通関士の過去問
第53回(令和元年)
通関書類の作成要領その他通関手続の実務 問52
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問題
通関士試験 第53回(令和元年) 通関書類の作成要領その他通関手続の実務 問52 (訂正依頼・報告はこちら)
次の記述は、輸入通関に関するものであるが、その記述の正しいものはどれか。一つを選び、その番号をマークしなさい。なお、正しい記述がない場合には、「該当なし」をマークしなさい。
- 税関官署の開庁時間以外の時間において、輸入の許可前における貨物の引取りの承認に係る事務の執行を求めようとする者は、あらかじめその旨を税関長に届け出なければならない。
- 課税価格の合計額が20万円以下の輸入貨物については、当該輸入貨物を輸入しようとする者が当該貨物の一部のものに対する関税の率について少額輸入貨物に対する簡易税率(関税定率法別表の付表第2に規定する税率)を適用することを希望する場合には、その一部のものに対する関税の率について当該簡易税率を適用することが認められる。
- 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の規定に基づく関税の譲許の便益の適用を受けるものとして輸入(納税)申告が行われた貨物について、税関長が、当該貨物が当該譲許の便益の適用を受けるための要件を満たしていないことについて輸入者に通知を行った場合において、当該輸入者が直ちに当該申告に係る納付すべき税額を修正する申告(修正申告)を行ったときは、当該修正申告により納付すべき税額に過少申告加算税が課されることはない。
- 外国貨物である関税定率法別表第2208.30号に掲げるウィスキー(アルコール分が50%以上のものであって、2リットル以上の容器入りにしたもの)が、外国貨物を保税蔵置場に置くことの承認を受けて保税蔵置場に置かれている場合において、その承認の時から輸入申告の時までに当該ウィスキーの数量が自然欠減により減少したときであっても、当該ウィスキーの輸入(納税)申告は、当該承認の時の数量により行うものとされている。
- 輸入貨物の品質保持を目的としてコンテナーに入れて輸入される温度記録計であって、反復使用に適することが明らかなものについては、当該輸入貨物の包装材料に当たるものとして、輸入(納税)申告書の一の欄に輸入貨物と一体に記載することにより、輸入申告を行うことが認められている。
- 該当なし
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この過去問の解説 (3件)
01
【解説】
毎年頻出の輸入通関です。内容は文字通り輸入通関にかんすることで多岐にわたり、残念ながら、予想がつけづらく、これを確実に抑えておけば点数が取れるということはありません。総合的に理解を深めて学習していきましょう。
1.正解です。
関税法第98条第1項より、税関官署の開庁時間以外の時間において、税関の事務のうち政令で定めるものの執行を求める場合、予め税関長へ届け出なければいけないとあります。同施行令第87条に、税関の事務のうち政令で定めるものがあり第6項に輸入許可前における貨物の引取りに規定する承認の事務の規定があります。
2.誤りです。
関税定率法第3条の3に携帯品や別送品貨物を除いて、課税標準の合計額が20万円以下の輸入貨物において、輸入しようとする者が当該輸入貨物の全部について別表の付表2の簡易税率を希望しない旨を税関に申し出た時はこの限りではないとあります。従って、全ての簡易税率を希望する旨を申し出ないと簡易税率を適応することはできません。
3.誤りです。
TPP11協定の規定に基づく関税の譲許の便益の適応を受けるものとして納税申告が行われた貨物について、税関長が、当該貨物が当該譲許の便益の適用を受けるための要件を満たしていないことについて輸入者に通知を行った場合において、修正申告を行った場合は過少申告加算税が課されることはないといった例外規定は存在しません。
4.誤りです。
