社会保険労務士の過去問
第45回(平成25年度)
社労士 | 社会保険労務士試験 択一式 問1
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問題
社労士試験 第45回(平成25年度) 択一式 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
労働契約法等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとされている。
- 使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うとするのが、最高裁判所の判例である。
- いわゆる採用内定の制度の実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきであり、採用内定の法的性質を判断するに当たっては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要があるとするのが、最高裁判所の判例である。
- 使用者が社内の多数労働組合の同意を得て就業規則を変更し、55歳以降の賃金を54歳時よりも引き下げつつ、定年年齢を引き上げた事案について、本件就業規則の変更は、多数労働組合との交渉、合意を経て労働協約を締結した上で行われたものであるから、変更後の就業規則の内容は、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性等にかかわらず、労使間の利益調整がされた結果として合理的なものとみなすことができるとするのが最高裁判所の判例である。
- 労働契約法第20条に定める、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止における「不合理性」は、有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下、本肢において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されるものであり、とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解される。
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この過去問の解説 (3件)
01
1 正しい内容です。
労働契約法第3条が明記する「労働契約の原則」の第2項で、「労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」と定めているところです。
いわゆるワーク・ライフ・バランス原則の確認です。
2 正しい内容です。
「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである。」と判示した電通事件最高裁判決(第2小法廷平成12年3月24日)の一部です。現在では、労働契約法第5条が、安全配慮義務を明記しています。
3 正しい内容です。
大日本印刷事件において、最高裁判決(第2小法廷昭和54年7月二〇日)が、「企業が大学の新規卒業者を採用するについて、早期に採用試験を実施して採用を内定する、いわゆる採用内定の制度は、従来わが国において広く行われているところであるが、その実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきである。したがつて、具体的事案につき、採用内定の法的性質を判断するにあたつては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある。」との前提で、当該の事案については、就労始期付き解約権留保付き労働契約の成立を認めたことに留意する必要があります。
4 間違っています。
設問のような事例で争われた第百銀行事件最高裁判決(第二小法廷平成9年2月28日)においては、「賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。右の合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。」と総合的な判断を求めました。
5 正しい内容です。
「労働契約の施行について」(平成24年8月10日基発0810第2号、最終改正平成27年3月18日基発0318第2号)において、「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(法第20条関係)」(2オ) として規定されている内容です。
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02
※厚生労働省からの通達(下記の「平成24年8月10日基発0810第2号」等)で略語の意味は下記の通りです。
基発・・・労働基準局長名で発する通達
1.労働契約法(以下「法」と略します)3条3項 のとおりですね。
2.この最高裁判所の判例とは、最高裁平成12年3月24日の判決(電通事件)に基づいていますね。
3.この最高裁判所の判例とは、最高裁昭和54年7月20日の判決(大日本印刷事件)に基づいていますね。
4.誤「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性等にかかわらず」
正「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性等も考慮しても」
最高裁平成9年2月28日の判決(第四銀行事件)では、変更後の就業規則の合理性は「労働者の受ける不利益の程度」や、「労働条件の変更の必要性等」と無関係であるとは判断していない点に気をつけましょう。
5.平成24年8月10日基発0810第2号より、選択肢のように解釈されますね。
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03
1.正しい
労働契約法3条の内容で、労働契約5原則の一つである「仕事と生活の調和への配慮の原則」のことです。
2.正しい
最高裁平成12年3月24日の判決(電通事件)のことです。この最高裁判決によって過労自殺などが労災認定される要因になったといわれています。
3.正しい
最高裁昭和54年7月20日の判決(大日本印刷事件)において、内定取り消しに関する判決の中で、設問の内容が述べられています。
4.誤り
最高裁判例(第四銀行事件)では、就業規則の変更についての「合理性の有無」は、就業規則の変更によって労働者が被る「不利益の程度」「使用者側の必要性の内容・程度」「変更後の就業規則の内容自体の相当性」などを総合考慮して判断すべきであるとしています。
5.正しい
有期労働契約者と無期労働契約者との間で労働条件の差別を付けないようにするために規定された内容です。
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