賃貸不動産経営管理士の過去問
令和5年度(2023年)
問10
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問題
賃貸不動産経営管理士試験 令和5年度(2023年) 問10 (訂正依頼・報告はこちら)
原状回復ガイドラインに関する次の記述のうち、不適切なものはいくつあるか。
ア 賃借人が6年間入居後、退去の際に壁クロスに落書きを行った場合、賃借人の負担は残存価値の1円となる。
イ 賃借人の過失により襖紙の張り替えが必要となった場合、6年で残存価値1円となるような直線を想定し、負担割合を算定する。
ウ 賃借人の過失によりフローリング床全体の張り替えが必要となった場合、経年変化を考慮せず、賃借人の負担となる。
エ 賃借人の過失によりクッションフロアの交換が必要になった場合、経年変化を考慮せず、賃借人の負担となる。
ア 賃借人が6年間入居後、退去の際に壁クロスに落書きを行った場合、賃借人の負担は残存価値の1円となる。
イ 賃借人の過失により襖紙の張り替えが必要となった場合、6年で残存価値1円となるような直線を想定し、負担割合を算定する。
ウ 賃借人の過失によりフローリング床全体の張り替えが必要となった場合、経年変化を考慮せず、賃借人の負担となる。
エ 賃借人の過失によりクッションフロアの交換が必要になった場合、経年変化を考慮せず、賃借人の負担となる。
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題は、原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)(以下、「原状回復ガイドライン」と称します。)における賃借人の負担範囲に関する理解を問うものです。
「原状回復ガイドライン」は、賃貸住宅の退去時のトラブル防止と解決を目的として平成10年に初版が発表され改訂を重ねています(最新版は、平成23年08月)。構成は、ガイドライン本体、トラブル解決制度、Q&A、判例動向、および参考資料から成っています。
ガイドラインでは、
①原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義しています。
②賃借人の負担について、建物・設備等の経過年数を考慮することとし、同じ損耗等であっても、経過年数に応じて負担を軽減する考え方を採用しています。
つまり、このガイドラインでは、「通常の使用による損耗等」と「故意・過失による損傷等」、を区別し、前者は賃貸人負担、後者は賃借人負担としています。加えて、経年劣化を考慮しなければなりません。
各選択肢は、具体的な事例における費用負担の判断を示しています。正しい判断をするためには、通常の使用による損耗なのか、賃借人の故意・過失による損傷なのか、経年劣化を含めて総合的に考慮する必要があります。
(参考文献)
〇原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
ア【不適切です】
この選択肢は、「落書きは、通常の使用の範囲を超える損耗・毀損と判断される」ことがポイントです。
通常の使用の範囲を超える損耗について、「経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがある。」(原状回復ガイドライン-3賃借人の負担について(2)① 経過年数、別表1 損耗・毀損の事例区分(部位別)一覧表 )と記載があります。このため、賃借人が行った落書きは、通常の使用の範囲を超える損耗とみなされ、賃借人が原状回復費用を負担すべきです。
なお、原状回復費用の負担割合を耐用年数に基づいて算出する計算方法は、 あくまで、設備など、減価償却の対象となるものについてであり、通常の使用の範囲を超える損耗とみなされ場合には適用されません。
したがって、この選択肢は不適切です。
イ【不適切です】
この選択肢は、「襖紙は、消耗品であるため、減価償却は適用されない」ことがポイントです。
襖紙や障子紙、畳表といったものは、消耗品としての性格が強く、毀損の軽重に関わらず価値の減少が大きいため、減価償却資産の考え方を取り入れることにはなじまないからです。 そのため、経過年数を考慮せず、張替え等の費用について毀損等を発生させた賃借人の負担とするのが妥当であると考えられています(原状回復ガイドライン-3賃借人の負担について(2)③ 経過年数(入居年数)を考慮しないもの、別表2 賃借人の原状回復義務等負担一覧表)。
