社会保険労務士の過去問
第54回(令和4年度)
健康保険法 問9

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問題

社労士試験 第54回(令和4年度) 択一式 健康保険法 問9 (訂正依頼・報告はこちら)

現金給付である保険給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  • 被保険者が自殺により死亡した場合は、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行う者がいたとしても、自殺については、健康保険法第116条に規定する故意に給付事由を生じさせたときに該当するため、当該給付事由に係る保険給付は行われず、埋葬料は不支給となる。
  • 被保険者が出産手当金の支給要件に該当すると認められれば、その者が介護休業期間中であっても当該被保険者に出産手当金が支給される。
  • 共済組合の組合員として6か月間加入していた者が転職し、1日の空白もなく、A健康保険組合の被保険者資格を取得して7か月間加入していた際に、療養のため労務に服することができなくなり傷病手当金の受給を開始した。この被保険者が、傷病手当金の受給を開始して3か月が経過した際に、事業所を退職し、A健康保険組合の任意継続被保険者になった場合でも、被保険者の資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていることから、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者から傷病手当金の給付を受けることができる。
  • 療養費の支給対象に該当するものとして医師が疾病又は負傷の治療上必要であると認めた治療用装具には、義眼、コルセット、眼鏡、補聴器、胃下垂帯、人工肛門受便器(ペロッテ)等がある。
  • 移送費の支給が認められる医師、看護師等の付添人による医学的管理等について、患者がその医学的管理等に要する費用を支払った場合にあっては、現に要した費用の額の範囲内で、診療報酬に係る基準を勘案してこれを評価し、現に移送に要した費用とともに移送費として支給を行うことができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

自殺の場合の埋葬料の支給、療養費の対象、移送費の定義は基本事項からの出題で回答できると思います。出産手当金が介護休業中に不支給になるかについて、そのような規定がなく、現実的にも不支給にする理由もなさそうで、正誤判断できるとよいです。

選択肢1. 被保険者が自殺により死亡した場合は、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行う者がいたとしても、自殺については、健康保険法第116条に規定する故意に給付事由を生じさせたときに該当するため、当該給付事由に係る保険給付は行われず、埋葬料は不支給となる。

誤・保険給付の事由が自殺の場合に埋葬料が支給されるかという問ですが、支給されます。通達からの出題です。自殺は絶対的で1回しか発生せず、埋葬を行う家族に非はありません。

「・・・自殺については、(中略)埋葬料は不支給となる。

○法第六十条の疑義解釈について(昭和二六年三月一九日)(保文発第七二一号)

被保険者の自殺による死亡は故意に基く事故ではあるが、死亡は絶対的な事故であるとともに、この死亡に対する保険給付としての埋葬料は、被保険者であつた者に生計を依存していた者で埋葬を行う者に対して支給されるという性質のものであるから、法第六十条後段に該当しないものとして取り扱い埋葬料を支給しても差支えない。

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta2888&dataType=1&pageNo=1

選択肢2. 被保険者が出産手当金の支給要件に該当すると認められれば、その者が介護休業期間中であっても当該被保険者に出産手当金が支給される。

正:介護休業期間中の被保険者に出産手当金が支給されるかという問ですが、出産手当金の要件に該当すれば支給されます。

○介護休業期間中の健康保険、船員保険及び厚生年金保険の被保険者資格等の取扱いについて(平成一一年三月三一日)(保険発第四六号・庁保険発第九号)

4 傷病手当金及び出産手当金

傷病手当金及び出産手当金の支給要件に該当すると認められる者については、その者が介護休業期間中であっても傷病手当金又は出産手当金が支給されるものであること。

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb0520&dataType=1&pageNo=1

選択肢3. 共済組合の組合員として6か月間加入していた者が転職し、1日の空白もなく、A健康保険組合の被保険者資格を取得して7か月間加入していた際に、療養のため労務に服することができなくなり傷病手当金の受給を開始した。この被保険者が、傷病手当金の受給を開始して3か月が経過した際に、事業所を退職し、A健康保険組合の任意継続被保険者になった場合でも、被保険者の資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていることから、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者から傷病手当金の給付を受けることができる。

