社会保険労務士の過去問
第54回(令和4年度)
健康保険法 問1
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問題
社労士試験 第54回(令和4年度) 択一式 健康保険法 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 被保険者又は被扶養者の業務災害(労災保険法第7条第1項第1号に規定する、労働者の業務上の負傷、疾病等をいう。)については健康保険法に基づく保険給付の対象外であり、労災保険法に規定する業務災害に係る請求が行われている場合には、健康保険の保険給付の申請はできない。
- 健康保険組合の理事長は、規約の定めるところにより、毎年度2回通常組合会を招集しなければならない。また、理事長は、必要があるときは、いつでも臨時組合会を招集することができる。
- 事業主は、被保険者が資格を喪失したときは、遅滞なく被保険者証を回収して、これを保険者に返納しなければならないが、テレワークの普及等に対応した事務手続きの簡素化を図るため、被保険者は、被保険者証を事業主を経由せずに直接保険者に返納することが可能になった。
- 介護保険適用病床に入院している要介護被保険者である患者が、急性増悪等により密度の高い医療行為が必要となったが、当該医療機関において医療保険適用病床に空きがないため、患者を転床させずに、当該介護保険適用病床において療養の給付又は医療が行われた場合、当該緊急に行われた医療に係る給付については、医療保険から行うものとされている。
- 育児休業等を終了した際の標準報酬月額の改定の要件に該当する被保険者の報酬月額に関する届出は、当該育児休業等を終了した日から5日以内に、当該被保険者が所属する適用事業所の事業主を経由して、所定の事項を記載した届書を日本年金機構又は健康保険組合に提出することによって行う。
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この過去問の解説 (3件)
01
併給調整に関する選択肢が複数あります。事務連絡や施行規則からも出題されており、正誤判断が難しいです。組合会の開催回数、法改正に関係する健康保険証の返納、育児休業終了時の月額変更届は暗記で対応ができます。残る選択肢と正解肢で正誤判断ができるかというところです。
誤:労災保険と健康保険の併給調整に関する問です。労災保険の休業補償給付を請求するが労災の認定までには時間がかかるため、健康保険の傷病手当金を請求することは可能です。労災保険の休業補償給付が認められた場合、健康保険から労災保険への切替を行います。その場合、健康保険から給付を受けた傷病手当金などは全て返還することになります。
https://www.rousai.org/letters/letters-2090/
「・・・、労災保険法に規定する業務災害に係る請求が行われている場合には、健康保険の保険給付の申請はできない。」
誤:健康保険組合の組合会の回数を問うものです。「毎年度2回通常組合会」とありますが1回です。
(組合会の招集)
第七条 組合会は、理事長が招集する。組合会議員の定数の三分の一以上の者が会議に付議すべき事項及び招集の理由を記載した書面を理事長に提出して組合会の招集を請求したときは、理事長は、その請求のあった日から二十日以内に組合会を招集しなければならない。
2 理事長は、規約で定めるところにより、毎年度一回通常組合会を招集しなければならない。
誤:法改正により組合が被保険者証を交付する場合には事業主を経由しなくてもよくなりましたが、返納は事業主を経由しなくてはなりません。
「・・・被保険者は、被保険者証を事業主を経由せずに直接保険者に返納することが可能になった。」
(被保険者証の返納)第五十一条
4 被保険者(任意継続被保険者を除く。以下この項において同じ。)は、次に掲げる場合においては、五日以内に、被保険者証を事業主に提出しなければならない。
一 被保険者の資格を喪失したとき。
二 被保険者の保険者に変更があったとき。
三 被保険者の被扶養者が異動したとき。
四 被保険者が共済組合の組合員の資格を取得したことにより、適用事業所(当該共済組合に係るものを除く。)に係る法第二百条第一項及び第二百二条の規定の適用を受けるに至ったとき。
正:医療保険と介護保険の併給に関する問です。保医発0327第3号令和2年3月27日「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について、からの出題です。
https://www.shizukokuhoren.or.jp/wp-content/uploads/tuuchi4.pdf
第1 厚生労働大臣が定める療養告示について
1第1号関係について
(1)介護保険適用病床に入院している要介護被保険者である患者が、急性増悪等により密度の高い医療行為が必要となった場合については、当該患者を医療保険適用病床に転床させて療養を行うことが原則であるが、患者の状態、当該病院又は診療所の病床の空き状況等により、患者を転床させず、当該介護保険適用病床において緊急に医療行為を行う必要のあることが想定され、このような場合については、当該病床において療養の給付又は医療が行われることは可能であり、この場合の当該緊急に行われた医療に係る給付については、医療保険から行うものであること。
誤:育児休業等終了時の月額変更届の期限は「速やかに」で、5日以内ではありません。
(育児休業等を終了した際の報酬月額変更の届出)
第二十六条の二 法第四十三条の二第一項に該当する被保険者の報酬月額に関する法第四十八条の規定による届出は、速やかに、第三十八条の二に規定する申出書に次に掲げる事項を記載した届書を機構又は健康保険組合に提出することによって行うものとする。この場合において、協会が管掌する健康保険の被保険者が同時に厚生年金保険の被保険者であるときは、厚生年金保険の従前の標準報酬月額を付記しなければならない。
