個々の事例が「保育所保育指針」第1章「総則」、第2章「保育の内容」に照らして、保育士として適切な対応であるか否かを問う問題です。
子どもが何歳児であるかに注意しながら、問題を見ていきましょう。
*******************************
A:不適切な対応です。
「保育所保育指針」第2章「保育の内容」の「1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容」によると、1~3歳未満児に対する保育では「保育所の生活の仕方に慣れ」、「保育士等の愛情豊かな受容の下で、安定感をもって生活をする」ことを目標としています。
一番大切なのは、保育所での生活にまだ十分慣れておらず、「お父さんと離れるのが不安だ、寂しい」という2歳児の気持ちを愛情深く受け止め、安心させることです。
親と離れるのを嫌がる子どもは、分離不安を感じています。これは子どもであれば誰もが抱えているものであり、成長過程におけるとても大切な感情です。設問のような、羞恥心を煽る言葉は子どもの自尊心を深く傷つけるものであり、不適切な言葉がけです。
B:不適切な対応です。
「保育所保育指針」第2章「保育の内容」の「1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容」によると、「食事、排泄(中略)など、 生活に必要な基本的な習慣については、一人一人の状態に応じ、落ち着いた雰囲気の中で行うようにし、子どもが自分でしようとする気持ちを尊重すること」とあります。
排泄の間隔やタイミングは子どもによって異なり、それを尊重することが大切です。自分で意思表示をしてトイレに行くことのできる2歳児が「今はトイレに行きたくない」と言っているのに、無理やり行かせるのは不適切です。
C:不適切な対応です。
「保育所保育指針」第2章「保育の内容」の「3歳以上児の保育に関わるねらい及び内容」によると、「身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排せつなどの生活に必要な活動を自分でする」、「保育士等や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ」とあります。
こぼすという理由で、保育士が3歳児の食事の仕方を過度にコントロールするのは、「自分で食べる」という行為を妨げるものであり、適切な対応とは言えません。「食べることを楽しむ」という上でも問題があります。
D:不適切な対応です。
「保育所保育指針」第2章「保育の内容」の「3歳以上児の保育に関わるねらい及び内容」によると、「保育所における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動する」とあります。
「食事の時間に向けて片付けをする」という、見通しをもって行動し、生活の場を整えるという行為は、そのやり方や必要性に気付き、何度も体験を繰り返すことによって身につくものです。
また、家庭での生活経験にもよる部分があるので、家庭との連携を密にしながら指導していくことが大切です。
4歳児に「片付けをしないならご飯食べられないからね」という、強い不安や強迫観念を与える言葉で指導するのは、子どもが正しい習慣を身につけようとする意欲を妨げるものであり、不適切です。
E:適切な対応です。
「保育所保育指針」第2章「保育の内容」の「3歳以上児の保育に関わるねらい及び内容」によると、「健康な生活のリズムを身に付ける」「友達と楽しく生活する中できまりの大切さに気付き、守ろうとする」とあります。
健康な生活のリズムを身につけさせる過程では、一人ひとりの持つ生活のリズムが異なることに配慮し、家庭との連携を図ることが大切です。また、本来は午睡の時間であることから、他の友達の睡眠を妨げないように「静かに」遊ぶという配慮をさせることも5歳児には必要です。よって、適切な対応と言えます。