社会保険労務士の過去問
第54回(令和4年度)
労働基準法及び労働安全衛生法 問7

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問題

社労士試験 第54回(令和4年度) 択一式 労働基準法及び労働安全衛生法 問7 (訂正依頼・報告はこちら)

労働基準法に定める労働時間等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 使用者は、労働基準法別表第1第8号(物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業)、第10号のうち映画の製作の事業を除くもの(映画の映写、演劇その他興行の事業)、第13号(病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業)及び第14号(旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業)に掲げる事業のうち常時10人未満の労働者を使用するものについては、労働基準法第32条の規定にかかわらず、1週間について48時間、1日について10時間まで労働させることができる。
  • 労働基準法第32条の2に定めるいわゆる1か月単位の変形労働時間制を労使協定を締結することにより採用する場合、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出ないときは1か月単位の変形労働時間制の効力が発生しない。
  • 医療法人と医師との間の雇用契約において労働基準法第37条に定める時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていた場合、「本件合意は、上告人の医師としての業務の特質に照らして合理性があり、上告人が労務の提供について自らの裁量で律することができたことや上告人の給与額が相当高額であったこと等からも、労働者としての保護に欠けるおそれはないから、上告人の当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないからといって不都合はなく、当該年俸の支払により、時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということができる」とするのが、最高裁判所の判例である。
  • 労働基準法第37条第3項に基づくいわゆる代替休暇を与えることができる期間は、同法第33条又は同法第36条第1項の規定によって延長して労働させた時間が1か月について60時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内の範囲内で、労使協定で定めた期間とされている。
  • 年次有給休暇の権利は、「労基法39条1、2項の要件が充足されることによつて法律上当然に労働者に生ずる権利ということはできず、労働者の請求をまつて始めて生ずるものと解すべき」であり、「年次〔有給〕休暇の成立要件として、労働者による『休暇の請求』や、これに対する使用者の『承認』を要する」とするのが、最高裁判所の判例である。

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この過去問の解説 (3件)

01

労働時間に関連する設問については、原則・基本的なものと、例外的なものとをうまく分けて理解して臨むのがよいでしょう。ただし、例外的な規定で細かいものは覚えなくてもよいと筆者は考えています。それでは問題を見ていきましょう。

選択肢1. 使用者は、労働基準法別表第1第8号(物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業)、第10号のうち映画の製作の事業を除くもの(映画の映写、演劇その他興行の事業)、第13号(病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業)及び第14号(旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業)に掲げる事業のうち常時10人未満の労働者を使用するものについては、労働基準法第32条の規定にかかわらず、1週間について48時間、1日について10時間まで労働させることができる。

本設問文の事業(特例対象事業)については、常時10人未満の労働者を使用する者について1週間について「44 時間」、1日について「8時間」まで労働させることができます。

本設問の数値については、実世界では今後とも業種・時間(条件)とも(労働者を保護する方向に)変わりうると考えられるので、細かく覚えておかなくてもよいと筆者は考えます。

選択肢2. 労働基準法第32条の2に定めるいわゆる1か月単位の変形労働時間制を労使協定を締結することにより採用する場合、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出ないときは1か月単位の変形労働時間制の効力が発生しない。

1ヵ月単位の変形労働時間制の労使協定については、以下の扱いになることを理解しておきましょう。

・労使協定が締結されていれば、1ヵ月単位の変形労働時間制の効力は発生します。

・当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出ないときは届出義務違反としての罰則の適用があります。

変形労働時間制は、それに基づき(先に)勤務を行ってしまう可能性があるので、まずはそのような労働者を保護した上で、使用者に義務違反の罰則を科す考え方になっているとイメージできるとよいでしょう。

選択肢3. 医療法人と医師との間の雇用契約において労働基準法第37条に定める時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていた場合、「本件合意は、上告人の医師としての業務の特質に照らして合理性があり、上告人が労務の提供について自らの裁量で律することができたことや上告人の給与額が相当高額であったこと等からも、労働者としての保護に欠けるおそれはないから、上告人の当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないからといって不都合はなく、当該年俸の支払により、時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということができる」とするのが、最高裁判所の判例である。

割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要です。

本設問文の場合、年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされていなかった本件の合意については、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできず、当該年俸の支払いにより、時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということは「できない」、とされたのが、該当の最高裁判決の主旨です。

選択肢4. 労働基準法第37条第3項に基づくいわゆる代替休暇を与えることができる期間は、同法第33条又は同法第36条第1項の規定によって延長して労働させた時間が1か月について60時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内の範囲内で、労使協定で定めた期間とされている。

