公立学校教員の過去問
平成28年度(H29年度採用)
共通問題 問21

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問題

公立学校教員採用選考試験(教職教養) 平成28年度(H29年度採用) 共通問題 問21 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、下の発達の要因についての学説ア・イのいずれかに関する研究例である。この研究例が示す発達の要因についての学説と、それを提唱した人物を下のA~Cのうちから選んだ組合せとして適切なものは、下のうちのどれか。

一卵性双生児の兄弟X児とY児に階段上りの訓練を実施した。X児には、生後46週間目から6週間にわたって階段上りの訓練を実施した。この時点で訓練を受けていないY児は、訓練を受けたX児より階段上りに2倍近くの時間がかかった。しかしY児は、53週間目から2週間の訓練で、X児とほとんど変わらない速さで階段を上れるようになった。

ア  人間の資質が発現するためには環境の影響が必要であるが、心身の特性の発達に影響する環境条件は心身の特性の種類によって異なり、環境条件が一定の水準を超えた楊合には、心身の特性は正常に発達していくとする環境閾値説

イ  学習を成立させるためには、心身の機能が成熟し、学習を成立させるための準備状態が整う必要があり、準備状態が整う以前の学習は効率が悪く、たとえ多くの訓練を行ってもその効果はあまり期待できないとする成熟優位説


A  ゲゼル
B  ジェンセン
C  シュテルン
  • ア - A
  • ア - B
  • イ - A
  • イ - B
  • イ - C

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この過去問の解説 (3件)

01

正答は 3 です。

発達の要因における各説の提唱者は以下の通りです。
・成熟優位説(イ):ゲゼル(A) 
 ⇔・環境優位説:ワトソン
・環境閾値説(ア):ジェンセン(B)
・輻輳説:シュテルン(C)

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02

正解は3です。

理論の関連からイについて先に説明します。

イ:成熟優位説
成熟優位説はゲゼル(A)により提唱された理論で、人の発達を成熟という生物学的な観点からとらえようとするものです。この理論のキーワードとして、学習を行うための発達の準備状態のことを指す「レディネス」という言葉があります。
この枠組みで見ると、X児の訓練した生後46週間目から6週間は階段の登り降り動作に対するレディネスが整っていない状態であるが、Y児の訓練した53週間目から2週間は身体的な発達がすすむことで階段の登り降り動作に対するレディネスが整ったため、動作の習得ができたと考えることができます。
ちなみに、この成熟優位説と反対の思想がワトソンが提唱した「環境優位説」です。この立場では、教育や学習は早く行うほど良いと考えられていたため、この一卵性双生児の兄弟の訓練にかかる時間に差があることを説明することはできません。

ア:環境閾値説(かんきょういきちせつ)
環境閾値説はジェンセン(B)によって提唱された理論です。この理論では、成熟(遺伝)なのか環境なのかという二者択一ではなく、遺伝と環境は相互に関係しあっているという考えの一つです。この理論は環境要因がある水準(これを閾値とよぶ)を超えると、遺伝要因が発揮されるというもので、その水準は個々の成熟によって変わってくるというものとされています。
この枠組みで見ると、X児に対して行った実施した階段上りの訓練は、X児が生後46週間目から6週間の訓練である水準に達しました。それに対して、Y児は53週間目から2週間の訓練で同様の水準に達することができたと考えることができます。
ちなみに、この環境閾値説と似ている考えが、シュテルン(C)によって提唱された輻輳説(ふくそうせつ)です。環境も成熟も大事だというのは環境閾値説と同じですが、発達は、遺伝と環境の足し算で決まっていくという考えです。よって水準という考えは用いられていません。

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03

正答は3です。

ア:環境閾値説/B ジェンセン
各特性が発達するかどうかは、環境条件が「ある水準を超えたときだけ」である事を提唱しました。しかし遺伝と環境は相互に関係しあって、遺伝が成熟の違いをもたらす事も、同時に強調していますので、環境と成熟はどちらも重要であることを述べています。

イ:成熟優位説/A ゲゼル
学習が促進される発達段階に到達してい場合の事を「レディネス」と言います。レディネス下では、いくら早期に教育をしても、ほとんど効果がないという実験結果を出し、環境よりも成熟しているかどうかが発達において重要という結論を導き出しました。

シュテルンは輻輳説で、環境と成熟どちらも重要であるとしています。ジェトセンと似ていますが、発達は遺伝と環境の掛け合わせによるとしているので、ジェトセンのような「水準」で成長するかしないかの境界線を定義していません。

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