社会保険労務士の過去問
第54回(令和4年度)
健康保険法 問4

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問題

社労士試験 第54回(令和4年度) 択一式 健康保険法 問4 (訂正依頼・報告はこちら)

健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定については、夫婦とも被用者保険の被保険者である場合には、被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、健康保険被扶養者(異動)届が出された日の属する年の前年分の年間収入の多い方の被扶養者とする。
  • 被保険者の事実上の婚姻関係にある配偶者の養父母は、世帯は別にしていても主としてその被保険者によって生計が維持されていれば、被扶養者となる。
  • 全国健康保険協会が管掌する健康保険の被保険者に係る介護保険料率は、各年度において保険者が納付すべき介護納付金(日雇特例被保険者に係るものを除く。)の額を、前年度における当該保険者が管掌する介護保険第2号被保険者である被保険者の標準報酬月額の総額及び標準賞与額の合算額で除して得た率を基準として、保険者が定める。
  • 患者自己負担割合が3割である被保険者が保険医療機関で保険診療と選定療養を併せて受け、その療養に要した費用が、保険診療が30万円、選定療養が10万円であるときは、被保険者は保険診療の自己負担額と選定療養に要した費用を合わせて12万円を当該保険医療機関に支払う。
  • 全国健康保険協会の役員若しくは役職員又はこれらの職にあった者は、健康保険事業に関して職務上知り得た秘密を正当な理由がなく漏らしてはならず、健康保険法の規定に違反して秘密を漏らした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処すると定められている。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解肢が罰則規定のため正誤判断が難しくなります。夫婦共同扶養は近年話題となっており、予備校のテキストなどには記載が多くあります。被扶養者の定義、保険料の自己負担割合は基本事項で、介護保険料率は少し細かいですが、各種保険料率の算出方法は頻出事項のため細かいですが押さえておく必要があります。

選択肢1. 夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定については、夫婦とも被用者保険の被保険者である場合には、被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、健康保険被扶養者(異動)届が出された日の属する年の前年分の年間収入の多い方の被扶養者とする。

誤:夫婦共同扶養に関する通達からの出題です。「・・・健康保険被扶養者(異動)届が出された日の属する年の前年分の年間収入の多い方の被扶養者・・・」

夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について保保発0430第2号,保国発0430第1号

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210512S0010.pdf

1夫婦とも被用者保険の被保険者の場合には、以下の取扱いとする。

(1)被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。

選択肢2. 被保険者の事実上の婚姻関係にある配偶者の養父母は、世帯は別にしていても主としてその被保険者によって生計が維持されていれば、被扶養者となる。

誤:被扶養者の定義に関する問です。「・・・世帯は別にしていても・・・」同一世帯に属している必要があります。

(定義)

第三条

7 この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者で、日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者は、この限りでない。(中略)

三 被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの

選択肢3. 全国健康保険協会が管掌する健康保険の被保険者に係る介護保険料率は、各年度において保険者が納付すべき介護納付金(日雇特例被保険者に係るものを除く。)の額を、前年度における当該保険者が管掌する介護保険第2号被保険者である被保険者の標準報酬月額の総額及び標準賞与額の合算額で除して得た率を基準として、保険者が定める。

誤:介護保険料の料率の定義を問うものです。「・・・介護保険第2号被保険者である被保険者の標準報酬月額の総額及び標準賞与額の合算額で除して得た率・・・」総報酬額の総額の見込み額が正しいです。

(保険料率)第百六十条

16 介護保険料率は、各年度において保険者が納付すべき介護納付金(日雇特例被保険者に係るものを除く。)の額を当該年度における当該保険者が管掌する介護保険第二号被保険者である被保険者の総報酬額の総額の見込額で除して得た率を基準として、保険者が定める。

選択肢4. 患者自己負担割合が3割である被保険者が保険医療機関で保険診療と選定療養を併せて受け、その療養に要した費用が、保険診療が30万円、選定療養が10万円であるときは、被保険者は保険診療の自己負担額と選定療養に要した費用を合わせて12万円を当該保険医療機関に支払う。

誤:自己負担額の計算を問うものです。「・・・自己負担額と選定療養に要した費用を合わせて12万円を当該保険医療機関に支払う。」本肢で支払金額は保険診療が3割負担のため、19万円です(9万円(30万円*0.3)+10万円)。

選択肢5. 全国健康保険協会の役員若しくは役職員又はこれらの職にあった者は、健康保険事業に関して職務上知り得た秘密を正当な理由がなく漏らしてはならず、健康保険法の規定に違反して秘密を漏らした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処すると定められている。

正:全国健康保険協会の役員等が守秘義務違反をした場合の罰則を問うものです。公共性が高い協会の役職員の守秘義務違反の罰則は重いです。

(秘密保持義務)

第七条の三十七 協会の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、健康保険事業に関して職務上知り得た秘密を正当な理由がなく漏らしてはならない。

2 前項の規定は、協会の運営委員会の委員又は委員であった者について準用する。

第二百七条の二 第七条の三十七第一項(同条第二項及び第二十二条の二において準用する場合を含む。)の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

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02

健康保険法については、まず身近にイメージしやすい個人にかかる規定を学習・理解し、徐々に組織(健康保険組合など)にかかる規定についても学習の幅を広げていく、という順番で足場固めをしていくとよいでしょう。それでは問題文を見ていきましょう。

選択肢1. 夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定については、夫婦とも被用者保険の被保険者である場合には、被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、健康保険被扶養者(異動)届が出された日の属する年の前年分の年間収入の多い方の被扶養者とする。

本設問文の場合、「被保険者の年間収入(過去の収入、 現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする)が多い方の被扶養者とする。」となっています。