本設問文のとおりです。

本設問文における基準は、大企業と中小企業との間の経営体力等もふまえた上で、労働者の保護(健康と本人の意向を加味)を優先に考慮し制定されたものととらえ、理解しておくとよいでしょう。

選択肢5. 年次有給休暇の権利は、「労基法39条1、2項の要件が充足されることによつて法律上当然に労働者に生ずる権利ということはできず、労働者の請求をまつて始めて生ずるものと解すべき」であり、「年次〔有給〕休暇の成立要件として、労働者による『休暇の請求』や、これに対する使用者の『承認』を要する」とするのが、最高裁判所の判例である。

最高裁判所の判例では、年次有給休暇の権利は「労基法39条1、2項の要件が充足されることによって法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまって始めて生ずるものではなく」、「年次有給休暇の成立要件として、労働者による休暇の請求や、これに対する使用者の承認の観念を容れる余地はない」とされています。

労働者を守る、という労働基準法の趣旨からみると、本設問文は「休暇を請求しそれを使用者が承認する」という使用者優位の考え方となっており、これは趣旨に反する(本設問文は誤りである)と推察することができると考えます。

正誤を確実に判断したい(できる)設問です。

まとめ

試験においては、数値の正誤を問われる細かい設問の場合、すぐに判断できなければ、あまり時間をかけずに他の設問を解くスタンスでよいでしょう。

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02

「法定労働時間の特例措置」は基本事項の暗記、「労使協定の効力発効要件」は過去問やテキストでもよく問われる内容です。最高裁判例について、割増賃金の学習では必ず触れる判例です。「代替休暇」はやや細かく正誤判断が難しいですが、時季指定権及び時季変更権に関する最高裁判例は基本事項となり、消去法で選択できるとよいです。

選択肢1. 使用者は、労働基準法別表第1第8号(物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業)、第10号のうち映画の製作の事業を除くもの(映画の映写、演劇その他興行の事業)、第13号(病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業)及び第14号(旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業)に掲げる事業のうち常時10人未満の労働者を使用するものについては、労働基準法第32条の規定にかかわらず、1週間について48時間、1日について10時間まで労働させることができる。

誤:法定労働時間の特例措置からの出題です。常時10人未満の労働者を使用する事業について1週間の法定労働時間は44時間となるという規定がありました。対象となるのは、商業、映画・演劇業(映画の製作を除く)、保健衛生業、接客娯楽業です。

第二十五条の二 使用者は、法別表第一第八号、第十号(映画の製作の事業を除く。)、第十三号及び第十四号に掲げる事業のうち常時十人未満の労働者を使用するものについては、法第三十二条の規定にかかわらず、一週間について四十四時間、一日について八時間まで労働させることができる。

・・・労働基準法第32条の規定にかかわらず、1週間について48時間、1日について10時間まで労働させることができる。

選択肢2. 労働基準法第32条の2に定めるいわゆる1か月単位の変形労働時間制を労使協定を締結することにより採用する場合、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出ないときは1か月単位の変形労働時間制の効力が発生しない。

誤:労使協定の届出が効力発効要件になるかを問うものです。1か月単位の変形労働時間制の労使協定は所轄労働基準監督署長へ届出が必要であるが、届出が効力発効の要件にはなりません。時間外・休日労働に関する36協定は届出が効力発効要件となります。

・・・当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出ないときは1か月単位の変形労働時間制の効力が発生しない。

選択肢3. 医療法人と医師との間の雇用契約において労働基準法第37条に定める時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていた場合、「本件合意は、上告人の医師としての業務の特質に照らして合理性があり、上告人が労務の提供について自らの裁量で律することができたことや上告人の給与額が相当高額であったこと等からも、労働者としての保護に欠けるおそれはないから、上告人の当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないからといって不都合はなく、当該年俸の支払により、時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということができる」とするのが、最高裁判所の判例である。

誤:最高裁判例平29.7.7医療法人社団A事件からの出題です。割増賃金を予め基本給等に含める方法で支払う場合においては、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要です。本肢では判別することができないと記載があり、割増賃金を支払われたということはできないとされています。

上告人の当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないからといって不都合はなく、当該年俸の支払により、時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということができる

選択肢4. 労働基準法第37条第3項に基づくいわゆる代替休暇を与えることができる期間は、同法第33条又は同法第36条第1項の規定によって延長して労働させた時間が1か月について60時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内の範囲内で、労使協定で定めた期間とされている。

正:代替休暇に係る労使協定に定めるべき事項からの出題です。代替休暇を与えることができる期間として時間外労働が1か月について60時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内と規定されています。

第十九条の二 使用者は、法第三十七条第三項の協定(労使委員会の決議、労働時間等設定改善委員会の決議及び労働時間等設定改善法第七条の二に規定する労働時間等設定改善企業委員会の決議を含む。)をする場合には、次に掲げる事項について、協定しなければならない。(中略)

