載は、強制執行をするために必要な債務名義に該当します
イ:誤
金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(執行証書:民執22⑤)は債務名義になります。
よって、支払の額が明記されておらず、かつ、公正証書の記載から一定の数額を確認、算定することができない場合は債務名義に該当しません。
ウ:誤
強制執行は、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができます(民執29前段)。執行裁判所の許可を受ければ債務者に対する送達前に強制執行を開始することができるとする規定はありません。
エ:正
確定した執行判決のある外国裁判所の判決は、債務名義となります(民執22⑥)。
オ:正 (注1)
執行裁判所は、執行力のある債務名義の正本(債務名義が第22条第2号、第3号の2から第4号まで若しくは第5号に掲げるもの又は確定判決と同一の効力を有する支払督促であるものを除く。)を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければなりません(旧民執197Ⅰ柱書)。
よって、仮執行の宜言を付した判決を有する金銭債権の債権者が財産開示手続を申し立てることは、認められていません。
(注1)
改正により、債務名義の種類にかかわらず、財産開示手続の申立権が認められることになりました。
改正民事執行法(令和2年4月1日施行)
第197条第1項柱書
「執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。」
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02
正解 なし
ア 誤り
強制執行は、債務名義により行われますが、債務名義の一つに確定判決と同一の効力を有するもの(民事執行法22条7号)があります。
本肢にいう和解調書の記載は、確定判決と同一の効力を有します(民事訴訟法267条)。
よって、民事調停において当事者間に合意が成立し、これが調書に記載されて調停が成立したときは、その記載は、強制執行をするために必要な債務名義に該当します。
イ 誤り
金銭の一定の額の支払を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(民事執行法22条5号)は債務名義になります。
よって、支払の額が明記されておらず、かつ、公正証書の記載から一定の数額を確認、算定することができない場合は、強制執行をするために必要な債務名義には該当しません。
ウ 誤り
強制執行は、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができます(民事執行法29条)。
本肢のように、執行裁判所の許可を条件として債務者に対する送達前に強制執行を開始することができる旨の規定はありません。
エ 正しい
債務名義には、確定した執行判決のある外国裁判所の判決も含まれます(民事執行法22条6号)。
オ 誤り
執行裁判所は、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければなりません(民事執行法197条1項)。
本肢にいう「仮執行の宜言を付した判決」は、債務名義に該当するため(民事執行法22条2号)、仮執行の宜言を付した判決を有する金銭債権の債権者が財産開示手続を申し立てることは認められています。
※令和2年4月1日施行の改正民事執行法により、従来は認められていなかった財産開示手続の申立権が、仮執行の宜言を付した判決を有する金銭債権の債権者に対しても認められるようになりました(選択肢オ)。
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03
正解:ありません
(令和元年の民事執行法の一部改正に伴う規定の削除前の規定によれば、正しいものは肢エ・オであり、正解は2です。)
<解説>
ア:誤りです。
調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有します(民事調停法16条)。
裁判上の和解により調書に記載されたときは確定判決と同一の効力を有します(民事訴訟法267条)。
このことから、調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときも、確定判決と同一の効力を有すると言えます。
確定判決と同一の効力を有するものは債務名義に該当します(民事執行法22条⑺)。
よって、本肢の記載は、強制執行をするために必要な債務名義に該当します。
したがって、本肢は誤りです。
イ:誤りです。
公正証書が債務名義として強制執行の対象となるには、①金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求であることと、②債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されている執行認諾約款付の公正証書である必要があります(民事執行法22条⑸)。
よって、金銭の支払を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものであっても、その支払の額が明記されておらず、かつ、公正証書の記載から一定の数額を確認、算定することができない場合には、強制執行をするために必要な債務名義には該当しません。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:誤りです。
強制執行は、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができます(民事執行法29条)。
執行裁判所の許可を受ければ債務者に対する送達前に強制執行を開始することができるわけではありません。
したがって、本肢は誤りです。
エ:正しいです。
確定した執行判決のある外国裁判所の判決は、強制執行をするために必要な債務名義に該当します(民事執行法22条⑹)。
したがって、本肢は正しいです。
オ:誤りです。
従来、仮執行の宜言を付した判決を有する金銭債権の債権者が財産開示手続を申し立てることは、認められていませんでしたが、令和元年の民事執行等の一部改正(令和2年4月1日施行)により、民事執行法197条1項柱書のかっこ書が削除されたため、仮執行の宜言を付した判決を有する金銭債権の債権者は、財産開示請求を申し立てることができるようになりました。
したがって、本肢は誤りです。
(令和元年の民事執行法の一部改正に伴う規定の削除前の規定によれば本肢は正しいです。)
以上により、正しいものは肢エのみであり、正解はありません。
(令和元年の民事執行法の一部改正に伴う規定の削除前の規定によれば、正しいものは肢エ・オであり、正解は2です。)
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