誤:傷病手当金の継続給付に関する要件を問うものです。継続給付は資格喪失日の前日まで1年以上の被保険者が要件となりますが、共済組合の組合員の期間は合算されません。「・・・共済組合の組合員として6か月間加入していた者が転職し、1日の空白もなく、A健康保険組合の被保険者資格を取得して7か月間加入していた際に・・・」共済組合の組合員の期間を除くと1年未満となり要件を満たしません。

(傷病手当金又は出産手当金の継続給付)

第百四条 被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。

選択肢4. 療養費の支給対象に該当するものとして医師が疾病又は負傷の治療上必要であると認めた治療用装具には、義眼、コルセット、眼鏡、補聴器、胃下垂帯、人工肛門受便器(ペロッテ)等がある。

誤:療養費の支給対象に含まれるもの/含まれないものは具体的にどのようなものをかを問うものです。眼鏡や補聴器は療養費の支給対象となりません。眼鏡をかけている方は自らの経験から回答もできます。

選択肢5. 移送費の支給が認められる医師、看護師等の付添人による医学的管理等について、患者がその医学的管理等に要する費用を支払った場合にあっては、現に要した費用の額の範囲内で、診療報酬に係る基準を勘案してこれを評価し、現に移送に要した費用とともに移送費として支給を行うことができる。

誤:移送中に要した医学的管理等の費用は移送費に含めるか否かという問ですが、含めません。療養費として支払われます。「現に移送に要した費用とともに移送費として支給を行う」

○健康保険の移送費の支給の取扱いについて(平成六年九月九日)(保険発第一一九号・庁保険発第九号)

3 付添人の医学的管理等に係る療養費の支給

移送費の支給が認められる医師、看護婦等の付添人による医学的管理等について、患者がその医学的管理等に要する費用を支払った場合にあっては、現に要した費用の額の範囲内で、移送費とは別に、診療報酬に係る基準を勘案してこれを評価し、療養費の支給を行うことができること。

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02

健康保険法のうち、保険給付に関する事項については、実生活でも特に気になる分野かと思いますので、ぜひ学習しておきましょう。それでは問題を見ていきましょう。

選択肢1. 被保険者が自殺により死亡した場合は、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行う者がいたとしても、自殺については、健康保険法第116条に規定する故意に給付事由を生じさせたときに該当するため、当該給付事由に係る保険給付は行われず、埋葬料は不支給となる。

本設問文の場合、埋葬料は支給されます。

被保険者の行為が故意であっても、その結果を受ける者にとっては故意にはならず、かつ当該被害者に対する行為として埋葬を行うため、本設問文の場合には、埋葬料が支給される(べき)と判断可能だと考えます。

選択肢2. 被保険者が出産手当金の支給要件に該当すると認められれば、その者が介護休業期間中であっても当該被保険者に出産手当金が支給される。

本設問文のとおりです。

出産手当金は、出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合に支給されるものであり、設問文のように介護休業期間中であっても、給与の支払いを受けられると認められる条件にある場合は、支給されるものと理解しておくとよいでしょう。

選択肢3. 共済組合の組合員として6か月間加入していた者が転職し、1日の空白もなく、A健康保険組合の被保険者資格を取得して7か月間加入していた際に、療養のため労務に服することができなくなり傷病手当金の受給を開始した。この被保険者が、傷病手当金の受給を開始して3か月が経過した際に、事業所を退職し、A健康保険組合の任意継続被保険者になった場合でも、被保険者の資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていることから、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者から傷病手当金の給付を受けることができる。

本設問文の場合は、傷病手当金の給付を受けることができません。

共済組合の組合員期間と、協会けんぽ/健康保険組合の被保険者期間とは、傷病手当金の支給要件の判断において、通算されない点を理解しておくとよいでしょう。

一例をあげて簡単に言うと、国家公務員であった人がその後民間企業に就職した場合、前者の期間と後者の期間は通算されないこととなります。

選択肢4. 療養費の支給対象に該当するものとして医師が疾病又は負傷の治療上必要であると認めた治療用装具には、義眼、コルセット、眼鏡、補聴器、胃下垂帯、人工肛門受便器(ペロッテ)等がある。