三 代替休暇を与えることができる期間(法第三十三条又は法第三十六条第一項の規定によつて延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた当該一箇月の末日の翌日から二箇月以内とする。

選択肢5. 年次有給休暇の権利は、「労基法39条1、2項の要件が充足されることによつて法律上当然に労働者に生ずる権利ということはできず、労働者の請求をまつて始めて生ずるものと解すべき」であり、「年次〔有給〕休暇の成立要件として、労働者による『休暇の請求』や、これに対する使用者の『承認』を要する」とするのが、最高裁判所の判例である。

誤:時季指定権及び時季変更権に関する最高裁判例昭48.3.2白石営林署事件からの出題です。年次有給休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発行するのであって、年次有給休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」やこれに対する使用者の「承認」の観念を入れる余地はないものと言わなければならないとされています。

年次有給休暇の権利は、「労基法39条1、2項の要件が充足されることによつて法律上当然に労働者に生ずる権利ということはできず、労働者の請求をまつて始めて生ずるものと解すべき」

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03

この問題は、労働基準法における労働時間に関する規定の理解を問うものです。

具体的には、特定業種の労働時間の特例、1か月単位の変形労働時間制、時間外労働の割増賃金、代替休暇、年次有給休暇に関する内容が問われています。

選択肢1. 使用者は、労働基準法別表第1第8号(物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業)、第10号のうち映画の製作の事業を除くもの(映画の映写、演劇その他興行の事業)、第13号(病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業)及び第14号(旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業)に掲げる事業のうち常時10人未満の労働者を使用するものについては、労働基準法第32条の規定にかかわらず、1週間について48時間、1日について10時間まで労働させることができる。

誤り

解説:労働基準法別表第1の特定業種について、常時10人未満の労働者を使用する場合の法定労働時間は、1週間について44時間、1日について8時間です。

選択肢で言及されている48時間と10時間は誤っています。

選択肢2. 労働基準法第32条の2に定めるいわゆる1か月単位の変形労働時間制を労使協定を締結することにより採用する場合、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出ないときは1か月単位の変形労働時間制の効力が発生しない。

誤り

解説:1か月単位の変形労働時間制に関して、労使協定を締結しても、その協定を労働基準監督署長に届け出なければならないという規定はありますが、届出が効力発生の要件ではありません。

届出を怠った場合の罰則は別途存在します。

選択肢3. 医療法人と医師との間の雇用契約において労働基準法第37条に定める時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていた場合、「本件合意は、上告人の医師としての業務の特質に照らして合理性があり、上告人が労務の提供について自らの裁量で律することができたことや上告人の給与額が相当高額であったこと等からも、労働者としての保護に欠けるおそれはないから、上告人の当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないからといって不都合はなく、当該年俸の支払により、時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということができる」とするのが、最高裁判所の判例である。

誤り

解説:労働基準法第37条に基づく割増賃金は、通常の労働時間と時間外労働に対する賃金を明確に区分する必要があります。

年俸に含める場合でも、時間外労働に対する割増賃金の部分を明確にする必要があり、最高裁判所の判例もこの点を支持しています。

選択肢4. 労働基準法第37条第3項に基づくいわゆる代替休暇を与えることができる期間は、同法第33条又は同法第36条第1項の規定によって延長して労働させた時間が1か月について60時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内の範囲内で、労使協定で定めた期間とされている。

正しい

解説:代替休暇の与える期間は、1か月について60時間を超えた場合、その月の末日の翌日から2か月以内です。

これは労働基準法第37条第3項に基づく規定です。

選択肢5. 年次有給休暇の権利は、「労基法39条1、2項の要件が充足されることによつて法律上当然に労働者に生ずる権利ということはできず、労働者の請求をまつて始めて生ずるものと解すべき」であり、「年次〔有給〕休暇の成立要件として、労働者による『休暇の請求』や、これに対する使用者の『承認』を要する」とするのが、最高裁判所の判例である。

誤り

解説:年次有給休暇は、労働基準法第39条に基づき、一定の要件を満たした労働者に法律上自動的に発生する権利です。

労働者の請求や使用者の承認は必要ではありません。

まとめ

労働基準法における労働時間の規定は、労働者の健康と福祉を守るために重要です。

特定業種における労働時間の特例、変形労働時間制の適用、時間外労働の割増賃金、代替休暇の取り扱い、年次有給休暇の取得条件など、各条文の趣旨と内容を正確に理解することが求められます。

特に、時間外労働に対する割増賃金の扱いや年次有給休暇の取得条件については、労働者の権利を保護するための重要な要素です。

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