社会保険労務士の過去問
第54回(令和4年度)
労働基準法及び労働安全衛生法 問2
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問題
社労士試験 第54回(令和4年度) 択一式 労働基準法及び労働安全衛生法 問2 (訂正依頼・報告はこちら)
労働基準法の労働時間に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 労働安全衛生法により事業者に義務付けられている健康診断の実施に要する時間は、労働安全衛生規則第44条の定めによる定期健康診断、同規則第45条の定めによる特定業務従事者の健康診断等その種類にかかわらず、すべて労働時間として取り扱うものとされている。
- 定期路線トラック業者の運転手が、路線運転業務の他、貨物の積込を行うため、小口の貨物が逐次持ち込まれるのを待機する意味でトラック出発時刻の数時間前に出勤を命ぜられている場合、現実に貨物の積込を行う以外の全く労働の提供がない時間は、労働時間と解されていない。
- 労働安全衛生法第59条等に基づく安全衛生教育については、所定労働時間内に行うことが原則とされているが、使用者が自由意思によって行う教育であって、労働者が使用者の実施する教育に参加することについて就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加とされているものについても、労働者の技術水準向上のための教育の場合は所定労働時間内に行うことが原則であり、当該教育が所定労働時間外に行われるときは、当該時間は時間外労働時間として取り扱うこととされている。
- 事業場に火災が発生した場合、既に帰宅している所属労働者が任意に事業場に出勤し消火作業に従事した場合は、一般に労働時間としないと解されている。
- 警備員が実作業に従事しない仮眠時間について、当該警備員が労働契約に基づき仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに対応することが義務付けられており、そのような対応をすることが皆無に等しいなど実質的に上記義務付けがされていないと認めることができるような事情が存しないなどの事実関係の下においては、実作業に従事していない時間も含め全体として警備員が使用者の指揮命令下に置かれているものであり、労働基準法第32条の労働時間に当たるとするのが、最高裁判所の判例である。
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この過去問の解説 (3件)
01
労働基準法での労働時間に該当するか否かについては、業務遂行性の有無を基本として、判例や指針が多数あるので、数をこなすことで自分なりの振り分けができるようになるとよいでしょう。
労働安全衛生法の定めによる定期健康診断は、業務遂行との関連で行われるものではないので、その実施に要する時間は必ずしも労働時間として取り扱う必要はないと判断されます。
なお、労働安全衛生法の定めによる「特殊健康診断」は、業務遂行との関連で当然実施されなければならない性格のものであるため、その場合は当該実施に要する時間を労働時間として取り扱う必要があります。
よって、本設問文は「すべて~取り扱うものとされている」となっている点で誤りです。
本設問文のような場合は、いわゆる「手待時間」に該当し、労働時間として取り扱われます。
「手待時間」(労働時間として取り扱われる時間)の条件について、整理しておくとよいでしょう。
本設問文の場合は、不利益取扱による出席の強制がなく自由参加とされている教育であるため、必ずしも所定労働時間内に実施されなくてもよく、また当該時間について時間外労働時間として取り扱わなくても問題ありません。
本設問文は、「時間外労働時間として取り扱うこととされている」(≒時間外労働時間としなければならない)となっている点で誤りです。
本設問文のような、「(勤務時間外であるからといって)放置してしまうと事業場に悪い影響が出てしまうこと」を回避するために任意で対応した場合は、当該時間は労働時間と解されると理解しておきましょう。
本設問文のように、義務付けられている事象の発生が皆無に等しい場合であっても、実際に使用者の指揮命令下におかれていると判断できる場合には、労働時間にあたると解されています。
使用者の指揮命令下におかれている状態か否かの条件を、(特に長文の)設問文から読み取れるようにしておきましょう。
労働時間と解される場合とそうでない場合の事例を折に触れ参照することで、類似の事象/問題が出た場合に、確実な判断がしやすくなるでしょう。
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02