本設問文の場合、眼鏡、補聴器、胃下垂帯、人工肛門受便器は療養費の支給対象になりません。

特に眼鏡・補聴器については、一般的な物品になっており、療養費の支給対象にならない点は、容易に判断が可能かと考えます。

選択肢5. 移送費の支給が認められる医師、看護師等の付添人による医学的管理等について、患者がその医学的管理等に要する費用を支払った場合にあっては、現に要した費用の額の範囲内で、診療報酬に係る基準を勘案してこれを評価し、現に移送に要した費用とともに移送費として支給を行うことができる。

本設問文の場合、医学的管理等に要する費用は、移送費とは別に、療養費として支給が行われます。

移送費は、純粋に移送に要した費用のみ計上されるものと理解しておくとよいでしょう。

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03

保険給付の中で現金給付となるものについて出題されています。今回のように「現金給付」というキーワードがあるため、ある程度給付の種類は限定されますが、それぞれの給付における現金給付となる要件をしっかりと理解しているかが問われています。

選択肢1. 被保険者が自殺により死亡した場合は、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行う者がいたとしても、自殺については、健康保険法第116条に規定する故意に給付事由を生じさせたときに該当するため、当該給付事由に係る保険給付は行われず、埋葬料は不支給となる。

誤り:(根拠)法116条、S26.3.19保文発721号

自殺により死亡した場合は、故意に給付事由を生じさせた時には該当しないため、埋葬料は支給されます。

選択肢2. 被保険者が出産手当金の支給要件に該当すると認められれば、その者が介護休業期間中であっても当該被保険者に出産手当金が支給される。

正しい:(根拠)法102条、H11.3.31保険発46号・庁保発9号

介護休業期間中に出産のため帰休される場合であっても、出産手当金は支給されます。なお、介護休業期間中に支給された手当のうち、報酬と認められるものがある場合は、出産手当金と調整が行われます。

選択肢3. 共済組合の組合員として6か月間加入していた者が転職し、1日の空白もなく、A健康保険組合の被保険者資格を取得して7か月間加入していた際に、療養のため労務に服することができなくなり傷病手当金の受給を開始した。この被保険者が、傷病手当金の受給を開始して3か月が経過した際に、事業所を退職し、A健康保険組合の任意継続被保険者になった場合でも、被保険者の資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていることから、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者から傷病手当金の給付を受けることができる。

誤り:(根拠)法104条

傷病手当金の支給要件である「資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者であったことが必要」の被保険者であった期間の中には、共済組合の組合員であった期間については含まれません。

選択肢4. 療養費の支給対象に該当するものとして医師が疾病又は負傷の治療上必要であると認めた治療用装具には、義眼、コルセット、眼鏡、補聴器、胃下垂帯、人工肛門受便器(ペロッテ)等がある。

誤り:(根拠)法87条1項、S25.2.8保発9号、S25.11.7保険発225号他

設問の内容の中で、療養費の支給対象に該当するものとしては、義眼、コルセットです。それ以外のものは、療養費の支給対象とはなりません。

選択肢5. 移送費の支給が認められる医師、看護師等の付添人による医学的管理等について、患者がその医学的管理等に要する費用を支払った場合にあっては、現に要した費用の額の範囲内で、診療報酬に係る基準を勘案してこれを評価し、現に移送に要した費用とともに移送費として支給を行うことができる。

誤り:(根拠)法87条、97条、H6.9.9保険発119号・庁保険発9号

医学的管理等に要する費用については、現に要した費用の額の範囲内で、「移送費とは別で」診療報酬に係る基準を勘案してこれを評価し、「療養費の支給の対象」となります。

まとめ

現金給付の保険給付の内容からの出題でしたが、通達からの出題もあったため、正答を導くことが難しく感じたかと思いますが、誤答の選択肢は落ち着いて考えてみると、すぐにおかしいことに気付けるかと思います。

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