賃貸不動産経営管理士の過去問
令和5年度(2023年)
問4

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この過去問の解説 (2件)

01

管理受託契約の契約期間中に変更が生じた場合、賃貸住宅管理業者はどのような対応が必要かを確認しておきましょう。

選択肢1. 契約期間中に再委託先を変更したが、賃貸人に変更を通知しなかった。

【不適切】

契約期間中に再委託先を変更した場合、賃貸人に変更した旨を書面又は電磁的方法により通知する必要があります。

選択肢2. 管理受託契約が締結されている賃貸住宅が売却されて賃貸人が変更されたが、当該管理受託契約には変更後の賃貸人に地位が承継される旨の特約があったため、変更後の賃貸人に、管理受託契約の内容を記載した書面を交付しなかった。

【不適切】

管理受託契約に変更後の賃貸人に地位が承継される旨の特約がある場合において、契約期間中に賃貸住宅のオーナーチェンジがあった場合、賃貸住宅管理業者は、賃貸人たる地位が移転することを認識した後、遅滞なく「新たな賃貸人に当該管理受託契約の内容が分かる書類を交付することが望ましい」とされています。

選択肢3. 契約期間中に賃貸住宅管理業者が商号を変更したが、組織運営に変更のない商号変更だったので、賃貸人に対し、その旨を通知しただけで、賃貸人に管理受託契約の締結時に交付する書面を再び交付することはしなかった。

【適切】

契約の同一性を保ったままで契約期間のみを延長することや、組織運営に変更のない商号又は名称等の変更等、形式的な変更と認められる場合は、重要事項説明を省略することができます。

選択肢4. 賃貸住宅管理業法施行前に締結された管理受託契約であったため、それまで契約の事項を記載した書面を交付していなかったが、管理業務の報酬額を変更するにあたり、賃貸人に変更後の報酬額のみを記載した書面を交付した。

【不適切】

賃貸住宅管理業法施行前に締結された管理受託契約であり、管理受託契約締結時書面を交付していない場合には、管理受託契約変更契約を締結したときは、変更事項だけでなく、全ての事項について、管理受託契約締結時書面を交付する必要があります。

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02

この問題は、「管理受託契約の契約期間中に変更が生じた場合の賃貸住宅管理業者の対応」に関する知識を問うものです。

 

賃貸住宅管理業法では、管理受託契約の内容に変更が生じた場合、賃貸人の権利を保護し、透明性のある管理業務を行うため、賃貸人に対して適切な通知や書面の交付を行うことが求められています。変更の内容や重要性に応じて、単なる通知で済む場合と、新たな書面の交付が必要な場合があります。また、法律の施行前後で対応が異なる場合もあるため、状況に応じた適切な判断が求められます。

 

このため、管理受託契約の変更時における賃貸住宅管理業者の適切な対応について、シチュエーションに応じて整理しておくことが重要です。

 

参考文献)
〇管理受託契約重要事項説明書 <記載例> 
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001405305.pdf
〇賃貸住宅管理業法 FAQ集(令和6年6月11日時点版) 
https://www.zennichi.or.jp/wp-content/uploads/2022/06/641d2fedbe72728459ec0a9d2f362778.pdf
〇賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方(令和5年3月31日施行)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001474894.pdf

選択肢1. 契約期間中に再委託先を変更したが、賃貸人に変更を通知しなかった。

【不適切です】


この選択肢は「再委託先の情報は、管理受託契約重要事項説明事項の一つである」ことがポイントです。

 

再委託先の変更は管理受託契約の重要事項説明事項の変更に当たります。賃貸住宅管理業法では、重要事項説明事項を変更した場合、賃貸人に対して遅滞なく通知する必要があります。通知を行わない場合、法令違反となる可能性があります。ただし、「賃貸住宅管理業法 FAQ集(令和6年6月11日時点版)‐事業関連(受託管理)」(以下、「FAQ集‐事業関連(受託管理)」と称します)の(2)No.15に「重要事項説明時から再委託先が変更となった場合、再委託先の変更は形式的な変更と考えられるため、当該変更が生じた場合に改めて重要事項説明を実施する必要はありませんが、再委託先が変更する度ごとに書面又は電磁的方法により賃貸人に知らせる必要があります。」と記載があります。このため、賃貸住宅管理業者は、管理受託契約の相手方である賃貸人に対し、再委託先を変更する度に、遅滞なく、その旨を通知する必要があります。

