賃貸不動産経営管理士の過去問
令和5年度(2023年)
問9
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問題
賃貸不動産経営管理士試験 令和5年度(2023年) 問9 (訂正依頼・報告はこちら)
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」(国土交通省住宅局平成 23 年8月。以下、各問において「原状回復ガイドライン」という。)に関する次の記述のうち、不適切なものの組合せはどれか。
ア 原状回復ガイドラインによれば、賃借人が天井に直接つけた照明器具のビス穴の跡の原状回復費用は、賃借人の負担とはならない。
イ 原状回復ガイドラインによれば、飼育ペットによる臭いの原状回復費用は、無断飼育の場合を除き、賃借人の負担とはならない。
ウ 原状回復ガイドラインによれば、賃借人が設置した家具によるカーペットのへこみや設置跡の原状回復費用は、賃借人の負担とはならない。
エ 原状回復ガイドラインによれば、台所、トイレの消毒の費用は、賃借人の負担とはならない。
ア 原状回復ガイドラインによれば、賃借人が天井に直接つけた照明器具のビス穴の跡の原状回復費用は、賃借人の負担とはならない。
イ 原状回復ガイドラインによれば、飼育ペットによる臭いの原状回復費用は、無断飼育の場合を除き、賃借人の負担とはならない。
ウ 原状回復ガイドラインによれば、賃借人が設置した家具によるカーペットのへこみや設置跡の原状回復費用は、賃借人の負担とはならない。
エ 原状回復ガイドラインによれば、台所、トイレの消毒の費用は、賃借人の負担とはならない。
- ア、イ
- ア、ウ
- イ、エ
- ウ、エ
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題は、原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)(以下、「原状回復ガイドライン」と称します。)における賃借人の負担範囲に関する理解を問うものです。
「原状回復ガイドライン」は、賃貸住宅の退去時のトラブル防止と解決を目的として平成10年に初版が発表され改訂を重ねています(最新版は、平成23年08月)。構成は、ガイドライン本体、トラブル解決制度、Q&A、判例動向、および参考資料から成っています。
ガイドラインでは、
①原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義しています。
②賃借人の負担について、建物・設備等の経過年数を考慮することとし、同じ損耗等であっても、経過年数に応じて負担を軽減する考え方を採用しています。
つまり、このガイドラインでは、「通常の使用による損耗等」と「故意・過失による損傷等」又は「善管注意義務違反による損耗等」に区別し、前者は賃貸人負担、後者は賃借人負担としています。各選択肢は、具体的な事例における費用負担の判断を示しています。正しい判断をするためには、通常の使用による損耗なのか、賃借人の故意・過失による損傷なのか、を総合的に考慮する必要があります。
(参考文献)
〇原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
ア【不適切です】
この選択肢は、「賃借人が設置した照明器具のビス穴は、通常の使用による損耗を超えると判断される」ことがポイントです。
賃借人が設置した照明器具のビス穴については、「あらかじめ設置された照明器具用コンセントを使用しなかった場合には、通常の使用による損耗を超えると判断されることが多いと考えられる。」(原状回復ガイドライン-別表1 損耗・毀損の事例区分)と記載があります。このため、修繕費用は賃借人の負担となります。
従って、この選択肢は不適切です。
なお、「賃借人がエアコンやテレビ等の設置のためにつけた壁やビス穴・跡は、一般的な生活をしていくうえで必需品になってきており、その設置によって生じたビス穴等は通常の使用による損耗と考えられる。」(原状回復ガイドライン-別表1 損耗・毀損の事例区分)と記載があります。このため、修繕費用は賃貸人の負担となります。
イ【不適切です】
この選択肢は、「飼育ペットによる臭いは、通常の使用による損耗とみなされない」ことがポイントです。
飼育ペットによる柱等のキズ・臭い は、「特に、共同住宅におけるペット飼育は未だ一般的ではなく、ペットの躾や尿の後始末などの問題でもあることから、ペットにより柱、クロス等にキズが付いたり臭いが付着している場合は賃借人負担と判断される場合が多いと考えられる。なお、賃貸物件でのペットの飼育が禁じられている場合は、用法違反にあたるものと考えられる。」(原状回復ガイドライン-別表1 損耗・毀損の事例区分)と記載があります。また、ペットの飼育が認められている場合でも、柱等のキズの修繕や臭いの除去に要する費用は賃借人の負担となります。
従って、この選択肢は不適切です。
ウ【適切です】
この選択肢は、「設置したことだけによるへこみ、跡は通常の使用による損耗とみなされる」ことがポイントです。
家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡は、「家具保有数が多いという我が国の実状に鑑みその設置は必然的なものであり、設置したことだけによるへこみ、跡は通常の使用による損耗ととらえるのが妥当と考えられる。」(原状回復ガイドライン-別表1 損耗・毀損の事例区分)と記載があります。このため、修繕費用は賃貸人の負担となります。
従って、この選択肢は適切です。
ただし、引越作業で生じたひっかきキズや畳やフローリングの色落ちは賃借人の善管注意義務違反または過失、落書き等は、故意による毀損と考えられます。このため、故意・過失による損傷と考えられ、修繕費用は賃借人の負担となります。
エ【適切です】
この選択肢は、「入居者を確保するための化粧直し、グレードアップの要素があるものは、賃貸人の負担になる」ことがポイントです。
台所、トイレの消毒は、次の入居者を確保するための化粧直し、グレードアップの要素があるものです。「日常の清掃と異なり、賃借人の管理の範囲を超えているので、賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。」(原状回復ガイドライン-別表1 損耗・毀損の事例区分)と記載があります。このため、費用は賃貸人の負担となります。
従って、この選択肢は適切です。
原状回復費用の負担については、「故意・過失による損傷・毀損」や「善管注意義務違反」又は「その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」であるかにより判断されます。
賃借人の負担は、損耗等(賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損)であるか否かがポイントとなります。つまり、これらのポイントに該当しない場合は、賃貸人の負担になります。また、賃借人の負担は、経過年数に応じて負担を軽減する考え方を採用していることがポイントとなります。
これらのポイントを押さえておくことで、管理受託契約における定期報告の適切な実施方法を理解し、実務に活かすことができます。また、類似の問題にも対応できるようになります。
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02
台所、トイレの消毒の費用は、賃借人の負担とはならない。「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」の内容を確認しておきましょう。
ア
【不適切】
賃借人が天井に直接つけた照明器具のビス穴は、通常の使用による損耗を越えると判断され、賃借人の負担となります。
イ
【不適切】
飼育ペットによる臭いの原状回復費用は、賃借人の負担となります。
ウ
【適切】
賃借人が設置した家具によるカーペットのへこみや設置跡の原状回復費用は、賃借人の負担とはなりません。
エ
【適切】
台所、トイレの消毒の費用は、賃借人の負担とはなりません。
よって、不適切なものの組み合わせは「ア、イ」です。
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