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02
健康保険法に関する事項は、実生活でも身近な知識として使えるものが多いので、様々な設問に触れる中で、実生活に活かすように身につけていくとよいでしょう。それでは問題を見ていきましょう。
本設問文の場合、健康保険の保険給付の申請自体は、行う(行っておく)ことができます。
労災保険法に規定する業務災害に係る請求については、審査の結果不支給となる場合があり、この場合には健康保険から保険給付対象となるため、このための申請は行えるようになっている点を、理解しておくとよいでしょう。
本設問文のうち、毎年度「2回」は、毎年度「1回」が正しいです。
招集「しなければならない」とされる通常会の回数が年(年度)で2回(つまり半期に1
回)では少し多い(理由/必須性がない)と感じられれば、本設問文が誤りだと指摘可能かもしれませんが、正答できなくても特に気にしなくてよいと筆者は考えます。
本設問文の後半に関する規定はなく、逆に事業主を経由しない(省略)は不可との見解が事務連絡(内のQ&A)にて出されています。
被保険者証は、各種身分証明として使用可能なため、悪用等がされないよう、資格を喪失した場合は遅滞なく規定された手続きで返納する必要がある点は、理解できるものと考えます。
本設問文のとおりです。
本設問文のように、やむを得ず本来あるべき状態・条件でない療養の給付や医療が行われることは十分考えられることであり、そのような場合には、実態をふまえそれぞれの保険から給付がなされるものと理解しておくとよいでしょう。
本設問文の届出は「速やかに」行うこととされています。
育児休業等を「終了」した場合は、当該事実を客観的に示す必要があること、および当該届出の対応にかかる負荷・制約がなくなったと認められること、等から、「速やかに」という規定がなされたと理解するとよいでしょう。
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03
総則からの出題でしたが、通達や施行規則といった、普段テキストではあまり記載されていないところからの出題が多く、自信をもって正答を選ぶことが難しかったと思われます。
また、基本的な選択肢も含まれているので、正誤判定をしっかり行うことである程度は選択肢を絞ることは可能であったものとも考えられます。
誤り:(根拠)1条。H24.6.20事務連絡
原則として、被保険者又は被扶養者の業務災害(労災保険法第7条第1項第1号に規定する労働者の業務上の負傷、疾病等)については、健康保険の保険給付の対象外となるが、労災保険の業務災害であるかについての審査の結果として、「業務外の事故」と判断され場合は、健康保険の保険給付を受けることができます。
(参考):労災保険給付の請求が行われている場合の健康保険の給付申請の取扱いについて(H24.6.20事務連絡)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7655&dataType=1&pageNo=1
誤り:(根拠)令7条2項
健康保険組合の理事長は、規約に定めるところにより、「毎年度1回」通常組合会を招集しなければならない。
つまり、「毎年度2回」ではなく、「毎年度1回」が正しい記述です。なお、後半の記述は正しい内容です。
誤り:則51条1項・4項
事業主は、被保険者が資格を喪失したときは、「5日以内に」被保険者証を事業主に提出しなければならない。とされており、被保険者が直接保険者へ返納することはできません。つまり、直接保険者へ返納するといった例外規定はありません。
正しい:(根拠)法55条、R2.3.27保医発0327第3号
原則的には「同一の疾病又は負傷について、介護保険法の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。」(法55条)とされているため、原則的には介護保険が優先されます。
しかし、通達によると、「介護保険適用病床に入院している要介護被保険者である患者が、急性増悪等により密度の高い医療行為が必要となった場合については、当該患者を医療保険適用病床に転床させて療養を行うことが原則であるが、患者の状態、当該病院又は診療所の病床の空き状況等により、患者を転床させず、当該介護保険適用病床において緊急に医療行為を行う必要のあることが想定され、このような場合については、当該病床において療養の給付又は医療が行われることは可能であり、この場合の当該緊急に行われた医療に係る給付については、医療保険から行うものであること。」と通達されているため、介護保険ではなく、医療保険から行うものとして処理される。
(参考)R2.3.27保医発0327第3号「「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4924&dataType=1&pageNo=1
誤り:(根拠)法43条の2、則26条の2
育児休業等を終了した際の標準報酬月額の改定の要件に該当する被保険者の標準報酬月額に関する届出は、「速やかに」提出しなければなりません。「5日以内」ではありません。
内容としては、通達や施行令、素行規則といった細かい部分からの出題が多く、解答しづらい問題だったといえますが、育児休業等を終了した際の標準報酬月額の改定の要件などのように、基本的な事項の選択肢もあるので、こうした基本的な選択肢の内容は落とさない様に気を付けてください。
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