 

従って、この選択肢は不適切な記述と言えます。

選択肢2. 管理受託契約が締結されている賃貸住宅が売却されて賃貸人が変更されたが、当該管理受託契約には変更後の賃貸人に地位が承継される旨の特約があったため、変更後の賃貸人に、管理受託契約の内容を記載した書面を交付しなかった。

【不適切です】

 

この選択肢は、「新しい賃貸人が契約内容を正確に理解し、適切に管理業務が継続できるようにする」ことががポイントです。

 

変更後の賃貸人に対して管理受託契約の内容を記載した書面の交付は、新しい賃貸人が契約内容を正確に理解し、適切に管理業務を継続するための趣旨です。また、「FAQ集‐事業関連(受託管理)」の(2)No.16に「賃貸人変更が発生した場合、契約内容が同一であっても、新しい賃貸人に、遅滞なく、重要事項説明と書類交付を行うことが望ましい。また、承継されない場合は、新規契約となり重要事項説明と書類交付が必要となる」と記載があります。このため、賃貸人が変更された場合、特約の有無にかかわらず、管理受託契約の内容を記載した書面を交付する必要があります。

 

従って、この選択肢は不適切な記述と言えます。

選択肢3. 契約期間中に賃貸住宅管理業者が商号を変更したが、組織運営に変更のない商号変更だったので、賃貸人に対し、その旨を通知しただけで、賃貸人に管理受託契約の締結時に交付する書面を再び交付することはしなかった。

【適切です】

 

この選択肢は、「組織運営に変更のない商号変更は、軽微な変更である」ことががポイントです。

 

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方(令和5年3月31日施行)の第13条関係1、及び、「FAQ集‐事業関連(受託管理)」の(2)No.13に、「契約の同一性を保ち契約期間のみの延長や、組織運営に変更のない商号又は名称等の変更等、形式的な変更は、管理受託契約重要事項説明は行わなくてもて差し支えない。」と記載があります。これらの変更は、軽微な契約変更と考えられるため、通知によって賃貸人に適切に情報が伝わることから、賃貸人に対して変更の通知を行えば十分であり、管理受託契約の締結時に交付する書面を再び交付する必要はありません。

 

従って、この選択肢は適切な記述と言えます。
 

選択肢4. 賃貸住宅管理業法施行前に締結された管理受託契約であったため、それまで契約の事項を記載した書面を交付していなかったが、管理業務の報酬額を変更するにあたり、賃貸人に変更後の報酬額のみを記載した書面を交付した。

【不適切です】

 

この選択肢は、「契約内容の変更の場合、全ての重要事項の説明と書面の交付が必要である」ことががポイントです。

 

「FAQ集‐事業関連(受託管理)」の(2)No.13に、「賃貸住宅管理業法施行前に締結された管理受託契約で、重要事項について契約締結時書面の交付を行っていない場合は、変更のあった事項のみならず重要事項について契約締結時書面の交付を行う必要がる」と記載があります。このため、賃貸住宅管理業法の施行前に締結された管理受託契約について契約内容を変更しなければ、改めて重要事項説明等を行う必要はありません。しかし、管理業務の報酬額の変更等、一部でも契約変更を行う場合は、重要事項の全てを説明し、変更契約の締結後、書面の交付が必要になります。

 

従って、この選択肢は不適切な記述と言えます。

 

なお、賃貸住宅管理業法は、2021年6月15日に完全施行されました。

まとめ

賃貸住宅管理業法では、管理受託契約の内容に変更が生じた場合、賃貸人の権利を保護し、透明性のある管理業務を行うため、賃貸人に対して適切な通知や書面の交付を行うことが求められることを理解しましょう。

 

管理受託契約の契約期間中に変更が生じた場合、以下の点を注意することが重要です:

・再委託先の変更など重要な変更は、必ず賃貸人に通知する必要があります。
・賃貸人が変更された場合は、新しい賃貸人に契約内容を記載した書面を交付する必要があります。
・軽微な変更(組織運営に影響のない商号変更など)の場合は、通知のみで十分です。
・法施行前の契約でも、重要な変更がある場合は全ての契約事項を記載した書面を交付する必要があります。

 

賃貸人との信頼関係を維持し、透明性のある管理業務を行うためにも、変更時の適切な情報提供は重要です。

実務においては、変更の内容を慎重に判断し、適切な対応を心がけましょう。
 

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