社会保険労務士の過去問
第45回(平成25年度)
社労士 | 社会保険労務士試験 択一式 問7
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問題
社労士試験 第45回(平成25年度) 択一式 問7 (訂正依頼・報告はこちら)
労働基準法第24条に定める賃金の支払等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
ア いわゆる通貨払の原則の趣旨は、貨幣経済の支配する社会では最も有利な交換手段である通貨による賃金支払を義務づけ、これによって、価格が不明瞭で換価にも不便であり弊害を招くおそれが多い実物給与を禁じることにある。
イ 行政官庁が国税徴収法の規定に基づいて行った差押処分に従って、使用者が労働者の賃金を控除のうえ当該行政官庁に納付することは、いわゆる直接払の原則に抵触しない。
ウ いわゆる通貨払の原則は強行的な規制であるため、労働協約に別段の定めがある場合にも、賃金を通貨以外のもので支払うことは許されない。
エ いわゆる全額払の原則の趣旨は、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべきであるとするのが、最高裁判所の判例である。
オ 退職金は労働者にとって重要な労働条件であり、いわゆる全額払の原則は強行的な規制であるため、労働者が退職に際し退職金債権を放棄する意思表示をしたとしても、同原則の趣旨により、当該意思表示の効力は否定されるとするのが、最高裁判所の判例である。
ア いわゆる通貨払の原則の趣旨は、貨幣経済の支配する社会では最も有利な交換手段である通貨による賃金支払を義務づけ、これによって、価格が不明瞭で換価にも不便であり弊害を招くおそれが多い実物給与を禁じることにある。
イ 行政官庁が国税徴収法の規定に基づいて行った差押処分に従って、使用者が労働者の賃金を控除のうえ当該行政官庁に納付することは、いわゆる直接払の原則に抵触しない。
ウ いわゆる通貨払の原則は強行的な規制であるため、労働協約に別段の定めがある場合にも、賃金を通貨以外のもので支払うことは許されない。
エ いわゆる全額払の原則の趣旨は、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべきであるとするのが、最高裁判所の判例である。
オ 退職金は労働者にとって重要な労働条件であり、いわゆる全額払の原則は強行的な規制であるため、労働者が退職に際し退職金債権を放棄する意思表示をしたとしても、同原則の趣旨により、当該意思表示の効力は否定されるとするのが、最高裁判所の判例である。
- ( アとウ )
- ( アとエ )
- ( イとエ )
- ( イとオ )
- ( ウとオ )
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この過去問の解説 (3件)
01
正解は(ウとオ)
ア 正しい内容です。
労働者は、現金(通貨)によって、生活を維持します。そのため、現物支給による賃金支払いを禁止したものです。
イ 正しい内容です。
労働基準法第24条1項で、「法令に別段の定めがある場合・・・賃金の一部を控除して支払うことができる。 」と直接払いの例外となる事例を定めています。この法令の定めに、国税徴収法に基づく差押処分が該当します。他には、給与からの源泉徴収が認められている税金や社会保険料も該当します。
ウ 間違っています。
労働基準法第24条1項で、「労働協約に別段の定めがある場合・・・通貨以外のもので支払い(ができる)」と認められています。この規定で、現物支給が認められますが、住宅供与や通勤定期乗車券の支給も該当します。
エ 正しい内容です。
最高裁の判例では、たとえば、日新製鋼事件(H02.11.26最二小判)「労基法24条1項の賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨」と述べています。
オ 間違っています。
エで引用した最高裁判決は、続けて、「労働者がその自由な意思に基づき右相殺に同意した場合においては、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は労基法24条1項に違反するものとはいえない。」と述べ、合意による相殺が、労基法の全額払いの原則に反しないとしました。
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02
正解は(ウとオ)です。
ア.正しい
通貨払いの原則の趣旨は設問の通りになります。(法24条1項)
イ.正しい
設問の場合は法令に基づく例外(いわゆる「正当行為」)として、差し押さえ処分とされた分を行政官庁に納付して、残りを労働者に支払うことも認められています。
ウ.誤り
労働協約に別段の定めがある場合は「許される」となります。参考までに、「労使協定に別段の定め」がある場合は「全額払いの原則」の例外規定となっていますのでご注意ください。
エ.正しい
設問の通りに全額払いの原則の趣旨を述べています。(最高裁判所第二小法廷判決 昭48.1.19 シンガー・ソーイング・メシーン事件)
オ.誤り
最高裁判決によると、労働者が退職に際してみずから賃金に該当する退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、全額払の原則が意思表示の効力を「否定する趣旨のものであると解することができない」とされているため、誤りです。
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03
ア.労働基準法(以下「法」と略します)24条の趣旨としては、選択肢の通りとなります。
イ.法24条1項で「法令に別段の定めがある場合」には、賃金の一部を控除して支払うことを認めていますね。
選択肢のような場合は、国税徴収法76条の規定により「法令に別段の定めがある場合」に該当することになります。
ウ.誤「許されない」
正「許される」
法24条1項で、選択肢のような「労働協約に別段の定めがある場合」には、通貨以外の支払も認めていることに気をつけましょう。
エ・オ 最高裁昭和48年1月19日の判決(シンガー・ソーイング・メシーン事件) によると、エに基づいて、労働者が退職に際してみずから退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合には、賃金全額払の原則が、意思表示の効力を否定する趣旨のものとまで解することはできないとしています。
よってオに関しては、結論・理由とも誤りです。
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