なお、原状回復費用の負担割合を耐用年数に基づいて算出する計算方法は、 あくまで、設備など、減価償却の対象となるものについてであり、消耗品には適用されません。
したがって、この選択肢は不適切です。
ウ【不適切です】
この選択肢は、「賃借人の過失によるフローリング床全体の張り替え費用は、経過年数を考慮する」ことがポイントです。
この選択肢は、賃借人の過失によりフローリング床全体の張り替えは、故意・過失による損傷等と判断されます。このため原状回復費用は賃借人の負担になりますが、賃借人の負担を軽減するため、建物の価値は時間経過とともに減少することを踏まえ、経過年数を考慮して計算されます。つまり、フローリング全体を張り替える場合、賃借人の故意・過失による損傷である場合は、その損傷部分に対する費用負担が、経過年数を考慮した上で計算されます(原状回復ガイドライン-3賃借人の負担について(2)③経過年数(入居年数、別表2 賃借人の原状回復義務等負担一覧表)を考慮しないもの)。
したがって、この選択肢は不適切です。
エ【不適切です】
この選択肢は、「賃借人の過失によるクッションフロアの交換は、経年変化を考慮する」ことがポイントです。
この選択肢は、賃借人の過失によりフローリング床全体の張り替えは、故意・過失による損傷等と判断されます。このため原状回復費用は賃借人の負担になりますが、賃借人の負担を軽減するため、建物の価値は時間経過とともに減少することを踏まえ、経過年数を考慮して計算されます。つまり、クッションフロアは、「部屋全体を交換する場合には、経過年数を考慮し、6年で残存価値が1円になるような負担割合で、賃借人と賃貸人の費用負担割合を決定すると明記されています(原状回復ガイドライン-別表2 賃借人の原状回復義務等負担一覧表)。 したがって、賃借人の過失によってクッションフロア全体を交換する場合でも、入居期間に応じて賃借人の負担が軽減します。
したがって、この選択肢は不適切です。
一方で、クッションフロアの一部にのみ損傷があり、その部分のみを修繕する場合について、原状回復ガイドラインには記載がありません。 この場合、フローリングと同様の扱いが想定されます。フローリングの部分補修の場合は、経過年数を考慮せず、毀損等を発生させた賃借人の負担となると考えられます。
原状回復ガイドラインは、原状回復義務に関するガイドラインや判例集となっており、賃貸人と賃借人の負担割合について、具体的な事例を示しながら解説しています。
特に、別表2「賃借人の原状回復義務等負担一覧表」では、個々の損耗事例について、
・負担内容(毀損部分の補修、設備の交換など)
・賃借人の負担単位(畳1枚単位、㎡単位など)
・経過年数等の考慮(考慮する、考慮しない)
などを具体的に示しています。
今回の問題は、賃貸住宅の退去時における原状回復義務について、「賃借人の過失による損耗等のうち、具体的にどのような場合に、原状回復ガイドラインが定める「経過年数による負担割合」を適用するのか」 を問うものです。
・賃借人の故意による「落書き」は、通常の使用の範囲を超える損耗ため経過年数を考慮せずに賃借人が原状回復費用を負担する。
・襖紙の張替は、消耗品のため経過年数を考慮しない。
・フローリング床全体の張替えについて、経過年数を考慮して賃借人負担を軽減する。
・賃借人の過失によるクッションフロアの交換は、経過年数を考慮して賃借人負担を軽減する。
ことがポイントとなります。
これらのポイントを押さえておくことで、原状回復に関する適切な判断ができるようになり、実務にも活かすことができます。また、類似の問題にも対応できるようになります。
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02
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインの内容を確認しておきましょう。
ア 【不適切】
壁クロスは耐用年数を超え、残存価値が1円となっていても、継続して使用可能な設備を破損した場合は、本来機能していた状態まで戻す費用を負担する必要があります。
イ 【不適切】
襖紙は消耗品と同じ扱いとされ、経過年数を考慮しません。
ウ 【不適切】
フローリング床全体の張り替えが必要な場合は、当該建物の耐用年数から負担割合を算定します。
エ 【不適切】
カーペットやクッションフロアは耐用年数6年として負担割合を算定します。
したがって、不適切なものは4つとなります。
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