公立学校教員の過去問
平成30年度(H31年度採用)
共通問題 問11

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問題

公立学校教員採用選考試験(教職教養) 平成30年度(H31年度採用) 共通問題 問11 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、ある学習指導の事例に関するものである。この事例における主な学習指導の方法についての記述として最も適切なものは、下の1~5のうちではどれか。

 中学校第3学年の理科の授業を担当するA教諭は、次の新たな単元Xの学習の授業を以下のように行った。
 A教諭は、この単元Xの導入で、単元Xの学習内容に関する個々の生徒の知的背景や過去の経験を調べるために、簡単なOXクイズを行った。そして、生徒の既得の知識や経験と単元Xの学習内容とを関連させ、生徒の学習意欲を促すとともに、授業の方向付けを明確にした。次に、A教諭は、単元Xの学習内容を説明した。生徒に学習内容の要点をまとめさせたり、定着テストを行ったりを繰り返しながら、知識の定着を図った。知識を定着させた後、A教諭は、生徒の自主的判断力や問題解決のための思考力の形成を目指し、教材や資料、実験器具などが整備された理科実験室で、生徒にグループ別に実験を行わせたり、個別の研究を行わせたりして、この単元Xの学習内容の理解を図った。その際、生徒の学習進度に応じて個別に指導を行った。その後、A教諭は、生徒に、この単元Xの学習内容を自分の言葉で整理させた。最後に、A教諭は、生徒がこの単元Xの学習によって習得した学習内容を、他の生徒にも理解できるように説得力をもたせて説明させた。
  • イエナ・プランにみられる、異年齢や特別支援を必要とする子供を含む学級を構成し、子供同士の経験によって学習した内容を身に付けさせるという学習指導の方法である。
  • ウィネトカ・プランにみられる、教育課程を共通科目と、集団的・創造的活動に分け、集団的・創造的活動では生徒の関心に合わせた取組が許容されるという学習指導の方法である。
  • モリソン・プランにみられる、教授過程を、探求、提示、同化、組織化、発表の5段階とし、段階を経て学習内容を習得させるという学習指導の方法である。
  • ヴァージニア・プランにみられる、教科主体の系統学習を排除し、社会生活の経験を中核とするコア・カリキュラムを設定し、それに応じて指導を進めるという学習指導の方法である。
  • ドルトン・プランにみられる、子供の自発性を尊重し、個別の学習計画に従って学習を進めていくという学習指導の方法である。

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この過去問の解説 (3件)

01

正答は3です。

1:イエナ・プランは、1924年にペーターゼンが、ドイツのイエナ大学附属実験学校で実施した方法です。
「学校は生活共同体(ゲマインシャフト)の縮図でなければならない」という考えのもと、従来の年齢別学年・学級編制を廃止し、知的な発達段階や人間性などのトータルなバランスを考慮して、3種類の基幹集団を編成し、その中で子どもたちは自らの興味関心に応じた自由な学習を行いました。
問題文の学習指導の事例は、イエナ・プランに当てはまっているとはいえないため、1は誤りです。

2:ウィネトカ・プランは、1919年にウォッシュバーンが、アメリカのイリノイ州ウィネトカ市の小・中学校で実施したものです。
教育課程を共通基本教科(読・書・算)と社会的・創造的活動(音・美・体等)に分け、前者では個別指導による学習内容の完全な習得を、後者では集団学習による子どもの社会化を目指しました。
問題文の学習指導の事例は、ウィネトカ・プランに当てはまっているとはいえないため、2は誤りです。

3:モリソン・プランは、1920年にモリソンが考案し、アメリカの中等学校に普及したものです。
子どもの自発性を尊重しながらも、学習内容の完全な習得を目指し、デューイの問題解決学習とヘルバルトの教授段階論を技術的に融合した方法をとっています。教科をその特性によって、①科学型、②鑑賞型、③言語型、④実技型、⑤反復練習型の5つに分類し、それぞれに固有の教授段階を設定しています。
特に、①科学型における「探索ー提示ー類化ー組織化ー発表」が有名で、問題文の学習事例でもこの5段階の学習過程が用いられているため、3は正解です。

4:ヴァージニア・プランは、1934年にアメリカのバージニア州教育委員会が、小・中学校の教育改善のために提案した教育課程です。
すべての教育活動の核(コア)となる教科・科目や活動領域(中心課程)を設定し、その周辺に関連する教科・科目や領域(周辺課程)を配置して、教育内容全体を有機的に統合しようとする「コア・カリキュラム」を提唱しました。
問題文の学習指導の事例は、ヴァージニア・プランに当てはまっているとはいえないため、4は誤りです。

5:ドルトン・プランは、1920年にパーカーストが、アメリカのマサチューセッツ州ドルトン市のハイスクールで実施した方法です。
教育課程を主要教科群(国・数・理・社等)と副次的教科群(音・美・体等)に分け、前者は午前中に教科別に個別指導を受け、後者は午後に学級単位で行うという形がとられました。
問題文の学習指導の事例は、ドルトン・プランに当てはまっているとはいえないため、5は誤りです。

参考になった数5

02

正解は3です。

A教諭の手順は、モリソン・プランの科学型の教科における、5段階の学習過程に合致します。


 「個々の生徒の知的背景や過去の経験を調べるために、簡単なOXクイズを行った。そして、生徒の既得の知識や経験と単元Xの学習内容とを関連させ、生徒の学習意欲を促すとともに、授業の方向付けを明確にした」

