社会保険労務士の過去問
第53回(令和3年度)
厚生年金保険法 問8

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

社労士試験 第53回(令和3年度) 択一式 厚生年金保険法 問8 (訂正依頼・報告はこちら)

厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 育児休業を終了した被保険者に対して昇給があり、固定的賃金の変動があった。ところが職場復帰後、育児のために短時間勤務制度の適用を受けることにより労働時間が減少したため、育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬をもとに計算した結果、従前の標準報酬月額等級から2等級下がることになった場合は、育児休業等終了時改定には該当せず随時改定に該当する。
  • 60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者が同時に雇用保険法に基づく基本手当を受給することができるとき、当該老齢厚生年金は支給停止されるが、同法第33条第1項に規定されている正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合などの離職理由による給付制限により基本手当を支給しないとされる期間を含めて支給停止される。
  • 63歳の被保険者の死亡により、その配偶者(老齢厚生年金の受給権を有し、65歳に達している者とする。)が遺族厚生年金を受給したときの遺族厚生年金の額は、死亡した被保険者の被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額と、当該遺族厚生年金の受給権者の有する老齢厚生年金の額に3分の2を乗じて計算した額のうちいずれか多い額とする。
  • 老齢厚生年金における加給年金額の加算の対象となる配偶者が、障害等級1級若しくは2級の障害厚生年金及び障害基礎年金を受給している間、当該加給年金額は支給停止されるが、障害等級3級の障害厚生年金若しくは障害手当金を受給している場合は支給停止されることはない。
  • 老齢厚生年金に配偶者の加給年金額が加算されるためには、老齢厚生年金の年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上という要件があるが、当該被保険者期間には、離婚時みなし被保険者期間を含めることはできない。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

解説は以下のとおりです。

選択肢1. 育児休業を終了した被保険者に対して昇給があり、固定的賃金の変動があった。ところが職場復帰後、育児のために短時間勤務制度の適用を受けることにより労働時間が減少したため、育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬をもとに計算した結果、従前の標準報酬月額等級から2等級下がることになった場合は、育児休業等終了時改定には該当せず随時改定に該当する。

【正誤】誤った記述です。

【ポイント・考え方】

 設問文の場合には、育児休業等終了時改定に該当します。

 育児休業等終了時改定は、随時改定よりも要件が緩やかである点を理解しておきましょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 ごく簡単にいうと、以下の違いがあります。

 ・随時改定:

   3か月間にすべて17日以上の基礎日数が必要

   2等級以上変動した場合に行われる

 ・育児休業等終了時改定:

   3か月の間に1か月でも17日以上の基礎日数があればよい

   1等級だけ変動した場合でも申し出れば改定してもらえる

 これを理解しておくとよいでしょう。

選択肢2. 60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者が同時に雇用保険法に基づく基本手当を受給することができるとき、当該老齢厚生年金は支給停止されるが、同法第33条第1項に規定されている正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合などの離職理由による給付制限により基本手当を支給しないとされる期間を含めて支給停止される。

【正誤】誤った記述です。

【ポイント・考え方】

 簡単に言ってしまうと、併給調整は両方の制度から受給できる場合に行われ、片方が支給停止時には、もう片方は支給されます。

 支給停止が解除になった際に改めて、併給調整が行われると理解しておくとよいでしょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 併給調整については、一方の給付について「全額」支給停止なのか「一部」支給停止なのかにより、もう一方の給付の支給停止有無が変わってくるので、条件を整理しておくとよいでしょう。

選択肢3. 63歳の被保険者の死亡により、その配偶者(老齢厚生年金の受給権を有し、65歳に達している者とする。)が遺族厚生年金を受給したときの遺族厚生年金の額は、死亡した被保険者の被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額と、当該遺族厚生年金の受給権者の有する老齢厚生年金の額に3分の2を乗じて計算した額のうちいずれか多い額とする。

【正誤】誤った記述です。

【ポイント・考え方】

 設問文の配偶者が選択できるのは、以下の2つのいずれかです。

 1)遺族厚生年金として受給できる額

   設問文にある「死亡した被保険者の被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額」のとおりです。

 2)死亡した被保険者の老齢厚生年金の半分+配偶者本人の老齢厚生年金の半分

   上記1)の3分の2と、自分の老齢厚生年金の2分の1とをあわせた額です。

 つまり、合わせ技で1人分としての年金を受給でき、その範囲内で金額が多くなる方(老齢年金か遺族年金か)を選択することが可能である、と理解しておくとよいでしょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 60歳以上で様々な条件で受給権を得る場合がありますが、そのうちどのような選択肢があり、どれを選ぶとより受給額が増えるか、は社労士の腕の見せ所だと思います。

