行政書士の過去問
平成30年度
法令等 問21
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問題
行政書士試験 平成30年度 法令等 問21 (訂正依頼・報告はこちら)
道路用地の収用に係る損失補償に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 土地を収用することによって土地所有者が受ける損失は、当該道路を設置する起業者に代わり、収用裁決を行った収用委員会が所属する都道府県がこれを補償しなければならない。
- 収用対象となる土地が当該道路に関する都市計画決定によって建築制限を受けている場合、当該土地の権利に対する補償の額は、近傍において同様の建築制限を受けている類地の取引価格を考慮して算定した価格に物価変動に応ずる修正率を乗じて得た額となる。
- 収用対象の土地で商店が営まれている場合、商店の建築物の移転に要する費用は補償の対象となるが、その移転に伴う営業上の損失は補償の対象とはならない。
- 収用対象とはなっていない土地について、隣地の収用によって必要となった盛土・切土に要する費用は損失補償の対象になるが、それにより通路・溝等の工作物が必要となったときは、当該工作物の新築に係る費用は補償の対象とはならない。
- 収用対象の土地の所有者が収用委員会による裁決について不服を有する場合であって、不服の内容が損失の補償に関するものであるときは、土地所有者が提起すべき訴訟は当事者訴訟になる。
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この過去問の解説 (4件)
01
土地を収用し、または使用することによって土地所有者および関係人が受ける損失は、起業者が補償しなければなりません(土地収用法68条)。
2.誤
近傍において同様の建築制限を受けている類地の取引価格を考慮するのではなく、近隣類地の取引価格等を考慮します(土地収用法71条)。
3.誤
営業上の損失も補償しなければなりません(土地収用法88条)。
4.通路、溝、垣、さくその他の工作物を新築し、改築し、増築し、もしくは修繕する場合は、費用の全部または一部を補償しなければなりません(土地収用法93条1項前段)。
5.正
収用委員会の裁決のうち損失補償に関する訴えは、形式的当事者訴訟(行訴法4条前段)です。
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02
憲法第29条3項の
「私有財産は、正当な補償の下に、
これを公共のために用ひることができる。」
の規定を憲法上の根拠に、
土地収用法に基づいてなされています。
1
誤り。
土地収用法第46条の2第1項は、
「土地所有者又は土地に関して権利を有する関係人
は・・・起業者に対し、
土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する
補償金の支払いを請求することができる。」
と定めています。
従って、収用委員会が所属する都道府県が
これを補償しなければならない、
というのは誤りです。
2
誤り。
本肢の素材の最高裁判例昭和48年10月18日判決
(行政判例百選Ⅱ・250事件)は
「被収用地については‥建築制限が課せられているが‥
土地収用における損失補償の趣旨からすれば
被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき
相当な価格とは、被収用地が、
右にような建築制限を受けていないとすれば、
裁決時において有するであろうと認められる価格
を言うと解すべき」と判示しています。
従って、肢2中の
「近傍において同様の建築制限を受けている類地の
取引価格を考慮し」
という記述は誤りです。
3
誤り。
土地収用法第88条は、
「・・営業上の損失・・は、補償しなければならない。」
と定めています。
4
誤り。
土地収用法第75条は、
「同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を
収用・・することに因って、
残地に通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の
新築、改築、増築若しくは修繕・・をする必要が
生じるときは、
これに要する費用を補償しなければならない。」
と定めています。
因みに、法75条にいう補償を通称「みぞかき補償」
というそうです。
5
正しい。
行政事件訴訟法第4条は、当事者訴訟について
「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分
又は裁決に関する訴訟で法令により
その法律関係の当事者の一方を被告とするもの」
と定めています。
つまり、当事者訴訟は法定が求められています。
この点、土地収用法第133条2項及び3項は、
「収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴え」
について裁決書の送達を受けてから六月以内に
起業者を被告として訴えるべき旨定めています。
従って、肢5にいう訴訟は当事者訴訟に当たります。
以上より、本問は肢5が正答になります。
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03
もっとも、法律に担保されているからといって、その土地を無償で収用するわけにはいかず、何らかの補償が必要となります。
①誤り
収用にかかる土地所有者及び関係人が受ける損失は、起業者が補償しなければなりません(68条)。
②誤り
「収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額(71条)」と規定されています。
③誤り
補償の対象について、移転に伴う営業上の損失(=事業縮小・廃止など)についても認められます(88条)。
④誤り
75条は、「土地の一部を収用し、又は使用することに因つて、残地に通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要が生ずるときは、これに要する費用を補償しなければならない」と規定しています。
⑤正解
正しい記述です。
したがって、⑤が正解となります。
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04
道路用地の収容に係る損失補償に関する設問です。
1× 土地収用法68条は「土地を収用し、又は使用することに因つて土地所有者及び関係人が受ける損失は、起業者が補償しなければならない。」と定めているため、誤りです。
2× 裁判所は、「土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者に対し土地収用法七二条によつて補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべき」(最判S48.10.18)としていますので、誤りです。
同法72条を引用します。「前条の規定は、使用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額について準用する。この場合において、同条中『近傍類地の取引価格』とあるのは、『その土地及び近傍類地の地代及び借賃』と読み替えるものとする。」
3× 同法77条は「収用し、又は使用する土地に物件があるときは、その物件の移転料を補償して、これを移転させなければならない。この場合において、物件が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その所有者は、その物件の全部の移転料を請求することができる。」と規定しており、同法88条は「第七十一条、第七十二条、第七十四条、第七十五条、第七十七条、第八十条及び第八十条の二に規定する損失の補償の外、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することに因つて土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。」としています。よって、補償の対象としないという肢3は誤りです。
4× 同法93条1項前段は「土地を収用し、又は使用(第百二十二条第一項又は第百二十三条第一項の規定によつて使用する場合を含む。)して、その土地を事業の用に供することにより、当該土地及び残地以外の土地について、通路、溝、垣、さくその他の工作物を新築し、改築し、増築し、若しくは修繕し、又は盛土若しくは切土をする必要があると認められるときは、起業者は、これらの工事をすることを必要とする者の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならない。」としていますので、補償の対象としないという肢4は誤りです。
5〇 同法133条3項は、「前項の規定による訴えは、これを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければならない。」としています。また、行政事件訴訟法では、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟を「当事者訴訟」と定義している(行政事件訴訟法条)ことから、肢5で土地所有者が提起すべき訴訟は、当事者訴訟であることが分かります。
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