正解は 1 です
低位前方切除術とは、S状結腸のカーブを過ぎたすぐのあたりを切除して、腫瘍部分を除去、腹膜の反転部分よりも下で、つなぎ合わせる術式のことです。
最近の風潮としては、ストーマ(人工肛門)の増設は管理手技の難しさや本人のライフスタイルの問題から、そのほかの代替的手段が取れない場合を除いて、できるだけ行わない方法を模索する流れになってきています。
その分、術式や術後の縫合の方法などが様々に分岐し、それにあわせて看護のポイントも枝分かれしているところがあるため、現場に勤めるようになった際には大まかなポイントだけでも分かりやすくまとめておきましょう。
1:○
この患者さんの場合、本文中にもあるように「自律神経を"部分"的に温存」する術式をとっています。
部分的な温存ということは切除される部分もあるということで、その中に骨盤神経の一部が含まれた場合、尿意を感じにくくなったり、尿が出にくくなる、もしくは尿閉状態になる等の排尿障害が現れる可能性があります。
よって、この選択肢が一番可能性としては高く、正解です。
2:×
輸入脚症候群とは腸の手術を行った際ではなく、胃切除の術式の一種であるビルロート法を行ったのちに起こりやすい合併症のひとつです。
胃を切除し小さくなっているぶん、十二指腸部分だったところを通常よりも引っ張り上げて、胃の側面に沿うようにくっつけてあるのがビルロート法です。(くっつけ方により、I法 II法と呼び方が異なります)
この腸管の余っている(先端がどこにも繋がっておらず閉鎖されている)部分に間違って、食物や胆汁が進入してしまった状態がこの輸入脚症候群であり、その食物は消化されないにも関わらず、腸内細菌だけが活発にその栄養を消費するため、悪化すると腸管ごと壊死してしまう危険性もあります。
症状としては食後10~30分くらいで、上腹部の膨満感・腹痛・吐き気・嘔吐などが出現します。
診断はX線の撮影で容易に行えるため、可能性のある胃切除後の患者さんが同様の症状がないかをしっかり観察し、早期発見に努める必要があります。
3:×
低位前方切除術では基本的に肛門括約筋は温存され、切った腸の断面を引き下げて直腸部分に接続することが多いため、人工肛門を増設することはありません。
4:×
ダンピング症候群も輸入脚症候群と同様胃切除後に起こりやすい合併症のため、今回の疾病には全く関係ありません。
ちなみにダンピング症候群は、食後5~30分で起こる「早期ダンピング症候群」と、食後1~2時間以内に起こる「晩期ダンピング症候群」があります。
それぞれ
早期ダンピング症候群:小腸からの分泌により、全身の血管が拡張し、低血圧のような状態になる。安静が必要。
晩期ダンピング症候群:炭水化物が急激に吸収され、一時的に高血糖となり、インスリンが分泌。糖の吸収が終わってもインスリンが作用し続け、低血糖を引き起こすため、糖分補給が必要。
と、作用機序も対処方法も異なるため、しっかり覚えておいて患者様に説明できるようにしておきましょう。
参考:退院後に起こる問題と対処法 胃切除後症候群とは-日本臨床外科学会
http://www.ringe.jp/civic/igan/igan_13.html