関税法第4条第1項より、外国貨物を保税蔵置場に置くことの承認を受けて保税蔵置場に置かれている場合においての関税を課する場合の基礎となる貨物の性質及び数量は、当該承認を受けるときの現況によるとあります。しかしながら、例外が定められ、同項には保税蔵置場又は総合保税地域に置かれる機関が長期に渡り、その間に欠減が生ずるものとして政令で定めるものに関しては、輸入申告の時の数量によると定められています。関税法施行令第2条第1項第2号に、関税定率表別表第2208.30号に掲げるウィスキーとあるため、本問は誤りとわかります。その他の例外も存在するため確認しておきましょう。
5.誤りです。
関税率表の解釈に関する規則5bにより、反復使用に適するものについては、当該物品に含まれないとされています。従って、反復使用に適することが明らかな温度記録計については、輸入(納税)申告書の一の欄に輸入貨物と一体に記載することにより、輸入申告を行うことが認められていません。
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02
関税法等に規定されている、輸入通関に関する問題です。
正しい内容です。
関税法第98条に、税関官署の開庁時間以外の時間において、税関の事務のうち政令で定めるものの執行を求めようとする者は、あらかじめその旨を税関長に届け出なければならないと規定されております。
誤った内容です。
関税定率表第3条の3、輸入貨物を輸入しようとする者が当該貨物の一部のものに対する関税の率について少額輸入貨物に対する簡易税率を適用することを希望することは認められておりません。貨物の全部のものの関税率について簡易税率を適用することを希望しなければなりません。
誤った内容です。
当該貨物が当該譲許の便益の適用を受けるための要件を満たしていないことについて輸入者に通知を行った場合において、当該輸入者が直ちに当該申告に係る納付すべき税額を修正する申告(修正申告)を行ったときでも、納付すべき税額に過少申告加算税が課されます。
誤った内容です。
外国貨物を保税蔵置場に置くことの承認を受けて保税蔵置場に置かれている場合において、その承認の時から輸入申告の時までに当該ウィスキーの数量が自然欠減により減少したときには、
輸入(納税)申告は、当該承認の時の数量ではなく、輸入申告の時の数量により行うとされております。
関税法施工令第2条に、第2208.30号に掲げるウィスキー(アルコール分が50%以上のものであって、2リットル以上の容器入りにしたもの)と規定されておりますので、条件も併せて確認しておいてください。
誤った内容です。
温度記録計等が、その他の輸入貨物とともに輸入される場合には、原則として、 当該温度記録計等を当該輸入貨物とは別の貨物として輸入(納税)申告する必要があるとされております。
例えば、食品等の品質保持を目的として乾燥剤、吸湿剤、又は保温剤などが当該食品等の包装に同梱等される場合には、通則5⒝の規定を適用し、当該乾燥剤、吸湿剤、又は保温剤などは当該食品等に含まれるものとして、輸入(納税)申告書上、一の欄に一括して記載します。
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03
本問は、輸入通関に関する知識を問う問題です。
正しい
関税法98条1項、関税法施行令87条1項6号の通りです。
関税法98条1項では、「税関官署の開庁時間以外の時間において、税関の事務のうち政令で定めるものの執行を求めようとする者は、あらかじめその旨を税関長に届け出なければならない。」と規定されています。
そして、本項の「政令で定めるもの」については、以下のものが、関税法施行令87条1項で規定されており、本肢の「輸入の許可前における貨物の引取りの承認に係る事務」は6号に挙げられています。
1号:船用品又は機用品の積込みの包括承認に係る事務
2号:外国貨物を置くことの承認に係る事務
3号:保税工場外における保税作業(保税蔵置場、保税工場及び保税展示場についての規定の準用の場合を含む。)の許可に係る事務
3号の2:外国貨物を保税展示場に入れることの承認、保税展示場外における使用の許可に係る事務
4号:保税運送、内国貨物の運送の承認に係る事務
5号:輸出又は輸入の許可(外国貨物の積戻しについて準用する場合を含む。)に係る事務
6号:輸入の許可前における貨物の引取りの承認に係る事務
7号:証明書類の交付に係る事務
誤り
原則と例外が逆になっています。
少額輸入貨物に対する簡易税率については、関税定率法3条の3で規定されています。