探索)~学習者の過去の経験とこれから学習する経験との間の関係を、予備テストや問答法で知り、学習を動機づける。

 「単元Xの学習内容を説明した。」

提示)~新しい教材の提示や単元の重要な部分を教師が説明する。

「生徒の自主的判断力や問題解決のための思考力の形成を目指し、…生徒にグループ別に実験を行わせたり、個別の研究を行わせたりして、この単元Xの学習内容の理解を図った」

同化)~学級全体で目標に向かって学習を進め、学習者の能力、態度、技術を育て、理解を図る。

「生徒に、この単元Xの学習内容を自分の言葉で整理させた」

組織化)~全体をまとめ整理する。

「生徒がこの単元Xの学習によって習得した学習内容を、他の生徒にも理解できるように説得力をもたせて説明させた」

発表)~理解したことを発表し、習熟の問題と練習を行う。

以上の5段階を経ていることから、モリソン・プランであることが分かります。


【他の選択肢を見分けるポイント】

1.「異年齢や特別支援を必要とする子供を含む学級を構成」とありますが、クラスの構成に関しての記述は問題文中にありません

2.ウィネトカ・プランの分類によれば、理科は共通科目に分けられるので、集団的・創造的活動の説明はそぐわないです。

4.「社会生活の経験を中核とするコア・カリキュラムを設定し、それに応じて指導を進める」という点が問題文中にありません

5.ドルトン・プランは「子供の自発性を尊重し、個別の学習計画に従って学習を進めていく」のが特徴です。

 問題では「生徒の学習進度に応じて個別に指導を行った」と記述があるとはいえ、全体として個別指導が主たる方法ではないため、適切ではないと判断できます。

参考になった数2

03

正答は3です。

A教諭の単元の学習過程は、以下のとおりです。

①導入で生徒の知的背景や過去の経験を調査。
②生徒の既得の知識や経験をもとに生徒の学習意欲を促し、授業の方向付けを実施。
③学習内容を説明に加え、生徒に要点をまとめさせたり、定着テストを実施したりして、知識の定着を図った。
④生徒の自主的判断力や問題解決のための思考力の形成を目指し、グループ学習や個別の研究を取り組ませたり、個別指導を行いながら、生徒に学習内容を自分の言葉で整理させた。
⑤習得した学習内容を生徒に説得力をもたせて説明させた。

この過程はモリソン・プランにおける「探索ー提示ー類化ー組織化ー発表」と合致するため、正答は3です。


1:イエナ・プランは、ドイツのイエナ大学の教育学教授だったペーター・ペーターゼンが 1924年に創始した教育方法です。
「学校は生活共同体(ゲマインシャフト)の縮図でなければならない」という考えのもと、従来の年齢別学年・学級編制ではなく知的発達段階や人間性などを考慮して、異年齢のグループにしてクラスを編成し、子どもたちは自らの興味関心に応じた自由な学習に取り組みました。
問題文の事例は、イエナ・プランに当てはまらないため、1は誤りです。

2:ウィネトカ・プランは、カールトン・ウォッシュバーンが教育的な焦点を子どもたちの創造的な活動や社会的スキルの発達に当てることを目的とした、アメリカのイリノイ州ウィネトカの小学校で行われた実験的教育方法です。

カリキュラムは、教科内容の学習と習得する「一般共通科目」と、「創造的集団活動」に分けられました。
創造的活動では、関心の度合いでの取り組みが許容され、具体的な達成・到達度目標が設定されなかったとされています。
前者では個別指導による学習内容の完全な習得を、後者では集団学習による子どもの社会化を目指しました。
問題文の事例は、ウィネトカ・プランに当てはまらないため、2は誤りです。

3:モリソン・プランは、1920年にモリソンが考案したアメリカ教育指導方法です。
科学型の教科目で学習単元を組織し、以下の五段階の過程で学習を進めます。

①探索:学習者の過去の経験と学習する経験の関係を予備テストや問答法で知り、学習を動機づける。
②提示:新しい教材の提示や単元の重要な部分を教師が説明する。
③同化:学級全体で目標に向けた学習を進め、学習者の能力・態度・技術などの理解の定着を図る。
④組織化:学習内容の全体をまとめ整理する。
⑤反覆(発表):理解したことを発表し、習熟の問題と練習を実施する。

問題文の学習事例ではこの学習過程が当てはまるため、3は正答です。

4:ヴァージニア・プランは、1934年にアメリカのヴァージニア州教育委員会が小・中学校の教育改善のために提案した教育課程です。

教科主体の系統学習を排除し,児童生徒の生活上の問題を解決するための単元学習である「中心課程(コア)」と、それを支える専門分化した体系的な知識・芸術・技術の習得する「周辺課程」で構成するという「コア・カリキュラム」を具体化した教育指導方法です。
問題文の事例は、ヴァージニア・プランに当てはまらないため、4は誤りです。

5:ドルトン・プランは、1920年代にアメリカのマサチューセッツ州のドルトン市内の学校でヘレン・パーカーストが実施した教育指導法です。

教育課程を主要教科群(国・数・理・社等)と副次的教科群(音・美・体等)に分け、前者は午前中に教科別に個別指導を受け、後者は午後に学級単位で行うというように、子どもが自ら作った「時間割(アサインメント)」で授業が進められました。
問題文の事例は、ドルトン・プランに当てはまらないため、5は誤りです。

参考になった数1