公立学校教員の過去問
令和元年度(令和2年度採用)
共通問題 問10

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問題

公立学校教員採用選考試験(教職教養) 令和元年度(R2年度採用) 共通問題 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

学習理論に関する記述として適切なものは、次の1〜5のうちのどれか。
  • ソーンダイクは、箱の中に入れられたネコが、箱から脱出するために引っかいたり、かみついたり、転げ回ったりなどの不適切な反応を積み重ねていくうちに掛け金を外すという正しい反応に至る経過から、試行錯誤による学習という考え方を提唱した。
  • ケーラーは、ヒヨコやチンパンジーに移調の可能性がみられること、チンパンジーが回り道、道具の使用、道具の制作等の洞察を表す行動を示すことなどを明らかにした。このことから、学習は反復経験の効果が最も重要であるという接近説を提唱した。
  • ハルは、刺激と反応の結合、強化の効果といった概念で学習を説明しようとした。中でも習慣強度や動因などの仲介変数に立脚せず、被験体の自発的反応を前提とすることで、行動の目的や動機付けのような問題をも説明できるようにした点に特徴をみることができる。
  • パブロフは、イヌの消化腺の実験生理学的研究を行う中で、条件刺激が繰り返しによって無条件刺激に変化することを発見し、こうした学習は大脳皮質の働きによるものと考えた。この概念は後の心理学に採り入れられて、学習理論の発展に大きな影響を与えた。
  • トールマンは、ネズミの迷路学習場面で潜在学習という現象の存在を指摘した。目的・期待・計画の概念を導入するなど、連合説に極めて近い考え方で、認知説から連合説への潮流の変化に果たした役割は高く評価されている。

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この過去問の解説 (3件)

01

正答は1です。

1:問題文の内容は正しいため、1は正答です。

2:ケーラーが提唱したのは、接近説ではなく「洞察説」ですので、2は誤りです。

「接近説」はガスリーによって提唱され、学習の成立には刺激と反応とが時間的・空間的に接近して生起することが必要十分条件であるとする説です。

3:新行動主義であるハルが提唱した「動因低減説」は、行動がある刺激によって生じ、結果として動因が低減した場合、その行動は同じような刺激でも再び生じやすくなるという理論です。

〈例〉
喉が渇いている。←(動因)
水を飲むと喉の渇きがおさまる。←(動因の低減)

その結果、喉が乾いたら水を飲むという行動が強化されるため、喉の渇きが強いほど、何かを飲みたいという気持ちも強くなり、水を飲む可能性(反応ポテンシャル)は高くなる。

この説は多くの媒介変数を入れた厳密な科学的方法論に基づいており、「習慣強度や動因などの仲介変数に立脚せず」には成立しないため、3は誤りです。

4:パブロフはイヌの消化腺の実験生理学的研究を行う中で、学習・刺激によって反応が誘発されるという、無条件反応から条件反応に変化することを発見しました。(古典的条件づけ)
無条件刺激ではなく「条件反応」のため、4は誤りです。

5:トールマンは、ネズミが餌が置かれた迷路の道筋をどのように学習するのかという実験を基に、「サイン・ゲシュタルト説」を提唱しました。
迷路を走るねずみは「どの道筋であれば餌を食べられるのか」を、認知した道筋を基に行動することから、連合説ではなく認知説に近いため、5は誤りです。

※連合説とは、学習のメカニズムを説明する理論にある2つの立場のうちの1つで、刺激と反応との結合を学習の基礎とみなす説です。
〈例〉
パブロフの提唱した「古典的条件づけ」
スキナーの提唱した「オペラント条件づけ」
ソーンダイクの提唱した「試行錯誤説」など

参考になった数12

02

1. 正しい記述となります。

2. 選択肢は「接近説」ではなく「洞察説」の内容を説明しています。「洞察説」はケーラーによって提唱され、「接近説」はガスリーによって提唱されました。

3. 「習慣強度や動因などの仲介変数に立脚せず」が適切ではなく、誤りとなります。ハルは「刺激に対する反応(行動)を規定する『媒介変数』を設定することで人間の複雑な行動」を理解することができると考えました。

4.「無条件刺激」ではなく、正しくは「条件反応」となります。パブロフはイヌの消化腺の実験を実施する中で、学習によって無条件反応から条件反応に変化することを発見しました。

5. トールマンの考え方は、連合説ではなく認知説に近い考え方となります。「連合説」は、与えられた刺激に行動を連合させることが学習であると考えています。一方で、「認知説」は、与えられた刺激を認知し、それに基づいて行動を変容させることが学習であると考え ています。

よって、正答は1となります。

参考になった数5

03

正答は1です。

1:問題文の通りのため、1は正解です。

2:ケーラーが提唱したのは、接近説ではなく「洞察説」です。そのため2は誤りです。

3:ハルは、新行動主義の立場をとる学者です。学習の理論を数学的に厳密化すること、また精神分析の諸概念を学習理論に統合することを目的としていました。被験体の自発的反応を前提としていたわけではないため、3は誤りです。

4:パブロフはイヌの消化腺の実験生理学的研究を行う中で、学習によって無条件反応から条件反応に変化することを発見しました。無条件刺激ではなく「条件反応」のため、4は誤りです。

5:トールマンは、ネズミの実験によってサイン・ゲシュタルト説を唱えました。これは、連合説ではなく認知説に近い考え方であるため、5は誤りです。

参考になった数2