 ぜひこのような設問文をきっかけとして、受給できる年金の種類と条件を、制度横断で整理してみてほしいと思います。

選択肢4. 老齢厚生年金における加給年金額の加算の対象となる配偶者が、障害等級1級若しくは2級の障害厚生年金及び障害基礎年金を受給している間、当該加給年金額は支給停止されるが、障害等級3級の障害厚生年金若しくは障害手当金を受給している場合は支給停止されることはない。

【正誤】誤った記述です。

【ポイント・考え方】

 障害等級3級であっても「障害厚生年金」を受給している場合は、加給年金額は支給停止されます。

 支給停止の判断において、障害厚生年金として等級による違いはないと理解しておきましょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 障害手当金(一時金です)について、障害厚生年金(さらには障害基礎年金)との違いを理解しておくとよいでしょう。

選択肢5. 老齢厚生年金に配偶者の加給年金額が加算されるためには、老齢厚生年金の年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上という要件があるが、当該被保険者期間には、離婚時みなし被保険者期間を含めることはできない。

【正誤】正しい記述です。

【ポイント・考え方】

 離婚時みなし被保険者期間は、もともとは本人の被保険者期間ではないので、当該期間があることによる「付加的な」給付の算出基礎とはされない、と理解しておくとよいでしょう。

【学習・実務でのワンポイント】

 本人のもともとの資格記録ではない部分(設問文の離婚時みなし被保険者期間などイレギュラーなもの)について、受給期間や受給額への加算有無を整理しておくとよいでしょう。

参考になった数17

02

1、間違いです。

育児休業等を終了した時の改定の問題です。

固定的賃金が上がったけれど、時短勤務なので

3か月の報酬は下がった時は

随時改定はしません。

両方とも上がったか、下がった時のみ

随時改定します。

2、間違いです。

特別支給の老齢厚生年金は

給付制限期間中の、事後精算により

戻ってくる場合もあります。

(難しい問題です)

3、間違いです。

遺族厚生年金の計算の問題です。

死亡した者の老齢厚生年金相当額の

4分の3に相当する額、又は

原則の遺族厚生年金の額に3分の2を

乗じて得た額と、配偶者の老齢厚生年金

(加給年金除く)に2分の1を乗じた額を合算

した額のいずれか多い額になります。

4、間違いです。

障害3級の受給をしているので加給年金は貰えません。

障害手当金は一時金なので停止されません。

5、正解です。

年金額を計算するときは離婚時みなし被保険者期間は

含めますが、240以上の要件には離婚時みなし被保険者

期間は除きます。

参考になった数10

03

解説は以下のとおりです。

選択肢1. 育児休業を終了した被保険者に対して昇給があり、固定的賃金の変動があった。ところが職場復帰後、育児のために短時間勤務制度の適用を受けることにより労働時間が減少したため、育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬をもとに計算した結果、従前の標準報酬月額等級から2等級下がることになった場合は、育児休業等終了時改定には該当せず随時改定に該当する。

育児休業等を終了した際の改定に関する問です。

本肢の場合、育児休業等終了時改定に該当します。随時改定は固定的賃金の変動と3か月平均の報酬月額が同じ向きに動く場合(両方とも上がる、両方とも下がる)に行われます(R.3.4.1事務連絡)。

育児休業を終了した被保険者に対して昇給があり、固定的賃金の変動があった。ところが職場復帰後、育児のために短時間勤務制度の適用を受けることにより労働時間が減少したため、育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬をもとに計算した結果、従前の標準報酬月額等級から2等級下がることになった場合は、育児休業等終了時改定には該当せず随時改定に該当する。

選択肢2. 60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者が同時に雇用保険法に基づく基本手当を受給することができるとき、当該老齢厚生年金は支給停止されるが、同法第33条第1項に規定されている正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合などの離職理由による給付制限により基本手当を支給しないとされる期間を含めて支給停止される。

特別支給の老齢厚生年金と基本手当の調整に関する問です(法附則7条の4第2項)。

「当該老齢厚生年金の受給権者が基本手当の支給を受けた日とみなされる日及びこれに準ずる日として政令で定める日」これに準ずる日には待期期間、給付制限期間を含みます。基本手当の受給日、待期、給付制限等が1日もなかった場合は特別支給の老齢厚生年金は支給停止されません。

給付制限期間中も特別支給の老齢厚生年金が支給停止はされるが、調整対象期間が終わった後に事後清算して結果的に給付制限期間中の分が戻ってくる扱いとなります。

(繰上げ支給の老齢厚生年金と基本手当等との調整)

