賃貸不動産経営管理士の過去問
平成30年度(2018年)
問17

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問題

賃貸不動産経営管理士試験 平成30年度(2018年) 問17 (訂正依頼・報告はこちら)

敷金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 賃貸借契約書に借主からの敷金の相殺について禁止する条項がない場合、借主は契約期間中、敷金返還請求権と賃料債務を相殺することができる。
  • 賃貸借契約書に敷金の返還時期について何らの定めもない場合、借主は敷金の返還を受けるまでの間、建物の明渡しを拒むことができる。
  • 借主の地位の承継があったとしても、特段の事情のない限り、敷金は新借主に承継されない。
  • 賃貸借契約書に敷金によって担保される債務の範囲について何らの定めもない場合、敷金によって担保される借主の債務は賃料債務に限定され、貸主は原状回復費用に敷金を充当することはできない。

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この過去問の解説 (3件)

01

 本問では、賃貸借契約に起因して賃借人が賃貸人に対して負担する債務を担保するために、賃貸借契約に付随して賃借人から賃貸人に差し入れられる敷金の性質が問われています。敷金返還請求権について、判例は、目的物の明渡しまでに賃借人が賃貸人に対して負担した一切の債務を控除してもなお残額があることを条件に、その残額につき発生すると判示しています。つまり、賃借人の賃貸人に対する敷金返還請求権は、賃借人が賃貸人に目的物を返還してはじめて存否・数額が明らかとなります。

肢1 正しいとはいえない
 敷金返還請求権を自働債権とし、賃料債務を受働債権として相殺するためには、相殺の意思表示の時点で既に自働債権たる敷金返還請求権が発生している必要があります。しかし、敷金返還請求権は、賃貸借契約終了後、賃借人が目的物を返還してはじめて発生するわけですから(民法622条の2 第1項第1号)、契約期間中はいまだ自働債権が存在しません。したがって、相殺もできません。

肢2 正しいとはいえない
 敷金返還請求権は、賃借人が目的物を賃貸人に返還してはじめて発生します。つまり、明渡しが先履行であり、敷金の返還と目的物の明渡しは同時履行の関係にはたちません。

肢3 正しい
 敷金は、賃借人が賃貸借契約に起因して賃貸人に対して負担する一切の債務を担保するために差し入れられます。賃借人の地位の承継があった場合に、旧賃借人が差し入れた敷金が、当然に新賃借人という他人の債務まで担保するというのは合理的意思に合致しません。それゆえ、新たな賃借人の債務をも担保するとの趣旨で差し入れた等、特段の事情がない限り、敷金は新賃借人に承継されません。

肢4 正しいとはいえない
 敷金は、賃借人が賃貸人に対して、当該賃貸借契約に起因して賃貸人に損害を被らせないとの趣旨で交付されます。それゆえ、敷金によって担保される債務は賃料債務に限られず、原状回復費用にも敷金を充当することができます。

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02

正解は3です。

1 .誤りです。
 改正民法622条の2第1項1号では、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」敷金が発生するとしました。契約期間中は敷金が発生していません。
また、改正民法622条の2第1項2号では、「賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。」とされています。よって、借主から敷金返還請求権と賃料債務を相殺する事は出来ません。
 
2 .誤りです。
 改正民法622条の2第1項1号では、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」敷金が発生するとしました。つまり、借主は先に明け渡さないと敷金を返してもらえないということが明確になりました。
 
3 .正しいです。
 貸主が変わった時➡新家主に承継される。
借主が変わった時➡原則として、新借主には承継されません。新借主とは改めて敷金の契約をすることになります。(貸主、借主で特別の合意をすれば承継できます。)
(判例)
 
4 .誤りです。
 貸主は、借主が「賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないとき
敷金をその債務の弁済に充てることができます。」この債務とは、支払わなければいけない金銭です。なので、賃料債務、原状回復費用も含みます。(民法621条、民法622条の2)

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03

正しいものは『借主の地位の承継があったとしても、特段の事情のない限り、敷金は新借主に承継されない。』です。

選択肢1. 賃貸借契約書に借主からの敷金の相殺について禁止する条項がない場合、借主は契約期間中、敷金返還請求権と賃料債務を相殺することができる。

誤り。

敷金返還請求権は、賃貸借契約が終了し借主が建物を明渡したときに発生することに加え、

借主は敷金を賃料債務に充てることを請求することができないため、敷金返還請求権と賃料債務を相殺することはできません

選択肢2. 賃貸借契約書に敷金の返還時期について何らの定めもない場合、借主は敷金の返還を受けるまでの間、建物の明渡しを拒むことができる。

誤り。

賃貸借契約書に敷金の返還時期について何らの定めもない場合、明渡しの後、敷金を精算して返還するため、借主は敷金の返還を受けるまでの間、建物の明渡しを拒むことができません。

選択肢3. 借主の地位の承継があったとしても、特段の事情のない限り、敷金は新借主に承継されない。

正しい。

借主の地位の承継があったとしても、特段の事情のない限り、敷金は新借主に承継されません。

選択肢4. 賃貸借契約書に敷金によって担保される債務の範囲について何らの定めもない場合、敷金によって担保される借主の債務は賃料債務に限定され、貸主は原状回復費用に敷金を充当することはできない。

誤り。

賃貸借契約書に敷金によって担保される債務の範囲について何らの定めもない場合、敷金によって担保される借主の債務は賃料債務に限らず、貸主は原状回復費用等に敷金を充当することができます。

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