看護師の過去問 第109回 午前 問91

正解：1. 胸水　　　3. 貧血（anemia）


悪性胸膜中皮腫

胸膜の中皮細胞から生じる悪性腫瘍です。
原因の1つとして、アスベストの曝露が言われています。
症状は、胸痛、咳、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感などがあります。

1. →胸水
胸痛、息苦しさの症状があり、呼吸数24/分と頻呼吸で、経皮的動脈血酸素飽和度（SpO2）86～90％と低値、動脈血液ガス分析でPaO2 63Torrと低値であり、低酸素状態であることが判断出来ます。両下肺野で呼吸音減弱、胸部エックス線上で肋骨横隔膜鈍化が認められることから、胸水貯留と考えられます。

3. →貧血
息苦しさ、倦怠感の増強や、脈拍92/分と頻脈で、血液所見でHb8.8g/dlと低下していることから、貧血状態であると考えられます。

2. →気胸
息苦しさ、胸痛の症状が現れることがあり、SpO2やPaO2の低下も同様に見られますが、気胸では胸部X線上で肺虚脱が見られることが特徴的ですので、Aさんの病態とは異なります。また、気胸は肺尖部胸膜直下に好発するため、その場合には患側肺上葉部の呼吸音が減弱します。

4. →CO2ナルコーシス
COPDなど病的状態により慢性的にCO2が貯留している状態で、不必要に酸素投与を行ってしまうと低酸素血症による呼吸刺激がなくなり、CO2による呼吸刺激も低下したままのため、著しい呼吸抑制が起こる状態です。
代表的な症状は、重症呼吸性アシドーシス、意識障害、自発呼吸の減弱です。数値的には通常PaCO2＞80Torrとなります。そのため、Aさんの病態とは異なります。

5. →呼吸性アルカローシス
PaCO2の一次性の低下と、呼吸数または呼吸量の増加（過換気）に起因します。こちらも、Aさんの病態とは異なりますので不正解です。

(正解)　1と3
(解説)
この問題では、Ａさんの病態と検査所見を総合的に見ながら、正解を導き出していく必要があります。
まず、呼吸数 24 /分と頻呼吸であること、経皮的動脈血酸素飽和度〈 SpO2 〉 86 ～ 90 %（ room air ）と低値、動脈血液ガス分析でPaO2 63Torrと低値であることから、Aさんは低酸素状態であることが判断できます。この段階では、症状として、息苦しさや胸痛があることから、選択肢2の「気胸」も考えられます。しかし、Ａさんの胸部X線写真では、「肺虚脱なし」とあり、気胸に特徴的な所見がないため、選択肢2「気胸」は除外することができます。胸部X線写真の結果では、「胸膜肥厚と肋骨横隔膜角の鈍化」が胸水貯留に特徴的な所見が認められていること、身体所見：両側下肺野で呼吸音が減弱しており、軽度の副雑音が聴取されることから、選択肢「1」が正解に該当すると判断することができます。
そして、血液検査の所見では、Hb 8.8 g /dLと低値であることから、貧血状態であることがわかります。Ａさんの症状では、息苦しさ、倦怠感の増強があったこと、バイタルサインでも脈拍92/分と頻脈であることから貧血の所見とも合致するため、選択肢「3」が正解に該当すると判断することができます。

(補足)
4. CO2ナルコーシスについて
：慢性的にCO2が貯留している状態で、ＣＯ2による呼吸刺激が低下している状態になります。このときに必要以上の酸素投与を行うことで、低酸素血症による呼吸刺激もなくなるため、著しい呼吸抑制が起こります。主な症状は、重症呼吸性アシドーシス、意識障害、自発呼吸の減弱などであり、動脈血液ガス分析検査では、PaCO2＞80Torrとなります。以上のことから、Ａさんの病態とは異なっているため、正解には該当しません。

正解：１．胸水　　　３．貧血（anemia）


悪性中皮腫
胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜に発生する悪性腫瘍で、胸膜が80～85％。腹膜が10～15％に発生します。

悪性胸膜中皮腫
症状として胸痛、咳、胸水による呼吸困難や胸部圧迫感などがあります。

１．胸水
　胸痛、息苦しさが増強しており、呼吸数24/分と頻呼吸で、経皮的動脈血酸素飽和度（SpO2）86～90％と低値、両下肺野で呼吸音減弱と動脈血液ガス分析でPaO2 63Torrと低値であり、胸部エックス線上肋骨横隔膜鈍化が認められることから、胸水により有効な呼吸が行えていない状況が考えられます。

３．貧血（anemia）
　息苦しさ、倦怠感が増しており、脈拍92/分と頻脈で、血液所見でHb8.8g/dlと低下しており、貧血の症状が現れていると考えられます。