第七条の四 

 前項に規定する求職の申込みがあつた月の翌月から同項各号のいずれかに該当するに至つた月までの各月について、次の各号のいずれかに該当する月があつたときは、同項の規定は、その月の分の老齢厚生年金については、適用しない。

 その月において、厚生労働省令で定めるところにより、当該老齢厚生年金の受給権者が基本手当の支給を受けた日とみなされる日及びこれに準ずる日として政令で定める日がないこと。

60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者が同時に雇用保険法に基づく基本手当を受給することができるとき、当該老齢厚生年金は支給停止されるが、同法第33条第1項に規定されている正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合などの離職理由による給付制限により基本手当を支給しないとされる期間を含めて支給停止される。

選択肢3. 63歳の被保険者の死亡により、その配偶者(老齢厚生年金の受給権を有し、65歳に達している者とする。)が遺族厚生年金を受給したときの遺族厚生年金の額は、死亡した被保険者の被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額と、当該遺族厚生年金の受給権者の有する老齢厚生年金の額に3分の2を乗じて計算した額のうちいずれか多い額とする。

遺族厚生年金の額に関する問です。

イは死亡した被保険者の被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額の3分の2です。被保険者と遺族本人の年金を合わせた額(夫婦共同作業)となります。

(年金額)第六十条

遺族厚生年金の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額とする。ただし、遺族厚生年金の受給権者が当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の支給を受けるときは、第一号に定める額とする。

(中略)

 第五十九条第一項に規定する遺族のうち、老齢厚生年金の受給権を有する配偶者が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 前号に定める額又は次のイ及びロに掲げる額を合算した額のうちいずれか多い額

 前号に定める額に三分の二を乗じて得た額

 当該遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金の額(第四十四条第一項の規定により加給年金額が加算された老齢厚生年金にあつては、同項の規定を適用しない額とする。次条第三項及び第六十四条の二において同じ。)に二分の一を乗じて得た額

63歳の被保険者の死亡により、その配偶者(老齢厚生年金の受給権を有し、65歳に達している者とする。)が遺族厚生年金を受給したときの遺族厚生年金の額は、死亡した被保険者の被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額と、当該遺族厚生年金の受給権者の有する老齢厚生年金の額に3分の2を乗じて計算した額のうちいずれか多い額とする。

選択肢4. 老齢厚生年金における加給年金額の加算の対象となる配偶者が、障害等級1級若しくは2級の障害厚生年金及び障害基礎年金を受給している間、当該加給年金額は支給停止されるが、障害等級3級の障害厚生年金若しくは障害手当金を受給している場合は支給停止されることはない。

障害厚生年金は1~3級であり、障害等級3級の障害厚生年金を受給している場合、加給年金額は支給停止となります。障害手当金は年金たる給付ではないので、障害手当金を受給している場合でも加給年金額は支給停止になりません。

(支給停止)第四十六条

6 第四十四条第一項の規定によりその額が加算された老齢厚生年金については、同項の規定によりその者について加算が行われている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十以上であるものに限る。)、障害厚生年金、国民年金法による障害基礎年金その他の年金たる給付のうち、老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であつて政令で定めるものの支給を受けることができるときは、その間、同項の規定により当該配偶者について加算する額に相当する部分の支給を停止する。

老齢厚生年金における加給年金額の加算の対象となる配偶者が、障害等級1級若しくは2級の障害厚生年金及び障害基礎年金を受給している間、当該加給年金額は支給停止されるが、障害等級3級の障害厚生年金若しくは障害手当金を受給している場合は支給停止されることはない。

選択肢5. 老齢厚生年金に配偶者の加給年金額が加算されるためには、老齢厚生年金の年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上という要件があるが、当該被保険者期間には、離婚時みなし被保険者期間を含めることはできない。

離婚時みなし被保険者期間の取り扱いに関する問です。

含めないものの1つに、老齢厚生年金の加給年金額の要件となる被保険者期間の月数(240以上)があります。本当は働いていないからみなしの期間は含められません。

雑な覚え方として、

支給額:報酬比例は算入される。定額部分は算入されない。

支給要件:1カ月あればよいもの、参入される。振替加算が行われなくなるもの、参入される。

1カ月より長いもの、6カ月、1年、240カ月、44年などは算入されない。

(標準報酬が改定され、又は決定された者に対する保険給付の特例)

第七十八条の十一 第七十八条の六第一項及び第二項の規定により標準報酬が改定され、又は決定された者に対する保険給付についてこの法律を適用する場合においては、次の表の上欄に掲げる規定(他の法令において、これらの規定を引用し、準用し、又はその例による場合を含む。)中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとするほか、当該保険給付の額の計算及びその支給停止に関する規定その他政令で定める規定の適用に関し必要な読替えは、政令で定める。

参考になった数7