被扶養者の認定にあたっては、「年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることのないよう、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定すること」が考慮されることとなり、これにより、本設問文(誤りですが)の他にも、何点か条件が規定されている点、一度確認しておくとよいでしょう。

選択肢2. 被保険者の事実上の婚姻関係にある配偶者の養父母は、世帯は別にしていても主としてその被保険者によって生計が維持されていれば、被扶養者となる。

本設問文の場合、「同一の世帯に属していること」が被扶養者の条件となります。

被扶養者の要件については、子供以外の場合、各種細かい規定があり、それにより安易に扶養を認めない(大げさにいうと不正の可能性を排除する)考え方がある点を、理解しておくとよいでしょう。

選択肢3. 全国健康保険協会が管掌する健康保険の被保険者に係る介護保険料率は、各年度において保険者が納付すべき介護納付金(日雇特例被保険者に係るものを除く。)の額を、前年度における当該保険者が管掌する介護保険第2号被保険者である被保険者の標準報酬月額の総額及び標準賞与額の合算額で除して得た率を基準として、保険者が定める。

本設問文の場合、「当該年度における当該保険者が管掌する介護保険第二号被保険者である被保険者の総報酬額の総額の見込額で除して得た率を基準」とします。

基準とすべき額は「標準報酬月額(≒等級が決められており上下限があるもの)」ではなく「総報酬額(≒あるがまま)」が使用される点を、理解しておくとよいでしょう。

選択肢4. 患者自己負担割合が3割である被保険者が保険医療機関で保険診療と選定療養を併せて受け、その療養に要した費用が、保険診療が30万円、選定療養が10万円であるときは、被保険者は保険診療の自己負担額と選定療養に要した費用を合わせて12万円を当該保険医療機関に支払う。

選定療養が保険外診療として全額自己負担になる点を理解しておきましょう。

 保険診療にかかる自己負担:30万円×3割=9万円

 保険外診療       :10万円

 本設問文の場合、被保険者は19万円を当該保険医療機関に支払います。

日常生活でも、医療機関にかかる場合、保険診療か否かに注目するかと思います。

このような簡易な計算は正答できるようにしておきましょう。

選択肢5. 全国健康保険協会の役員若しくは役職員又はこれらの職にあった者は、健康保険事業に関して職務上知り得た秘密を正当な理由がなく漏らしてはならず、健康保険法の規定に違反して秘密を漏らした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処すると定められている。

本設問文のとおりです。

罰則の軽重については若干議論の余地があるようにも感じますが、現状ではこのような重い罰則が規定されている点を理解しておくとよいでしょう。

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03

総合問題ですが、正答の選択肢が普段からしっかりと確認していないとわからないようなところからの出題でしたので、この機会に覚えるようにしてください。また、通達からの細かい数字などが問われる選択肢もあるため、正答を導くのはかなり難しいと思われます。

選択肢1. 夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定については、夫婦とも被用者保険の被保険者である場合には、被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、健康保険被扶養者(異動)届が出された日の属する年の前年分の年間収入の多い方の被扶養者とする。

誤り:(根拠)法3条7項、R3.4.30保保発0430第2号

設問の場合は、被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とします。

選択肢2. 被保険者の事実上の婚姻関係にある配偶者の養父母は、世帯は別にしていても主としてその被保険者によって生計が維持されていれば、被扶養者となる。

誤り:(根拠)法3条7項3号

事実上の婚姻関係にある配偶者の養父母は、生計が維持されている状態に加えて、同一世帯要件が問われます。

選択肢3. 全国健康保険協会が管掌する健康保険の被保険者に係る介護保険料率は、各年度において保険者が納付すべき介護納付金(日雇特例被保険者に係るものを除く。)の額を、前年度における当該保険者が管掌する介護保険第2号被保険者である被保険者の標準報酬月額の総額及び標準賞与額の合算額で除して得た率を基準として、保険者が定める。

誤り:(根拠)法160条16項

介護保険料率は、各年度において保険者が納付すべき介護納付金(日雇特例被保険者に係るものを除く。)の額を「当該年度」における当該保険者が管掌する介護保険第二号被保険者である被保険者の総報酬額の総額の見込額で除して得た率を基準として、保険者が定めます。

 

つまり、「前年度」ではなく、「当該年度」が正しいです。

 

選択肢4. 患者自己負担割合が3割である被保険者が保険医療機関で保険診療と選定療養を併せて受け、その療養に要した費用が、保険診療が30万円、選定療養が10万円であるときは、被保険者は保険診療の自己負担額と選定療養に要した費用を合わせて12万円を当該保険医療機関に支払う。

誤り:(根拠)86条2項

設問の場合の被保険者の一部負担金の額は、「保険診療分:30万円✕30%=9万円」と「選定療養分:10万円」の合計「19万円」となります。

 

選定療養分は保険適用外となるため、10割負担(全額自己負担)となる点に注意してください。

選択肢5. 全国健康保険協会の役員若しくは役職員又はこれらの職にあった者は、健康保険事業に関して職務上知り得た秘密を正当な理由がなく漏らしてはならず、健康保険法の規定に違反して秘密を漏らした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処すると定められている。

正しい:(根拠)法7条の37第1項、法207条の2

協会の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、健康保険事業に関して職務上知り得た秘密を正当な理由がなく秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

健康保険法で最も重い罰則となります。

まとめ

正答のEはしっかりと確認している人であれば容易に選ぶことができたかと思います。

また、A.B.Dの選択肢は基本的な内容なのですぐに誤りに気付けるかと思いますが、Cの選択肢は細かい部分が誤りの箇所となっており、読み飛ばしてしまう可能性が高いところですので、注意深く選択肢を読んでいくことで、読み飛ばしによる失点を減らせます。

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