労働時間の定義に関する問です。個々の選択肢の内容が使用者の指揮命令下にあるかどうか、労働から解放されているか客観的に判断ができるか検討をします。
選択肢「事業場に火災が発生した場合・・・」は判断に迷いますが、
選択肢「警備員が実作業に従事しない仮眠時間について・・・」が過去問やテキストで多く出題されており、基本的な出題です。
誤:労働安全衛生法に規定する健康診断のうち、労働時間とされるものとそうではないものに関する問です。一般健康診断の受診に要した時間は労働時間ではない(業務遂行との関係において行われるものではない)以上、使用者は、一般健康診断の受診に要した時間について賃金を支払う義務を法律上は負わず、賃金支払いの有無は労使協議に委ねられています。しかし、当該受信に要した時間の賃金を使用者が支払うことが望ましいとされています。昭47.9.18基発602号
・・・労働安全衛生規則第44条の定めによる定期健康診断、同規則第45条の定めによる特定業務従事者の健康診断等その種類にかかわらず、すべて労働時間として取り扱うものとされている。
誤:労働時間の定義に関する問です。「労働時間」とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。使用者の指揮命令下にある時間が該当し、労働の提供があるかないかは関係がありません。
・・・現実に貨物の積込を行う以外の全く労働の提供がない時間は、労働時間と解されていない。
誤:労働時間の定義に関する問です。使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から個別具体的に判断されるものです。自由意志による教育で、出席の強制がなく自由参加のものは労働時間ではなく時間外労働にはなりません。
使用者が自由意思によって行う教育であって、労働者が使用者の実施する教育に参加することについて就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加とされているもの
誤:任意に事業場に出勤し消火作業に従事とあり、これが使用者の指揮命令下に置かれた時間かどうか判断が難しいです。一方、時間外労働及び休日労働をさせることができる場合として、災害等による臨時の必要がある場合を思い出します。具体的には他の事業場からの協力要請に応じる場合においても、人命又は交易の確保のために協力要請に応じる場合や協力要請に応じないことで事業運営が不可能となる場合も含むと記載があります。事業場の火災もこちらと似たような考えではないかと類推し、労働時間にあたると考えられます。
使用者の指揮命令下に置かれている時間
事業場に火災が発生した場合、既に帰宅している所属労働者が任意に事業場に出勤し消火作業に従事した場合は、一般に労働時間としないと解されている。
正:「直ちに対応することが義務付けられており」より使用者の指揮命令下にあるかどうかを実態として客観的に判断します。この場合、労働時間に相当します。(平14.2.28最高裁判決大星ビル管理事件)
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03
この問題は、労働基準法における「労働時間」の定義に関するものです。
労働時間とは、通常、使用者の指揮命令下に置かれて労働を提供する時間を指します。
この問題は、特定の状況下での時間が労働時間に含まれるか否かを判断するものです。
誤り
解説:労働安全衛生法による定期健康診断等の時間は、必ずしも労働時間として取り扱われるわけではありません。
誤り
解説:トラック運転手が貨物の積込を待つ時間は「手待時間」として労働時間に含まれることがあります。
誤り
解説:安全衛生教育が所定労働時間外に行われる場合でも、使用者の指示によるものであれば時間外労働として取り扱われます。
誤り
解説:火災発生時に労働者が任意で消火作業に従事した場合でも、これが使用者の利益に資するものであれば労働時間に含まれる可能性があります。
正しい
解説:警備員が仮眠中でも待機命令がある場合、その時間は全体として使用者の指揮命令下にあるとされ、労働時間に含まれると解されています。
労働時間の判定において重要なのは、使用者の指揮命令下にあるかどうかです。
手待時間や待機命令がある状況下では、実際に作業をしていなくても労働時間と見なされることがあります。
また、安全衛生教育や健康診断のようなものも、その実施の背景や条件に応じて労働時間に含まれるかが異なります。
このような細かい条件を理解し、各状況を個別具体的に判断することが重要です。
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