輸入貨物の課税標準となる価格の合計額が20万円以下の輸入貨物に対する関税の率は、関税に関する他の法律の規定にかかわらず、原則として、少額輸入貨物に対する簡易税率によることが規定されています(関税定率法3条の3第1項本文)。
ただし、当該輸入貨物を輸入しようとする者(当該輸入貨物が郵便物である場合は、当該郵便物の名宛人)が当該輸入貨物の全部について少額輸入貨物に対する簡易税率の適用を希望しない旨を税関に申し出たときは、少額輸入貨物に対する簡易税率を適用しないことが規定されています(関税定率法3条の3第1項但書)。
誤り
本肢の修正申告は更正予知後になされており、過少申告加算税は免除されません。
過少申告加算税が課されないのは、過少申告が正当な理由によるものと認められる部分がある場合の当該部分と、税関の調査通知よりも前に自主的に修正申告が行われた場合です(関税法12条の2第4項1号、第5項)。
税関の調査通知よりも前に自主的に修正申告が行われた場合に加算税を免除する趣旨は、申告納税制度の普及を図るために自発的な修正申告を奨励するということです。とすれば、更正予知の前に修正申告をした、ということが必要なのであり、必ずしも「調査」という手続が行われたことを要しないと考えられます。過少申告加算税の免除を規定した国税通則法65条6項についての裁決においても、国税通則法65条6項の「「調査」とは課税庁が行う課税標準又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味するものであり、課税庁の証拠書類の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て更正処分に至るまでの思考、判断を含む極めて包括的な概念であり、課税庁が確定申告書を検討して納税者の過少申告を把握し、これを当該納税者に連絡したような場合には「調査があったこと」に該当する」とされています(国税不服審判所平成8年9月30日)。
このことから、本肢の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の規定に基づく関税の譲許の便益の適用を受けるものとして輸入(納税)申告が行われた貨物について、税関長が、当該貨物が当該譲許の便益の適用を受けるための要件を満たしていないことについて輸入者に通知」したことも、上と同様に「申告書を検討して納税者の過少申告を把握し、これを当該納税者に連絡した」もので、「調査」があったものと言えます。
よって、この通知後の修正申告は、更正予知後のものであり、過少申告加算税は免除されません。
誤り
承認を受けて保税蔵置場に置かれている外国貨物についての輸入(納税)申告は、当該承認の時の数量によるのが原則ですが、本肢の「関税定率法別表第2208.30号に掲げるウィスキー(アルコール分が50%以上のものであって、2リットル以上の容器入りにしたもの)」は、「通常保税蔵置場(中略)に置かれる期間が長期にわたり、その間に欠減が生ずるものとして政令で定めるもの」として、除外されています(関税法4条1項1号、関税法施行令2条1項2号)。
「保税蔵置場(中略)に置かれた外国貨物(通常保税蔵置場(中略)に置かれる期間が長期にわたり、その間に欠減が生ずるものとして政令で定めるもの(中略)を除く。)」についての課税の基礎となる性質及び数量は、「保税蔵置場(中略)に置くことが承認された時」の現況によると規定されています(関税法4条1項1号)。
そして、関税法施行令2条1項2号で本肢のウィスキーが該当する「定率法別表第2208.30号に掲げる物品のうちアルコール分が50パーセント以上のもの」が規定されています。
誤り
温度記録計は「包装材料」には当たらず、輸入しようとする場合、申告はその品質保持しようとする輸入貨物とは別に行う必要があります。
関税率表の解釈に関する通則において、「写真機用ケース、楽器用ケース、銃用ケース、製図機器用ケース、首飾り用ケースその他これらに類する容器で特定の物品又は物品のセットを収納するために特に製作し又は適合させたものであつて、長期間の使用に適し、当該容器に収納される物品とともに提示され、かつ、通常当該物品とともに販売されるものは、当該物品に含まれる」と規定されています(関税率表の解釈に関する通則5(a))。
本肢の「温度記録計」はこれに該当しません。
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