社会保険労務士の過去問
第53回(令和3年度)
労務管理その他の労働に関する一般常識 問4
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問題
社労士試験 第53回(令和3年度) 択一式 労務管理その他の労働に関する一般常識 問4 (訂正依頼・報告はこちら)
労働関係法規に関する次のアからオの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記のうちのどれか。
ア 障害者の雇用の促進等に関する法律第36条の2から第36条の4までの規定に基づき事業主が講ずべき措置(以下「合理的配慮」という。)に関して、合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われない。
イ 定年(65歳以上70歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主又は継続雇用制度(その雇用する高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。ただし、高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、その雇用する高年齢者(高年齢者雇用安定法第9条第2項の契約に基づき、当該事業主と当該契約を締結した特殊関係事業主に現に雇用されている者を含み、厚生労働省令で定める者を除く。)について、「当該定年の引上げ」「65歳以上継続雇用制度の導入」「当該定年の定めの廃止」の措置を講ずることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保しなければならない。
ウ 労働施策総合推進法第30条の2第1項の「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」とする規定が、令和2年6月1日に施行されたが、同項の事業主のうち、同法の附則で定める中小事業主については、令和4年3月31日まで当該義務規定の適用が猶予されており、その間、当該中小事業主には、当該措置の努力義務が課せられている。
エ A社において、定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある通常の労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務の内容及び配置に変更のない短時間労働者であるYの助言を受けながら、Yと同様の定型的な業務に従事している場合に、A社がXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく、Yに比べ基本給を高く支給していることは、パートタイム・有期雇用労働法に照らして許されない。
オ 女性労働者につき労働基準法第65条第3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として男女雇用機会均等法第9条第3項の禁止する取扱いに当たるが、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易な業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、
上記措置につき男女雇用機会均等法第9条第3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらないとするのが、最高裁判所の判例である。
ア 障害者の雇用の促進等に関する法律第36条の2から第36条の4までの規定に基づき事業主が講ずべき措置(以下「合理的配慮」という。)に関して、合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われない。
イ 定年(65歳以上70歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主又は継続雇用制度(その雇用する高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。ただし、高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、その雇用する高年齢者(高年齢者雇用安定法第9条第2項の契約に基づき、当該事業主と当該契約を締結した特殊関係事業主に現に雇用されている者を含み、厚生労働省令で定める者を除く。)について、「当該定年の引上げ」「65歳以上継続雇用制度の導入」「当該定年の定めの廃止」の措置を講ずることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保しなければならない。
ウ 労働施策総合推進法第30条の2第1項の「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」とする規定が、令和2年6月1日に施行されたが、同項の事業主のうち、同法の附則で定める中小事業主については、令和4年3月31日まで当該義務規定の適用が猶予されており、その間、当該中小事業主には、当該措置の努力義務が課せられている。
エ A社において、定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある通常の労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務の内容及び配置に変更のない短時間労働者であるYの助言を受けながら、Yと同様の定型的な業務に従事している場合に、A社がXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく、Yに比べ基本給を高く支給していることは、パートタイム・有期雇用労働法に照らして許されない。
オ 女性労働者につき労働基準法第65条第3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として男女雇用機会均等法第9条第3項の禁止する取扱いに当たるが、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易な業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、
上記措置につき男女雇用機会均等法第9条第3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらないとするのが、最高裁判所の判例である。
- (アとエ)
- (アとオ)
- (イとエ)
- (イとオ)
- (ウとエ)
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この過去問の解説 (3件)
01
解答:「(イとエ)」が正解です。
ア 〇
事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反は問われません。
イ ×
「65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならない」とされており、努力義務です。
ウ 〇
「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動への、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」とする規定は、中小事業主については、令和4年3月31日までは努力義務とされています。
エ ×
パートタイム・有期雇用労働法に照らして「許されます」。
Xは、「定期的に職務の内容及び勤務地の変更があり」「キャリアコースの一環として」定型的な業務に従事している点がYとは異なるため、従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく、Yに比べ基本給を高く支給していても問題ありません。
オ 〇
妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、
「労働者の自由な意思に基づいて降格を承諾したと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき」
又は、
「事業主において労働者の降格の措置を取ることなく軽易な業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、上記措置につき男女雇用機会均等法第9条第3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき」は、
禁止する取扱いには当たりません。
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02
ア:設問の通りとなります(「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成27年3月25日付厚生労働省告示第117号)第2・2)。
厚生労働省の解釈であり、これと違う解釈を今後裁判所が行う可能性はありますが、厚生労働省通達である「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成27年3月25日付厚生労働省告示第117号)の第2・2には「合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われないこと」と記載されています。
イ:「65歳から70歳までの安定した雇用を確保しなければならない」ではなく「65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならない」となります(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第10条の2第1項)。
ウ:設問の通りです(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律令和元年6月5日法律第24号附則第3条)。
中小事業主については当該規定は、令和4年3月31日は努力義務とされていました。
エ:「許されない」ではなく「許される」となります。
現在、Xの行っている業務がYと同様であったとしても、「定期的に職務の内容及び勤務地の変更があ」って「管理職となるためのキャリアコース」という働き方なので、「同一労働」でもなく、基本給に差異があることが許される事例となります。
オ:設問の通りとなります(最高裁判決民集第68巻8号1270頁)。
最高裁は、当事者間で、この規定と異なる取り決めをしたとき、①自由の意思により降格を承諾で、②業務上の必要性から支障が出る場合、には禁止された取扱いにはあたらないとしています。
誤っている選択肢はイ、エとなります。
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03
ア.正
合理的配慮指針 p2が参照できます。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000082153.pdf
2 合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われないこと。
例えば、事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が精神障害等であったと知りえなかった場合、合理的配慮の提供義務違反を問われない。
イ.誤
65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければなりません(法10条の2第1項)。
定年(65歳以上70歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主又は継続雇用制度(その雇用する高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。ただし、高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、その雇用する高年齢者(高年齢者雇用安定法第9条第2項の契約に基づき、当該事業主と当該契約を締結した特殊関係事業主に現に雇用されている者を含み、厚生労働省令で定める者を除く。)について、「当該定年の引上げ」「65歳以上継続雇用制度の導入」「当該定年の定めの廃止」の措置を講ずることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保しなければならない。
ウ.正
中小事業主については本規定は令和4年3月31日までの間、努力義務とされています。令和4年4月1日から義務化されます。
エ.誤
短時間・有期雇用労働者の待遇に関して、原則となる考え方及び具体例は次 のとおりです。 p5が参照できます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf
(問題とならない例)
イ 基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、ある能力の向上のための特殊なキャリアコースを設定している。通常の労働者であるXは、このキャリアコースを選択し、その結果としてその能力を習得した。短時間労働者であるYは、その能力を習得していない。A社は、その能力に応じた基本給をXには支給し、Yには支給していない。
A社において、定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある通常の労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務の内容及び配置に変更のない短時間労働者であるYの助言を受けながら、Yと同様の定型的な業務に従事している場合に、A社がXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく、Yに比べ基本給を高く支給していることは、パートタイム・有期雇用労働法に照らして許されない。
オ.正
H26.10.23最高裁判決からの出題です。以下が参照できます。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84577
当事者間でこお規定と異なる取り決めをしても、それは認められる当然にこの規定が適用される強行規定ですが、①自由の意思により降格を承諾、②業務上の必要性から支障が出る、場合には禁止にはあたらないとするのが最高裁判決です。
誤っているものの組合せはイとエです。
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